毎年恒例、中学生の職場体験がスタート
川上牧場では毎年、地元の中学生の職場体験を受け入れています。
この回は男子中学生3人が来場し、学校から課された「職場へのインタビュー」に川上さんが答えていく形で進みました。
今年もですね、毎年恒例の中学生の職場体験を受け入れしておりますので、お父さんお母さんにもぜひ聞いてもらいたいんでね。
酪農家の1日は朝5時から夜7時半まで
最初の質問は、仕事の内容についてでした。川上さんは細かく1日の流れを説明していきます。
朝は5時に起床し、牛舎で牛のベッドを掃除してから乳搾りをします。その後、餌場の掃除と新しい餌の追加、子牛への餌やりを済ませると、だいたい朝8時になります。
ここで「まだ8時だから」と川上さん。日中は餌の追加やもみ殻集め、堆肥の販売、人工授精、酪農の会議、食育活動などをこなし、終わるのは13時ごろだと話されています。
その後1〜2時間休憩し、15時からまた牛舎に入ります。ベッド掃除、夕方の乳搾り、餌やりを終え、配信活動をして、帰宅は19時半ごろです。
そしてこれを365日続けています。子牛の分娩はいつ起きるかわからず、夜中の対応もあると話されています。
休日についても、感覚が少し違うと話されています。2週間に1回は取るものの、それはお手伝いさんにお願いして「お金を払って買っている休み」なのだそうです。
みんなの思う休日とはちょっと感覚が違って、お金を払って休日を買ってます。
牧場物語との出会いから酪農家へ
なぜこの仕事を選んだのか、という質問には、意外なきっかけが語られました。
川上さんは小学校低学年のころに初めてゲームボーイを買い、周りがポケモンをやる中で「牧場物語」というゲームを選びました。
そのゲームを通じて牧場や酪農に興味を持ち、農業高校、農業大学校へと進学します。その後、酪農ヘルパーの仕事を経て、結婚して川上牧場を営むようになったと話されています。
資格を持つと働ける仕事が増える
必要な資格や免許を尋ねられると、川上さんはたくさんの資格証明書を見せながら説明しました。
まず持っているのが家畜人工授精師という国家資格です。牛への種付けや受精卵の移植ができる資格だと話されています。
ほかにも小型車両建設機械の特別教育修了証、ガス溶接、アーク溶接、フォークリフト、小型移動クレーン、玉掛けなど、多くの資格を持っています。
これらの多くは農業大学校時代に取ったもので、普段使うのはフォークリフトや人工授精が中心だそうです。ただ、資格がないとできない作業もあると話されています。
川上さんが強調したのは、資格を持つと「できる仕事の量が増える」ということでした。中学生が一輪車で30分かけた餌やりも、機械なら5分ほどで終わるといいます。
同じ時給でも6倍もらってもいいんじゃねえかってぐらい。資格を持ってるってそういうことだ。
仕事の喜びと、コロナ禍の辛さ
仕事が楽しい時を尋ねられると、川上さんは複数の場面を挙げました。
子牛が生まれた時、餌をしっかりやって牛の調子がいい時、牛乳がよく売れた時や子牛の値段が上がった時など、自分の頑張りが対価として返ってくると嬉しいと話されています。
配信を通じて「牛乳好きですよ」「いつも飲んでます」という声が届くのも嬉しいそうです。
一方で、辛かった時としてコロナ禍を挙げました。学校給食や飲食店が止まると、そこで使われていた牛乳や乳製品の行き先がなくなります。
しかし牛は生き物なので、搾ることを止められません。毎日搾り続けても「いらない」と言われる状況が、一番きつかったと話されています。
牛乳って牛からできてるんで、止めることができないんですよね。生き物なんで。毎日365日絞らないといけない。一生懸命作ったものがいらないって言われる、あれが一番きつかったです。
「意味がわからない生き物」牛の面白さ
好きな動物を聞かれると、川上さんは即答で「牛」と答えました。牛については語り出すと1時間以上話せると言います。
中学生3人はそれぞれカバ、インコ、ハムスターが好きだと答え、動物好きが集まった職場体験になりました。
川上さんは牛の面白さを、その独特な生態から語ります。牛には4つの胃袋があり、体重以上のエネルギーを牛乳として出す「トップアスリート」のような存在だと話されています。
さらに、牛は草を食べたいのではなく、お腹の中の微生物が草を分解し、その増えた微生物を食べて大きくなっていると説明します。
牛の胃袋の働きはまだ完全には解明されておらず、そこが面白いと話されています。世界中どの地域でも牛が飼われている点も、川上さんにとっては興味深いようです。
AIとロボットが変える、これからの働き方
インタビューが一段落したあと、川上さんは中学生たちに将来の仕事について問いかけました。
3人はそれぞれ、父親の影響で地質に関わる仕事、動物に関わる仕事などを挙げ、「好きなこと」と「お金になること」のどちらを選ぶかを考えていきます。
好きなこととお金になること、どっちを選ぶ?
中学生の1人は「両方大事」「お金も取れる仕事がいい」と答え、川上さんとのやり取りの中で自分の考えを整理していきました。
話は、AIとロボットが社会に入ってくる近い未来へと広がります。川上さんは、家事ロボットや自動運転がすでに現実になりつつあると伝えます。
仕事の8割がなくなるとも言われる中で、「その時どうする?」と問われ、中学生たちは戸惑いながら考え込みました。
この質問でこんな悩むとは思ってなかった。
川上さんは歴史を例に、変化の大きさを説明しました。刀から馬、そして銃へと戦い方が変わったこと、海外から靴が入ってわらじ職人の価値がなくなったことを挙げます。
そのうえで、君たちが就職するころには「明日には価値が変わる」ような変化が毎年起きると話されています。
計算やAIが答えを出してくれるなら、なぜ勉強するのか。川上さんはあえて中学生に問いかけ、暗くなる場を「これは楽しい話だ」と受け止め直しました。
めっちゃ暗くなってんじゃん。いや、楽しい話だよこれ。だから好きなことができるようになってくるよっていう話だよ。
中学生から「お金の意味がなくなる」という気づきが出たところで、川上さんはこの続きは翌日以降に話そうと締めくくりました。
まとめ
中学生の職場体験インタビューは、酪農の1日や資格の意味を伝えるだけでなく、仕事の喜びや辛さ、そしてAI時代の働き方まで話が広がる時間になりました。牛という「意味がわからない生き物」への愛着と、変化する未来への問いかけが印象に残る回です。
- 酪農家の1日は朝5時から夜7時半までで、365日続く仕事
- 資格を持つと「できる仕事の量が増える」ことが働くうえで大きな価値になる
- コロナ禍で作った牛乳が「いらない」と言われたことが最も辛かった経験
- 牛は4つの胃と微生物で草を消化する、まだ解明されきっていない面白い生き物
- AIとロボットが仕事を変える時代に、好きなことをどう選ぶかが問われる
