リスナーからの質問「オス牛は去勢をするの?」
この日の配信で取り上げたのは、TikTokネーム23さんから寄せられた質問です。娘さんが畜産に興味を持ち、お母さんが家族みんなで酪農を応援しながら疑問を送ってくれているそうです。
オス牛は去勢をするって本当ですか?なぜ去勢をするのですか?
川上さんは、ペットのオス猫やオス犬でも生後半年ごろに去勢手術をすることがある、と身近な例から話を始めます。牛もだいたい同じ時期に去勢する牛はする、でも去勢しない牛もいる、とのこと。
去勢という行為はとても大事で、でもなかなか表では語られにくい質問です。今日は酪農畜産の現場で実際に何が起きているのかを丁寧にお話ししていきます。
去勢しないとどうなる?攻撃性とホルモンの話
まず結論から。多くの場合、オス牛は去勢されます。ただし、すべてのオス牛が必ず去勢されるわけではありません。
去勢しないオス牛は、成長とともに攻撃性が非常に高くなります。他の牛や人に対して危険になり、縄張り意識や闘争行動が強くなっていくそうです。
特に体重が600キロを超えると、人間の力では制御できないほどに。これは性格の問題ではなく、ホルモンの影響だと川上さんは説明します。
去勢する理由は安全・管理・肉質
去勢の一番大きな理由は安全性です。酪農や肥育の現場で最優先されるのは、人と牛の安全だと川上さんは話します。
去勢をしてないオス牛は突然興奮する、人を敵と認識することがある、事故につながるリスクが高い。そのため事故防止の観点から去勢されるケースが多いのが現実です。
次に飼いやすさや群れでの管理のため。去勢されたオスは性格が穏やかになり、他の牛と一緒に飼いやすくなって無駄な争いも減ります。結果としてストレスや怪我が減り、管理が安定するそうです。
これは牛自身の福祉、アニマルウェルフェアの面でも重要だと川上さんは付け加えます。
さらに肉質にも大きく関係します。一般的に去勢牛は脂肪がつきやすく柔らかいお肉になり、去勢しない牛は筋肉質で硬くなりやすいとのこと。
日本で好まれる柔らかく脂の入った牛肉は、去勢牛が前提になっています。
安全
突然興奮したり人を敵と認識する事故を防ぐため
管理
性格が穏やかになり群れで飼いやすく、争いや怪我が減るため
肉質
脂肪がつきやすく柔らかいお肉になるため
去勢しないオス牛もいる
一方で、去勢しないオス牛もいます。ここも大事なポイントだと川上さんは強調します。
代表的なのが種雄牛。人工授精用の種を取る繁殖用のオス牛で、ごく限られたエリート中のエリートだけがなれる存在だそうです。
また海外では、放牧や肥育の管理条件や肉質の好みが違うため、あえて去勢せずに飼うところもあるとのこと。つまり去勢は必ずではなく、目的に応じた選択なのです。
「去勢は残酷」への向き合い方
「去勢イコール残酷」と言われることもあります。この疑問は現場でも必ず浮かぶといいます。
実際には子牛のうちに獣医師や適切な方法で、痛みやストレスを最小限にして行われます。目的は苦しめることではなく、その後の長い期間をより安全で穏やかに過ごせるようにするためです。
では人間の都合だけなのか。川上さんは正直に、人間側の都合という面はあると認めます。ただ、牛側の安全やストレス軽減も同時に考えられているとのこと。
巨大なオス牛の怖さと、各国の食文化
話は出雲市に暮らすブラジルの人たちの食文化にも広がります。ブラジルではバーベキュー、シェラスコでお肉をよく食べるそうです。
硬いお肉を柔らかくする調理法が日本とは違い、アルミホイルで包んでじっくり焼いたり、少し離れた火でゆっくり焼いたり。それがめちゃくちゃ美味しいと川上さんは話します。
各国の文化に合わせてお肉の生産も好みも変わる。日本では黒毛和牛の脂の美味しさが好まれるため、去勢している牛が圧倒的に多いというわけです。
最後に川上さんは、去勢していないオス牛の怖さを繰り返し強調しました。ちっちゃいオス牛でも本当に怖いのだとか。
普段の通りに餌やりして可愛がっていても、いきなり突っ込んでくる。本当にボコボコにされる動画を見ると、あの仕事はすごいなと思います。
1トンを超える牛は化け物です。牛可愛いなとか、そういうのはないです。マジで。
まとめ
今回はリスナーの質問をきっかけに、オス牛の去勢がなぜ行われるのかを掘り下げました。安全・管理・肉質という現場の事情と、簡単には白黒つけられない難しさがよく伝わる回でした。
- 多くのオス牛は安全・管理・肉質のために去勢される
- 去勢しないと攻撃性が高まり、600キロを超えると人では制御できなくなる
- 種雄牛や海外の一部など、あえて去勢しないケースもある
- 去勢は子牛のうちに痛みを最小限にして行われる
- 日本で去勢牛が多いのは、脂の入った柔らかい肉が好まれる食文化と関係している
