島根東部の地震と、寄せられた「酪農家の災害対策」への疑問
この回のきっかけは、島根県東部で起きた大きな地震でした。死者は出なかったものの、負傷者が10数人ほど出て、土砂崩れや落石なども報じられたそうです。
東部の牧場では断水が起きたり、電気が一時的に止まったりしたことも聞いていると話されています。川上牧場のある出雲市でも震度4ほどの揺れがあったとのこと。
ちょうどTikTokのライブ配信中に「災害が起こった時ってどうするんですか?」という質問が来たそうで、それをきっかけに深掘りしていきます。
なぜ酪農は災害に弱いのか
まず前提として、酪農は電気と水が止まった瞬間に、ほぼ全てが止まる産業だと説明されています。
搾乳ができない、バルククーラーが動かず牛乳を冷やせない、井戸ポンプが止まって水を飲ませられない、機器の洗浄もできない。こうして次々と作業が止まっていきます。
さらに怖いのが、乳房炎やストレス、そこから来る繁殖障害といった二次被害だといいます。
停電対策は「全部を動かそうとしない」
停電対策で一番大事なのは、全部を動かそうとしないことだと強調されています。マニュアルでも一貫して書かれている考え方だそうです。
停電時は何を動かすかを事前に決めておくことが大事です。全部の設備を守ろうとすると、結局どれも守れません。
目標は3段階で考えるとよいそうです。最低限、搾乳だけできればいいのか。搾乳に加えて生乳の冷却まで確保したいのか。それとも通常通りの作業を目指すのか。
どこまでを目標にするかで、必要な発電機の容量も行動も変わってくるといいます。
特に重要なのが、バルククーラーは起動時に通常の約3倍の電力が必要という点。発電機はあるのにバルクが動かない、という失敗例は本当に多いとされています。
断水対策は「飲み水だけではない」
断水と聞くとまず牛の飲み水を考えがちですが、実際には搾乳機器の洗浄、衛生管理、人の生活用水まで含めて考える必要があると話されています。
たとえば経産牛が60頭規模の場合、1日およそ6500L必要とのこと。これは飲水と洗浄水を含めた数字だそうです。
大事なのは、どこから水を確保するか、どうやって運ぶか、どこに溜めるかを、平時のうちに決めておくこと。災害時になってから「どうする」と考え始めると、ほぼ詰んでしまうといいます。
災害発生直後の優先順位
災害が起きた直後の優先順位も、はっきり示されています。ここがとても大事だと繰り返されていました。
1. 自分と家族の安全
まずは人の安全を最優先にする
2. 牛舎・牛の状況確認
牛の状態を確認するのはその次
3. 連絡・情報収集
状況を把握し、外とつながる
まず自分と家族の安全。これマジで大事。牛優先になっちゃいがちですけども、自分と家族の安全が一番ですからね。
搾乳中やトラクター作業中、牛の近くで災害が起きたら、作業を中断する勇気が最優先だといいます。
一方で「とりあえず全部確認しに行く」はNG。倒壊、落下、感電、二次災害が一番怖いことを覚えておいてほしいと注意しています。
停電・断水が続いたときの牛の管理
停電が16時間以内なら、乳量への影響は比較的小さいとされています。ただし48時間を超えると、乳房炎や乳量低下のリスクが一気に上がるそうです。
搾乳できない場合は、粗飼料や濃厚飼料の量を減らし、泌乳前期の牛を優先的に対応するのが対処法として挙げられました。
いつも通りをやらない判断が牛を守ります。
さらに通電が復旧した後にも油断は禁物だといいます。漏電やショート、治療牛や非出荷牛の管理が雑になりがちなので、普段以上に確認することが結果的に一番の近道だそうです。
川上牧場の備えと「無理しない」という選択
最後に、川上牧場自身の備えについても語られています。発電機は用意していないものの、都市近郊にレンタル会社が多く、親族に電気・土木関係の人がいるため、いざという時は優先的にお願いすると伝えているそうです。
水についても、目の前に大きな河川があるので、必要なら水中ポンプで汲んでタンクに溜める想定だといいます。
そして各地の被災した酪農家に話を聞くと、共通して「無理しない方がいい」と言われるとのこと。
無理して牛に負担かけて、人間が無理して搾乳して、それを捨てるっていうのを、しなくてもですね、ある程度補填してもらうところを安心して使ってですね。
廃棄になった牛乳への補填制度や保険、大きな災害で認定された場合の補助金などもあると紹介されています。だからこそ、最低限のところをどうしのぐかを考えればいい、という姿勢です。
そのうえで、酪農家が災害時も牛を管理して牛乳を出荷し続けているからこそ、災害時でもスーパーやコンビニに牛乳が並ぶのだと話されました。牛乳はもうインフラの一つになっている、というわけです。
まとめ
島根東部の地震をきっかけに、酪農の災害対応マニュアルを現場目線で読み解いた回でした。電気と水が止まると全部が止まる産業だからこそ、「何を守るか」を平時に決めておくことが要になります。うちはどうだろう、と思った今が見直すタイミングかもしれませんね。
- 酪農は電気と水が止まると搾乳・冷却・給水がほぼ全て止まる。怖いのは災害後の乳房炎など二次被害
- 停電対策は全部を動かそうとせず、守る範囲を3段階で事前に決める。バルククーラーは起動時に約3倍の電力が必要
- 断水対策は飲み水だけでなく洗浄・衛生・生活用水まで含めて、確保・運搬・貯水を平時に決めておく
- 災害直後の優先順位は「自分と家族の安全→牛の確認→連絡・情報収集」。作業を中断する勇気が最優先
- 無理して搾って捨てるより、補填制度や保険を活用して最低限をしのぐ。だからこそ災害時も牛乳は店頭に並ぶ
