「牛乳は牛の血液」への質問と献血の話
今回の質問は、YouTubeネームのセイさんから届きました。献血をきっかけにした、面白い視点の問いかけです。
川上さんは献血されていますか。以前「牛乳は牛の血であると言われていたかと思います。牛乳からも何かしらの新発見や活用はあるのでしょうか。蜂蜜のように、成分が健康食品や薬に生かされるようなことはありますか。
献血と牛乳を掛け合わせる発想を、川上さんは「本当にいい発想」と受け止めています。一見違う話に見えて、どちらも体の中から作られるものだという共通点があるからです。
川上さん自身は、学生時代の農業大学校では献血カーが来るたびにしょっちゅう献血していたと話します。
ただ今は仕事の関係で行けていないそうです。献血中にフラフラして仕事ができなくなると困るためです。
血が足りてないっていうことなんで、本当に血を分けてあげたいと思ってる方なので、行きたいなという気持ちはあるものの、仕事の関係上行けてないというのがちょっと回答になるかなと思います。
「牛乳=血液」は正確ではない
ここから本題です。「牛乳は牛の血液から作られる」という言葉について、川上さんは誤解されやすい表現だと補足します。
正確には、牛の乳房の中には乳腺乳をつくり分泌する組織。血液から運ばれた栄養を材料にして、乳腺細胞が乳の成分を合成します。という組織があり、そこを流れる血液の中のタンパク質や脂肪の材料、ミネラルなどを使って、乳腺細胞が牛乳を合成しているといいます。
つまり血液がそのまま牛乳になるのではなく、血液から運ばれた材料を使って牛乳が作られている、というのが正確な説明です。
よく言われる例えでは、牛乳1Lを作るために数百Lの血液が乳房を通過するとされています。それだけ大量の栄養が血液を通して運ばれているのです。
だから酪農家は、牛に何を食べてもらうか、どれだけ水を飲んでもらうか、どれだけ健康でいてもらうかを、すごく大事にしています。
牛乳から生まれる研究や成分
質問の後半、「牛乳から何か新しい発見や薬の開発はあるのか」という問いには、「あるんですよね」と答えています。
代表的なのはラクトフェリン牛乳や初乳に含まれるタンパク質。鉄と結びつく性質があり、免疫や腸内環境との関係が研究されています。です。牛乳や、初めてお産をした牛から出る初乳に含まれるタンパク質で、健康食品でも見かけるようになったといいます。
他にも、プロテインで有名なホエイタンパク牛乳から作られるタンパク質の一種。筋肉づくりだけでなく、高齢者の栄養補給や医療介護分野でも注目されています。があります。筋肉づくりだけでなく、高齢者の栄養補給や医療介護の分野でも注目されている成分です。
さらに、乳タンパク質が消化される過程でできる乳由来のペプチドという成分も研究されており、血圧などとの関係が調べられているそうです。
鉄と結合し、免疫や腸内環境との関係が研究されるタンパク質
筋肉づくりや高齢者の栄養補給、医療介護で注目される成分
乳タンパクの消化過程でできる、血圧などとの関係が調べられる成分
ただし川上さんは、牛乳を飲めば病気が治るとか、万能薬が作られるという話ではないと釘を刺します。科学はそんなに単純ではないからです。
まだ可能性を秘めた飲み物
酪農家として面白いと感じるのは、何千年も前から飲まれている牛乳なのに、今でも新しい発見が出てくることだといいます。
昔の人は「牛乳は栄養がある」くらいしか分かりませんでした。今はタンパク質や脂肪、乳糖、ミネラル、機能性成分まで研究が進んでいます。
そう考えると、毎日絞っている牛乳も、まだまだ可能性を秘めた食品なのだと話されています。
飲むだけじゃない牛乳の活用法
最後に、健康以外の活用法も紹介されました。牛乳からはすでにプラスチックが作られているそうです。
牛乳から作られたプラスチックは自然に分解できる生分解性微生物などによって自然に分解される性質。海洋のマイクロプラスチック問題への対策として注目されています。で、海のマイクロプラスチック問題の解消につながる可能性があると話します。
これに脱脂粉乳を使えば、バターを作りたくても脱脂粉乳が積み上がってしまう、という酪農側の課題の解消にもつながるといいます。
もう一つが衣服です。牛乳に含まれる成分を繊維にしてTシャツを作るスタートアップが北海道にあり、クラウドファンディングを川上さん自身も支援したそうです。
これはもうAIの技術が進化すると、もっともっと牛乳の活用法が出てくるかなと思うので、楽しみでありますね。皆さんが「こんなの見ましたよ」みたいなのがあったら、教えていただけたら嬉しいなと思います。
まとめ
「牛乳は牛の血液」という言葉は、正確には血液から運ばれた材料で牛乳が作られるという意味です。その牛乳には今も研究が続き、健康分野から素材まで活用の可能性が広がっています。
- 牛乳は血液そのものではなく、乳腺で血液の材料から合成される
- 牛乳1Lをつくるのに数百Lの血液が乳房を通過するとされる
- ラクトフェリンやホエイタンパク、乳由来ペプチドなどが研究されている
- 生分解性プラスチックや繊維など、飲む以外の活用も進んでいる
- 何千年も飲まれてきた牛乳は、今も新しい発見を秘めた食品
