最終日は「お金の稼ぎ方」がテーマ
この日は中学生の職場体験3日目、最終日でした。前日は雨でびしょ濡れになって帰り、そのうち一人が風邪で欠席したと話されています。
1日目は牧場の仕事内容のインタビュー、2日目はライフプランシミュレーションを実施。この日は「お金の稼ぎ方」や「仕事」をテーマに進みました。
前日のシミュレーションでは、生きていくのにどれくらいお金がかかるかを試算し、初任給を「20万円」と決めていたそうです。この金額を出発点に授業が始まります。
初任給20万円の裏にある「時給」の考え方
川上さんは「なぜ20万円なのか」を、働く日数と時間から逆算して説明します。週2日休みなら月20日出勤で、20万円を20日で割ると1日1万円。それを8時間で割ると時給1,250円になります。
初任給で働き始めたCさんが、会社に自分の時間を売ってあげてるんですよ。労働として、ね。あなたは自分を売っている立場です。で、会社が買っている立場ですね。
続いて週1日休み、月24日出勤で同じく初任給20万円のケースを計算します。すると時給はおよそ1,041円。より多く働いているのに時給は下がるという結果になりました。
働く分、その分金が増えるはず。
一生懸命働くほど得だと思っていた中学生に、川上さんは固定給の落とし穴を伝えます。同じ「初任給20万円」でも、休みの日数によって時給の価値が変わるのだと解説しました。
1日1万円、時給はおよそ1,250円
1日およそ8,300円、時給はおよそ1,041円
自分の価値をどう高く売るか
川上さんは「会社に自分を売っているなら、高く買ってもらいたいはず」と話します。そこで、もし自分が社長ならどんな人を雇いたいか、と問いかけました。
一生懸命働く(人)。
中学生が好きなインコやハムスターのショップを例に、「どんな従業員に来てほしいか」を考えます。出てきた答えは、知識や資格を持っている人でした。
インコの知識とかがある人。
資格や知識がある人ほど価値が高く、月給も高く払える。逆に自分を高く売りたい人と、安くしか払えない会社ではマッチしない、という関係を説明します。
ただし川上さんは、安売り自体は悪ではないとも話します。好きな仕事に就けるなら安い給料でもいいという選び方もある、と補足しました。
自分の価値を上げる方法についての問いです。
大学まであと7年ほどある中で、資格を取ること、そしてやる気を出すことが挙げられました。やる気を出すには、たとえばインコやハムスターの生態を勉強して面白いと感じることが近道になると話されています。今できる一番の方法は「勉強」だと結論づけました。
お父さんお母さんとか先生が勉強しなさいって言ってるのは、そういうことです。挨拶しなさい、時間を守りなさい、身だしなみをちゃんとしなさいっていうのも、全部、将来仕事のときに自分の価値が上がるからやった方がいいよっていうアドバイスなんです。
15歳の1時間と80歳の1時間は同じではない
1日は24時間しかありません。川上さんは、同じ1時間でも年齢によって価値が違うと話します。
「80歳でお金がいくらでもあったら1時間で何をするか」と問うと、中学生からは「することはない」「どこか出かけるくらい」という答えが返ってきました。
ただ80歳では足が痛かったり、やる気が出なかったりするかもしれません。若いうちにしかできない経験や時間の使い方がある、というのがこの話のポイントです。
休みの時間にお金を使っていろんなことができるのは、その時しかないからね。80歳になって何かやろうと思っても、お金はあるけど体が動かない、みたいな状況になったりします。
インフレで「お金の価値」は落ちていく
次のテーマはインフレとデフレです。中学生は「インフレは聞いたことがある」「価値が変わったりする」と答えました。
川上さんは、日本がこれまで30年ほどデフレだったと説明します。デフレは物の価値が年々落ちていくこと、インフレは物の価値や金利が上がっていくことだと整理しました。
例に出たのはゲーム機です。中学生によると、あるゲーム機は去年4万円ほどで、今年は5万円に値上がりしたとのこと。この相場が続けば来年は6万〜7万円になるかもしれません。
