リスナーからの質問「草は目的で変えている?」
チモシー、イタリアン、スーダン、アルファルファとかいろいろ聞きますが、目的(栄養)によって食べさせる草を変えているんですか?
これはリスナーのリンさんから届いた質問です。
川上さんは、この問いを酪農の核心にふれる質問だと話します。
チモシー、イタリアン、スーダン、アルファルファいろいろ聞きますが、目的や栄養によって食べさせる草を変えているんですか。これ酪農家からすると、かなり面白い、根幹となる質問ですね。
一般には「牛は草なら何でも食べる」というイメージがあるかもしれません。
けれど実際は、牛のご飯はかなり細かく栄養設計されていると言います。
牛にとっての草と、胃袋の仕組み
牛は1日に30から40リットルもの牛乳を出します。
そのためには、それに見合うカロリーを毎日食べさせる必要があります。
食べさせないと牛は痩せていき、種がつかなくなることもあると話されています。
本当にトップアスリートと一緒ですね。栄養設計されてます。
牛は胃袋が4つある反芻動物で、草をお腹の中の微生物に発酵してもらいながら栄養に変えています。
つまり牛は草を食べているようで、実際は微生物を育てているとも言えます。
だからどんな草を入れるかで、牛の健康も乳量も牛乳の成分も変わっていきます。
代表的な牧草と、それぞれの役割
まず紹介されたのがチモシーです。繊維がしっかりしていて、なおかつ消化がいい牧草だと言います。
牛は繊維が不足すると反芻が減り、胃が酸性に傾いて体調を崩します。だから繊維が長く消化のよいチモシーは、胃袋の健康維持に大事だと話します。
人間でいうと食物繊維みたいなイメージですね。
次に、質問にもあったアルファルファです。豆科の牧草で、タンパク質やカルシウムが豊富です。
乳量を出したい牛や、分娩してすぐの牛によく入れられると言います。
ただし栄養が高い分、入れすぎると胃が酸性に傾いて負担がかかることもあります。高性能だけど扱いが難しい草だと定義しています。
続いてイタリアン、正式にはイタリアンライグラスです。収量が多く、嗜好性が高く、発酵しやすいのが特徴です。
つまり牛がよく食べる草です。ただし若いうちは水分が多く繊維が柔らかいため、設計を間違えると胃が不安定になり、下痢っぽくなることもあると言います。
日本の気候に合いやすく作りやすいので、重要な牧草だと話されています。
最後にスーダンです。スーダングラスは暑さに強い夏草で、最近は猛暑対策として重要になっているそうです。
ただし成長段階で栄養価が変わるため、刈るタイミングがかなり重要だと言います。
繊維がしっかりし消化もよい王道の草。胃の健康維持に役立つ
タンパク質やカルシウムが豊富。乳量向上や分娩後に使うが扱いが難しい
収量が多く牛がよく食べる。日本の気候に合い作りやすい
暑さに強い夏草。猛暑対策に有効だが刈る時期が重要
目的や牛に合わせた草の使い分け
質問への答えとして、目的で草を変えているのはその通りだと川上さんは言います。
乳量を増やしたいなら栄養価の高いアルファルファの比率を上げます。
胃を安定させたいなら繊維があって消化のよいチモシーを選びます。
もっと繊維を強くして反芻を促したいならスーダン、消化性やコストを抑えたいならイタリアンを入れると話します。
さらに牛は乳量や泌乳ステージによって要求量が違います。初めて子牛を産んだお母さんと、二、三産したお母さんでも変わってきます。
川上牧場のように牛が繋がれた繋ぎ牛舎では、一頭ずつ個別に餌を調整できます。
一方、牛が自由に歩いて餌を食べるフリーストールやフリーバーンでは、群れをどう管理するかになります。群れの平均値に合わせる牧場もあれば、乳量の多い牛に合わせる牧場もあると言います。
そして今、酪農家に一般的なのは、これらの草を全部混ぜてしまう方法です。
スーダンもイタリアンもアルファルファもチモシーも配合飼料も混ぜて、一口で栄養が満たされる混ぜご飯のようにして食べさせるところが増えていると話されています。
草が牛乳の味と、日本の酪農にもたらすもの
草は牛乳の風味にも影響すると川上さんは言います。放牧の牛乳が草っぽい香りになるのは、実際に牧草由来の成分が関係しているそうです。
海外にはチーズ職人がどんな草を食べたかまで気にする世界があります。ワインのテロワールのようなものだと例えられています。
一方で、日本の酪農はかなり草作りが難しいとも話します。雨が多く湿度が高く、猛暑や台風も来ます。
北海道以外は牧草管理が難しい地域が多く、川上牧場も輸入牧草を使っています。
アルファルファはアメリカやカナダから来るものが多いのですが、船が止まったり、引き合いが多くなると価格が高くなります。
韓国や中国、インドなども輸入牧草を買うため、国際情勢に振り回されます。今は円安で牧草が高くなり、外貨を多く持つ国に牧草が流れることもあると言います。
まとめ
今回は、牛が食べるチモシー、アルファルファ、イタリアン、スーダンといった草の役割と使い分けを、酪農家の視点から解説する回でした。牛はただ草を食べているようで、実は細かく栄養設計されていることが語られました。
- 牛は反芻動物で、草を食べることで胃の中の微生物を育てている
- チモシーは胃の健康維持、アルファルファは乳量向上と、草には役割の違いがある
- 乳量や泌乳ステージ、牛舎の形式に合わせて餌を使い分ける
- 今は複数の草と配合飼料を混ぜて与える方法が主流になっている
- 草は牛乳の風味にも影響し、日本の酪農は輸入牧草と国際情勢に左右される
