月で酪農はできるのか、という質問
この日の配信には、少し変わった角度の質問が寄せられました。
配信アプリのポポポから、ポポポネームのカンシンさんが送った質問です。
酪農家世界初の月に降り立つ川上さんは、月での酪農をどのように計画されますか。必要ないと思われますか。六分の一の重力で酪農は可能でしょうか。
質問の背景には、スペースXが上場したことがあります。宇宙開発が身近になってきた気配を感じての問いでした。
宇宙に興味はありますよね。やっぱり男性ならみんな宇宙好きなんじゃないんですか。ロマンがありますよ、やっぱりね。
川上さんはまず、質問の「世界初」という部分をやわらかく否定します。
世界初ではないと思います。多分、多分誰かいると思います。世界で探したらね。なのでちょっとわからない。行けるのかな、わからないですね。
結論は「理論上は可能、でも今は難しい」
川上さんは、まず結論から答えます。
そのうえで、牛を飼うために必要なものを整理します。餌、水、空気、そして牛が休める寝床です。
大事なのは、牛を連れていくことではなく、先に環境を整えることだと話します。
つまり牛を持ってくっていうより、先に環境を整えることが大事ということですね。
月で一番困るのは「牛」ではなく「草」
月で最初に困るのは、意外にも牛そのものではないと言います。問題は餌となる草がないことです。
牛は草を食べる動物で、毎日大量の牧草や餌を必要とします。
これだけの餌と水を月で用意するには、牛より先に植物工場を作る必要があります。
太陽光を使うのかLEDを使うのか、どんな牧草を育てるのか。そこにまず課題があると話します。
重力・繁殖・分娩、まだわからないことだらけ
次の課題は、質問にもあった重力です。月の重力は地球の六分の一です。
地球で七百キロある牛は、月ではおよそ四百八十キロほどになる計算だと話します。
ただ、その環境で牛が健康に暮らせるかはわかっていません。人間ですら宇宙滞在で筋肉や骨が弱くなることがわかっています。
牛がちゃんと立てるのか、寝起きができるのか、そして分娩ができるのか。どうなるかは正直、飼ってみたことがないのでわからないということになりますね。
さらに未知なのが繁殖管理です。牛乳を出すためには欠かせない部分ですが、データはほとんどありません。
宇宙で人工授精して受胎するのか、胎児が正常に育つのか、子牛が生まれるのか。すべてがこれからの課題です。
それでも未来には家畜が必要になる
難しさを語りつつ、川上さんは将来的には月や火星でも酪農が必要になると考えています。
人間が移住すれば食料が要ります。効率的に動物性たんぱくを得るには家畜が欠かせないという見方です。
牛が優秀なのは、人間が食べられないものを高品質なタンパク質に変えられる点だと話します。
植物
人が食べられない草や食品残渣が餌になる
牛
草を牛乳という高品質なタンパク質に変える
牛糞
肥料になる
人と植物
肥料が植物を育て、植物が牛を育て、牛が人を育てる
この循環が回れば、宇宙でもうまく成り立つのではないかと語ります。ただし、この部分もまだ未知だと付け加えます。
技術が進めば、牛ではなくヤギかもしれず、ゲノム編集で環境に適応した動物になる可能性もあると話します。
月面牧場の作り方は「牛が最後」
もし月面牧場を作るなら、その手順は地球の考え方と同じだと言います。
地球の牧場でも、実は牛より環境づくりのほうが大事だと話します。
十年後か百年後かはわからないものの、いつか月面から配信する日が来るかもしれないと夢を語ります。
月面牛乳っていうブランドで出しちゃう。どうする。ちょっと夢がありますね、これね。
ありえない問いが、業界の頭をやわらかくする
最後に川上さんは、こうした一見ありえない質問の価値を語ります。
酪農業界ってね、ガチガチで固まっちゃってるんですよね。皆さんのこういう質問で頭を柔らかくする。未来のことなんで、本当にワクワクすると思うんですよ。
今はAIの力を使えば、どうすれば現実にできるかを手軽にシミュレーションできると話します。
だからこそ、断られそうな質問でも遠慮なく送ってほしいと呼びかけました。
まとめ
月での酪農は理論上は可能でも、今の技術では餌となる草、重力、繁殖という大きな壁があります。それでも川上さんは、人が宇宙へ移住すれば家畜が必要になると考え、牛より先に環境を作ることが酪農家の仕事だと語りました。
- 月で酪農は理論上は可能だが、今の技術ではかなり難しい
- 一番の課題は牛ではなく、餌となる草を育てる植物工場
- 重力・繁殖・分娩への影響はまだデータがなく未知
- 人が宇宙に移住すれば、家畜は循環を回す存在として必要になる
- 牛を連れていく前に、牛が幸せに暮らせる環境を作るのが酪農家の仕事