手元の1万円は変わらないのに、ゲーム機との差は年々広がっていきます。同じ1万円でも、時間が経つほど買える量が減る。これがインフレでお金の価値が落ちるということだと話しました。
去年
ゲーム機4万円との差は3万円
今年
ゲーム機5万円との差は4万円
来年(想定)
ゲーム機7万円との差は6万円
中学生はお小遣いを貯金していると話しました。しかし川上さんは、貯めているお金の価値が年々下がっていく感覚を、今は誰も教えてくれないと指摘します。
さらに、中古品は安いというイメージも過去のものだと話します。今は物が足りず、中古品の値段も上がってきているそうです。
株で学ぶ「お金の増やし方」
では、どうやってお金を貯めるのか。前日に調べてきた方法として、中学生からは「株」という答えが出ました。学校の社会の授業で少しだけ触れたそうです。
授業でやって、川上さんの話ですぐパッと(株が)思いついた。
川上さんは「1万円のうちいくら株を買うか」を考えさせます。給料20万円なら株はいくらに当たるか、という比率でも問いかけました。中学生の答えは2,000円や5,000円でした。
ここで川上さんは、戦争が起きて株価が暴落し、預けたお金が1円になったらどうするか、という場面を提示します。オイルショックやリーマンショック、コロナのような出来事の例えです。
暴落後の投資判断についての問いです。
最初は「買わない」という答えでしたが、考え直して「買った方がいいかな」と1,000〜3,000円ほど買う、という選択に落ち着きました。その後、宇宙開発などで株が10倍に上がった場面も想定し、状況によって株が上がったり下がったりすることを体感してもらいました。
川上さんは、世界の80億人のうち幸せになりたい人の方が圧倒的に多いと話します。だから経済は波を打ちながらも右肩上がりに伸びてきた、というのがこれまでの考え方だと説明しました。
経済というものは、上がったり下がったりの波を持ちながら、右肩上がりになってきたのが今までの経済です。だから株を買っておくと、なんやかんや上がり下がりしながらも、右肩上がりに上がっていくでしょう、というのが今まで言われているやつですね。
最後に川上さんは、働いて得たお金を「貯金する」「株を買う」「物を買う」の3つに整理します。どれが一番増えるかを考え、生活やライフプランに合わせて組み合わせることで、少しずつお金が増えていくと話しました。
インフレ下では、置いておくほど価値が落ちる可能性がある
状況次第で価値が上がることもあれば、下がることもある
三日間の職場体験を終えて
この日で3日間の乳搾りが終わりました。中学生からは「最初は大変で難しかったけれど楽しくできた」「慣れてきたらちょっとだけ楽しかった」という感想が出ました。
川上さんは、この体験が大学進学なら7年後、高卒なら3年後に、365日続く「仕事」になると伝えます。そのうえで、これからの時代で大切なことを語りました。
世の中がどんどん変わって、AIとか出てくるとますます変わってくるので、自分が何をしたいとか、あれが好き、これが好きっていうのがめちゃめちゃ大事になります。それを大事にしてもらいたいなと思います。
最後に川上さんは、仕事で嫌なことを言われても、こう考えれば乗り切れると励ましました。牧場ならではの、ユーモアを交えた締めくくりです。
まとめ
最終日の授業は、乳搾りの体験に加えて、時給・自分の価値・インフレ・株という「お金と働き方」を中学生と一緒に考える内容でした。難しいテーマもありましたが、数年後に必ず直面する現実として、具体例を交えて語られています。
- 同じ初任給20万円でも、休みの日数によって時給の価値は変わる。
- 自分を高く売るには、資格や知識、やる気を積み重ねて価値を上げることが大切。
- インフレでは物価が上がり、同じ金額でも買えるものが減り、貯金の価値は落ちていく。
- お金は「貯金・株・物」に分け、生活やライフプランに合わせて組み合わせて増やしていく。
- これからの変化の時代は、自分の「好き」を大事にすることが働き方のカギになる。
