海外リスナーからの専門的な質問
この日届いたのは、TikTokを通して海外から寄せられた質問でした。川上牧場のYouTubeやTikTokを見ながら酪農を勉強しているという方からのコメントです。
質問の内容はこちら。TikTokネーム「カミサトさん」からのものでした。
質問です。2回搾乳と3回搾乳の違いは何ですか?
大きい牧場では3回搾乳をしているところもありますが、家族経営など普通の牧場では2回搾乳が多いんだそうです。ちなみに川上牧場は、朝5時ごろと夕方4時ごろの2回搾乳。
最近はロボット搾乳機牛が自分のタイミングで搾乳機に入り、機械が自動で搾乳するシステム。牛や人の負担を減らせるとされる。も増えてきて、牛によっては1日4回、5回と搾ることもあるそうです。
まずは結論と大前提
川上さんはこの質問を、乳量・牛の体・人の働き方・経営という4つの視点から整理して答えていきます。まずは結論から。
ただし、どちらかが正解という話ではありません。牧場の考え方や牛の群れ、人手、経営方針によって最適解が変わる、というのが大前提です。
乳量の違いと牛の体への影響
1つ目の視点は乳量です。ここはデータとしても比較的はっきりしているそうです。
2回搾乳を基準にすると、3回搾乳では乳量が5パーセントから15パーセント程度増えることが多いとのこと。理由はシンプルで、乳房に乳がたまりすぎないことで乳腺の働きが維持されやすいからです。
牛の体は、使われる機能は維持され、使われない機能は落ちる。これは人間の筋肉と同じですね。
2つ目は牛の体への影響。3回搾乳には、乳房の内圧が下がりやすい、高泌乳牛では乳房炎乳房が細菌などで炎症を起こす病気。乳量や乳質の低下につながる、酪農現場で代表的なトラブルのひとつ。のリスクが下がるケースもある、というメリットがあります。
一方でデメリットもあります。乳量が増えるぶんエネルギーの消費も増えるため、飼料設計が追いつかないと体重の減少や繁殖成績の悪化につながることもあるそうです。
つまり、3回絞れば自動的にいいわけではなく、牛の栄養管理とセットで考えないと逆効果になる。ここはよく誤解されがちなポイントだと話されています。
人の働き方と経営から見た違い
3つ目は人の働き方です。ここはかなり現実的な問題だといいます。
2回搾乳は朝と夕方で生活リズムを作りやすく、少人数経営や家族経営との相性がいいそうです。3回搾乳は深夜や昼間の追加作業が必要になるため、人手やロボット搾乳、シフト制が前提になることが多いとのこと。
4つ目は経営の視点です。3回搾乳は乳量が上がる一方で、餌代も電気代も人件費も上がります。2回搾乳はコストと管理の安定性が高い、という違いがあります。
乳量は基準どおり。牛と人の負担が少なく、コストと管理の安定性が高い。家族経営との相性がいい
乳量が5〜15パーセントほど増えやすい。餌代・電気代・人件費が上がり、栄養管理や人手・ロボットが前提になる
乳量を1キロ多く絞るより、10年続くことを選ぶ牧場も多いということです。
川上牧場が2回搾乳を選ぶ理由
川上牧場は家族経営の規模で、長年ずっと2回搾乳でやってきたそうです。ここには少し正直な本音も。
川上さんは搾乳がとても嫌いなので、3回搾乳をやろうという気にはならないですね。売り上げが上がるかもしれないですけど、ちょっとならないですね。
搾乳回数が増えれば、牛が待機する時間も長くなります。1回の搾乳に1〜2時間かかる牧場だと、その分ずっと牛が立ったまま休めずに待つことになり、牛の負担につながることもあるそうです。
逆に、人も餌も動力も豊富で、ソーラーパネルや自家発電でどんどん回せる大きな牧場なら、3回搾乳が合っているのではないか、と川上さんは話します。従業員が多くシフト制で深夜も搾乳室を止めない牧場もあるそうです。
そして川上さんが一番楽だと感じているのが搾乳ロボット。牛が搾りたいときに入れて、分娩直後でお乳が張って痛い時期の牛も緩和されるため、ロボットが一番適正なのではと語ります。
続けたい酪農から考える
最後に川上さんはこう整理します。3回搾乳は乳量アップが期待できるが管理の難易度は高くなり、2回搾乳は安定しやすく持続性が高い。正解は一つではなく、牧場ごとの最適解がある、と。
この話が、酪農に興味のある方やこれから学ぶ方、そして現場で悩んでいる方のヒントになれば嬉しい、という言葉でこの回は締めくくられました。
まとめ
2回搾乳と3回搾乳の違いは、乳量・牛の体・人の働き方・経営の4つの視点で整理できます。どちらが正解というわけではなく、「どんな酪農を続けたいか」から考えることが大事だとまとめられていました。
- 3回搾乳は乳量が5〜15パーセントほど増えやすいが、餌代・電気代・人件費も上がる
- 3回搾乳は牛の栄養管理とセットで考えないと逆効果になることもある
- 2回搾乳は牛と人の負担が少なく、家族経営との相性がよく持続性が高い
- 搾乳回数が増えると牛の待機時間が延び、負担につながる場合がある
- 正解は牧場ごとに違い、「どんな酪農を続けたいか」で選ぶのがポイント
