なぜ働くのか、という問いかけ
職場体験2日目、川上さんはまず中学生たちに問いを投げかけます。仕事をして、働いて、なんで働くのか、考えたことはあるか、と。
お金を稼ぐ。
すぐに「お金を稼ぐ」という答えが返ってきます。そこで川上さんは、では、お金があったら働かないか、と重ねて聞きます。
中学生は「多分働かないです」「好きなことをします」と答えます。今好きなことは野球だといいます。
ただ、その野球をずっと続けるのか、死ぬまでやるのかと問われると、それはわからない、と正直な反応が返ってきました。
結局お仕事やってお金持ちになった人も、やることなくなっちゃったりとかして、なんで自分生きてんだろうみたいな、なっちゃうわけですよ。
川上さんは、仕事とは人生の中でやりたいことや、世の中を変えてみたいこと、もっと便利にしたい、他の人を幸せにしたいという思いとつながるものだと話します。
そして、そうしたことを考えるために、自分が何ができて何ができないのかをシミュレーションしていこう、と提案しました。
ライフプランシミュレーションを始める
川上さんは、いつも職場体験の子どもたちにやっているという「ライフプランシミュレーション」を紹介します。紙に自分の人生を書き出していく方法です。
まずは今の年齢を15歳に統一して書き、次に自分が死ぬ年齢を書きます。中学生からは「120歳」「100歳」といった答えが出ました。
川上さんは、深く考えず適当でいい、と促します。ちなみに今の男性の平均寿命は75歳ほどだと補足しました。
続いて、何歳から働き始めるか、大学に行くかどうかを書いていきます。大学に行く子は、その費用を上に書きます。
川上さん自身は農業大学校に進学し、20歳から酪農ヘルパーとして働き始めたそうです。初任給は25万円だったといいます。
一人暮らしと毎月の生活費を書き出す
次は一人暮らしにかかるお金です。3人とも一人暮らしをすると答え、川上さんは初期費用や家賃を書かせていきます。
一人暮らしの初期費用の目安は、家賃の4〜6か月分で約40万円から60万円だと説明されます。中学生の予想は「50万」でした。
家賃については、平均が5万から6万円ほどだと伝えられます。中学生は最初「4万ぐらい」と答えていました。
食費は、コンビニやスーパーで一食買う想定で計算します。弁当と飲み物、ゼリーやプリンなどで一食千円ほどという答えでした。
みんなちゃんとあれだね、金銭感覚ちゃんとあるね。ちゃんと今のスーパーのお金のね。
一食千円なら、朝昼晩で一日3000円という計算になります。川上さんは自分は一日二食なので千円ほどだと話しました。
スマホ代は、機種にもよるものの格安SIMなら3000円から5000円ほど、光熱費は全国平均で月1万円から1万3000円ほどと説明されます。
遊びや旅行に使うお金も月2万円ほどと書き込み、毎月の生活費の全体像を作っていきます。
給料と奨学金の返済でわかる現実
いよいよ働き始めます。初任給を月20万円と設定した中学生に対し、川上さんが実際の平均を示します。
日本の新卒初任給の全体平均は約23万円、大学卒で24万円、大学院卒で28万円ほど。ここから税金が引かれ、手取りは19万円から23万円程度だといいます。
手取りから食費、光熱費、スマホ代、遊ぶお金を引いて、毎月いくら残るかを計算します。残額は人によって5万円前後になりました。
さらに、大学に行くと決めた子は奨学金の返済が加わります。奨学金の返済期間は最長で10年から20年ほどだと説明されました。
例えば350万円を10年で返すと、月々約3万円の返済です。ここで、大学に行った子と行かなかった子とで、手元に残るお金に差が出ることが見えてきます。
大学に行ったり高校に行ったりすると、これだけの差が出てきますね、最初ね。
結婚・出産・住宅、人生の大きな出費
次は結婚です。何歳で結婚するかを書き、費用を考えます。中学生の予想は「50万ぐらい」でした。
川上さんは、結婚式の全国平均は約454万円だと示します。ただし夫婦二人で払うため、半分の200万円で計算しました。
毎月残るお金から200万円を貯めるのにどれくらいかかるか計算すると、残額が多い子ほど早く貯められることがわかります。
中学生からは、ご祝儀があるのではという指摘も出ました。川上さんは、記念写真だけで済ませる人もいて、結婚の仕方はカップルの考え方次第だと答えます。
続いて出産です。出産費用の全国平均は約52万円ですが、国から一人当たり50万円ほどの支援金が出るため、自己負担はほとんどないと説明されました。
さらに住宅です。住宅購入費の全国平均は約4300万円から6500万円。中学生からは「暗雲してる」という声が漏れました。
暗雲してるよ。嘘でしょ?夢の話してるよ。今みんなが夢のあるような話してるよ。
家を4000万円で買い、月3万円ずつ返すと年間36万円。単純計算で百年以上かかることになり、返済の重さが実感として見えてきます。
老後の収支と、親の立場に立つ
働ける年齢にも限りがあります。定年退職は今65歳や70歳ほどになってきているという話から、何歳まで働くかを書きます。
働かなくなる期間の生活費を計算すると、年金だけでは月々マイナスになることがわかります。中学生の一人は月2万円ほどのマイナスと計算しました。
そのマイナスを退職後の年数分積み上げると、引退までに貯めておくべき金額が見えてきます。ある中学生は退職前に千三百万円ほど必要という結果になりました。
ベテラン公務員は年収八百万なので、ちょっと目指します。
川上さんは、こうした将来の目標がシミュレーションから出てくるのがいい、と応じます。中学生の一人は葬式は大きくしてほしい、費用は自分で出す、とも話しました。
そして川上さんは、今まさに君たちのお父さんお母さんがこのやりくりをしている最中だ、と伝えます。
お父さんお母さんがあれ買ってよって言うでしょ。どう?自分が親になって、子供が二人できて、途中でNINTENDOSWITCH2買ってよって言われたら出せそうですか?
子どもの立場から親の立場に視点を移すことで、「車ぐらいは自分で買えよ」と言いたくなる気持ちと、自分が言われた時の気持ちの両方に気づいていきます。
まとめ
川上牧場の職場体験2日目は、「なぜ働くのか」という問いから始まり、人生にかかるお金を紙に書き出すライフプランシミュレーションを通して、将来から逆算して今を考える大切さを伝える回でした。
- 「なぜ働くのか」を出発点に、仕事とやりたいことのつながりを考えた
- 一人暮らし・結婚・出産・住宅・老後にかかる費用を平均額とともに書き出した
- 大学進学や奨学金の有無で、手元に残るお金に差が出ることが見えてきた
- 将来やりたいことから逆算すると、今何をすべきかがわかるという気づきを得た
- 子どもの視点から親の視点に立ち、家計を支える大変さを実感した
