今日の牧場と、ちょっとテンション高めの理由
配信は繁殖検診の話から始まります。この日は受胎している牛に移植を1頭おこなえたそうで、種は順調についているとのこと。
ただ、悩みもあるようです。夏場の分娩が多く、春に産む牛がすごく少ないのだとか。
そして今日のメインは、リスナーからの質問回です。ゲノム検査の数値について聞かれたそうで、川上さんはいつもより張り切っています。
今日はガチゴチの酪農のお話をしていきますので、まあテンションちょっと高めですね。ありがたいことにこういう質問が一番嬉しいんですが。
品種改良は川上さんが酪農のなかでいちばん好きな分野だそう。だからこそ、熱量たっぷりで答えていきます。
届いた質問と、そもそもゲノム検査って?
質問はTikTokLIVEから届きました。お名前は伏せた上で読み上げられます。
川上牧場のゲノム数値はいくらですか? 私は3000を超えている子牛がいます。
まずは「ゲノム検査って何?」というところから。牛の毛根や血液、細胞などを取って検査することで、その牛がまだ牛乳を出す前、赤ちゃんを産む前の段階で、将来どれくらいの能力を持ちそうかを予測できる仕組みです。
わかるのは乳量だけではありません。乳脂肪や乳タンパクといった乳成分、無脂固形分、さらに病気のなりやすさ・なりにくさといった健康形質まで見えてくるといいます。
川上牧場はこの検査に早くから取り組んでいて、国内で一番はじめに問い合わせたのは川上さんだと言われたこともあるそうです。
結論、3000超えは「エリート級」です
川上さんの答えは、まずここから。
ただし大事なのは、その3000が「何の指数か」と「どう使うか」だと続けます。ゲノム数値には種類があるんですね。
大きく分けると、総合指数と項目別の指数があります。乳量だけで3000を超えるのはなかなかないので、3000という数字は総合指数を指していることが多いそうです。
アイジェニティー、TPI、ネットメリットなど。儲かる要素と飼いやすさをまとめた数字
乳量、乳脂肪、乳タンパク、繁殖、乳房、体細胞、寿命など、要素ごとの数値
総合指数をざっくり言うと、「この牛は儲かる要素と飼いやすさをどれだけ高い確率で持っているか」を1つの数字にギュッとまとめたもの、ということです。
川上牧場のリアルな数字を公開
ここからは、なかなか聞けない牧場の実数字です。10年以上検査を続け、毎年13〜14頭ほどを出していて、これまで検査した牛はおよそ110頭になるそうです。
最高値は3054。うちにも3000超えはいる、と川上さん。全国と比べても高いゾーンの牛がいるのではないか、と話します。
3000超えがすごい理由は「才能」ではなく「確率」
ここが今回のいちばんの核心かもしれません。3000超えがすごいのは、才能の話ではなく確率の話だといいます。
だから3000超えは、将来乳量や乳成分で結果を出しやすく、繁殖や寿命、乳房も良い方向に向かいやすい。つまり投資効率が良い可能性が高い、ということになります。
ただし、ここに大事な注意点があります。ゲノムはあくまで「勝ちやすいデッキ」を作るようなもの。実際の勝負は現場の管理次第だと強調します。
保育や育成の技術、分娩前後の管理、飼料設計、乳房炎や病気の予防、暑さ対策や牛舎の環境。こうした管理が乗って、はじめて数字が具現化していくそうです。
だから3000超えが出た時に大事なのは「すごい」で終わらせるより、その子をどうエースに育てきるか。ここが重要です。
3000超えの子が出たら、どう育てる?
では、実際に3000超えの子牛が出たらどうするのか。川上さんは「守りの交配」という考え方を挙げます。
トップの牛ほど、次の一手でこけたらもったいない。だからこそ、乳量や乳成分だけを攻めるのではなく、事故りやすいところを守る方向にも目を向けるといいます。
具体的には、乳房の中央靭帯や、蹄、受胎率などの繁殖性、体細胞など。せっかくの牛がすぐダメになってしまったら元も子もない、というわけです。
育て方も「いつも通り」ではなく、エース仕様にするのが大事だと話します。初乳や保育、育成期の発育、初回受精の設計まで、丁寧に見ていくということですね。
3000超えの子は、自家更新の核にもなるし、受精卵のドナーにもなるし、販売戦略でも強い。牧場の戦略を変える力がある、と川上さんは言います。
川上牧場が目指す「自分の牧場に合った牛」
最後に、川上牧場自身の改良方針です。何を一番に置いているのでしょうか。
理由はシンプルで、長く働けてトラブルが少ない牛が、結果的にいちばん利益を残すから。数字が高くても牛が弱かったら意味がない、という考え方です。
交配プログラムの営業から聞いた話も紹介されます。ネットメリットばかりを攻めると牛が小さくなり、餌を食い込めず、大きな乳器を支えきれずに生産寿命が短くなる傾向があるのだとか。
だからこそ、総合指数や1つの指数だけを見るのではなく、バランスよく交配することが大事だと締めくくります。
自分の牧場に合った牛が一番優れた牛ですから。すごい指数が高いっていうのは確率の問題で、環境と一緒に伴っているから伸びるっていうのがありますから。
まとめ
今回は「ゲノム数値3000超えってすごいの?」という質問に、川上牧場のリアルな数字と改良の考え方で答える回でした。数字はゴールではなく、現場の管理と組み合わせてはじめて生きてくる、というのが川上さんの結論です。
- ゲノム数値の3000超えは、総合指数で見ると「エリート級」の水準
- 川上牧場の実数字は、牛群平均2302・中央値2320・最高値3054(約110頭)
- 3000超えがすごいのは才能ではなく「そうなる確率が高い」という予測だから
- 高い数字も、保育・育成・飼料・環境などの現場管理が乗って初めて具現化する
- 川上牧場は健康・体型・繁殖を重視し、「自分の牧場に合った牛」づくりを目標にしている
