地震のお見舞いと今日の川上牧場
配信は、地震を心配する声への感謝から始まりました。1月7日、出雲市も震度4ほど揺れたそうですが、牧場は無事だったとのことです。
皆さんが心配して、地震大丈夫ですか?というメッセージを、各SNSやLINEでいただきまして、無事です。
耐震改修をしていたことに、川上さんは胸をなでおろしていました。
マジで耐震改修しててよかった。これしてなかったら終わってたんじゃない?酪農。
今日の質問「細菌の基準値ってあるの?」
今回のテーマは、配信アプリSpoon音声配信・ライブ配信ができるアプリ。リスナーがコメントや質問を送れる。から届いた質問です。レインさんからの「酪農の現場だと細菌の計測とか基準値って決められていますか?」という、かなり専門的な内容でした。
川上さんは、いつも配信を聞いてくれているレインさんが細菌数の話まで気になり始めたことを、うれしそうに受け止めます。
「細菌」と聞くと不安になる人もいますが、そもそも搾りたての牛乳に細菌がゼロということはない、と川上さんは前置きします。
牛乳も牛から出てきている生き物ですので、細菌がゼロというわけではないんですよね、搾りたての牛乳は。
それを殺菌することで細菌数をほぼゼロにして、消費者に届けているというわけです。
そもそも「細菌」には2種類ある
まず前提として、酪農現場でいう「細菌」はざっくり2種類あると川上さんは整理します。一般細菌と体細胞です。よく一緒に語られますが、意味も原因も対策もまったく別物だそうです。
牛乳にどれくらい細菌が入ったかを表す指標。搾乳後の衛生管理の問題がほとんど。
牛の免疫細胞のこと。乳房の中で炎症やトラブルが起きているサイン。
一般細菌数は「人と設備」の問題
一般細菌数は、牛乳の中にどれくらい細菌が入ってしまったかを表す指標です。生菌数と呼ぶところもあります。
ポイントは、これが牛の体の中の問題ではなく、搾乳後の衛生管理の問題がほとんどだということ。乳首の洗浄不足、搾乳機の洗浄が甘い、バルクタンク搾った生乳を冷やして一時的にためておくタンク。バルククーラーとも呼ばれる。の管理が悪い、といった場面で細菌数は増えます。
気になる基準値についても具体的な数字が示されました。
日本では生乳の取引基準として、一般細菌数1ミリリットル当たり20万以下という基準があります。
ただしこれは上限ライン。実際の現場では1万以下、数千レベルを目標にしている牧場も多く、川上牧場も1万以下で推移しているそうです。
大事なのは、基準をクリアすればOKではなく、数字の変動をどう捉えるか。細菌数がポッと上がれば、洗浄や拭き取りができているかを確認するサインになります。
体細胞数は「牛の健康状態」のサイン
続いて体細胞の話です。体細胞とは牛の免疫細胞のこと。つまり体細胞が増えるのは、牛の乳房の中で炎症やトラブルが起きているサインで、代表的なのが乳房炎牛の乳房が細菌などで炎症を起こす病気。乳量や乳質が落ちる原因になる。という病気です。
ここで川上さんが強調したのは、体細胞は細菌そのものではないという点です。
牛が細菌と戦った結果に増える数字ですということですね。
体細胞数の基準は1ミリリットル当たり30万以下が一般的で、これも上限値。多くの牧場では20万以下や10万台を目標に管理しています。
体細胞が上がると乳量が落ち、乳質が落ち、バターやチーズにするときの歩留まりも悪くなるなど、経済的な影響も大きいそうです。
どうやって測る?数字は「改善のヒント」
これらの数字は、多くの牧場でバルク乳を定期的に検査して測ります。組合や乳業での検査、牛群検定のデータ、乳業メーカーからのフィードバックといった形で返ってきます。
最近では搾乳ロボットやセンサー、AI解析を導入する牧場も出てきていて、牛1頭ごと、さらには4つある乳首1本ごとの傾向までわかるようになってきているそうです。
そして川上さんが一番伝えたかったのが、数字の捉え方でした。悪いと怒られる数字だと思われがちですが、そうではないと言います。
日本の衛生基準が守っているもの
牛乳パックの裏には乳脂肪や無脂固形分しか書かれておらず、細菌数や体細胞数は表示されません。殺菌して封入されるうえ、蓋を開けた瞬間に空気中から細菌が入るためです。
だからこそ、開けたら早めに飲み、冷蔵庫の奥の温度変化が少ない場所で保存してほしい、と川上さんはすすめます。
細菌数や体細胞数は牛乳の引き取り価格にも関わるため、乳質を良くすることは酪農家の売り上げにも直結します。
さらに川上さんは、日本の衛生基準は世界レベルで見ても素晴らしいと話します。基準を守り続けることが、海外の乳製品を安易に入れない理由にもつながり、日本の酪農を守ることになる、というのが川上さんの考えです。
生乳、普通の飲用向けの牛乳だけは、品質をどんどん上げるような形で頑張っていかないといけないなというところですね。
まとめ
今回は「細菌ってどう管理してるの?」というリスナーの質問から、牛乳が感覚ではなく数字で管理される世界を解説する回でした。一般細菌と体細胞、それぞれの意味を知ると、いつもの牛乳の見え方が少し変わりそうですね。
- 酪農現場の「細菌」は一般細菌と体細胞の2種類で、意味も原因も対策も別物。
- 一般細菌は人と設備の衛生管理、体細胞は牛の健康状態を映す数字。
- 一般細菌数は20万以下、体細胞数は30万以下が一般的な基準だが、現場はもっと低い数値を目標にしている。
- 数字は犯人探しではなく、作業や牛の状態を教えてくれる改善のヒント。
- 日本の高い衛生基準が、牛乳のおいしさと国内酪農を守ることにつながっている。
