リスナーから届いた切実な質問
今回の配信は、川上牧場を毎日聴いているというリスナーからの質問に答える回です。
質問を寄せたのは、配信アプリのポポポネームさなこさん。酪農家の数が減っていることを日々感じているといいます。
酪農家の数は年々減っているのをひしひしと感じています。これ以上減ったら国内の乳製品を賄えないという限界数はありますか?毎日乳製品を消費することでしかできませんが、自分の食卓を守るために私たちが日々できることも含めて教えてください。
川上さんは、この質問を「酪農家側からすると本当に胸に刺さる質問」だと受け止めます。
牛乳が好きだからこその心配が伝わってくるとして、現場の感覚だけでなく統計や世界の事例を交えて答えていくと話します。
数字で見る酪農家の減少
川上さんによれば、酪農家が減っているのは感覚ではなく数字として明確だといいます。
日本の酪農家戸数は2024年時点で約1万1900戸。しかも毎年4〜5パーセントのペースで減り続けています。
直近では、今年度中に9000戸を切り、8000戸台になるのではないかというニュースも出たと紹介されています。
50年で戸数は半減したとも言われ、毎日2〜3軒ペースで酪農をやめている計算になると話されています。
五十年で半減したと言われてますからね。それぐらいの加速度で酪農が減っています。毎日だから二軒から三軒ぐらいのペースで酪農家をやめているということですね。
一方で、牛乳の生産量は戸数の減少ほど急激には減っていないといいます。
理由は一戸当たりの規模が大きくなっているから。つまり、少人数で膨大な量を支えている状態になっているのです。
大規模化しているから大丈夫、とは言えない理由
大規模化しているから大丈夫だと思われがちですが、川上さんは実際にはかなり綱渡りだと話します。
酪農は工場のように急に増産できません。牛は生き物で、妊娠、出産、育成に年単位の時間がかかるからです。
子牛が大人になって分娩するまでには2年かかると説明されています。
さらに牛乳は腐りやすい食品です。絞った瞬間から冷却、輸送、加工がすべて連動していないと成立しません。
つまり酪農というものは超巨大な生き物のインフラみたいな産業になっているということですね。
質問にあった「限界数はあるのか」については、明確な数字は誰にもわからないと川上さんは正直に答えます。
ただし危険信号はすでに出ています。生乳生産量は1996年の約866万トンをピークに減少し、2023年度は約732万トンまで減っています。
加えて、全国の乳牛の約6割以上が北海道に集中しているという偏りも問題だと指摘されています。
効率化の裏にある「異常時の弱さ」と世界の事例
川上さんは、効率化は平常時には強い一方で、異常時にはとても弱いと話します。
大規模災害や停電、感染症、物流停止、そして猛暑。こうしたことが起こると、一気に需給が崩れる可能性があるといいます。
2023年の猛暑では牛が大きなダメージを受けました。牛は人間よりずっと暑さに弱く、夏は乳量が落ちる一方で需要は増えるためです。
昨年は一部地域で牛乳を提供できず乳飲料に切り替えた例もあったと紹介されています。県外から運ぶ量も足りなくなったケースがあったのです。
世界に目を向けると、供給網が崩れたときの影響はさらに極端です。
お金を出せばいつでも買えるというのは、実はかなり脆い前提です。
消費者ができること、そして安さだけを追う怖さ
では、消費者には何ができるのか。川上さんがまず挙げたのは、毎日コップ1杯の牛乳を飲むことです。
牛乳を習慣的に飲む人は3割から4割ほどで、飲まない人がとても多いのが現状だといいます。
もし国民一人が1杯飲む量になれば、今の生産量の3倍が必要になると言われているそうです。
特別なことではなく、牛乳、ヨーグルト、チーズ、バターといった国産のものを日常で選び続けることが、一番大きな支えになると話されています。
ここで川上さんは、少し厳しい話にも踏み込みます。日本は世界的に見ても食品価格に厳しい国だという指摘です。
生活が苦しく手取りも減るなかで安さを追うのは自然なことです。ただ、安さだけを追い続けると国内生産そのものが維持できなくなってしまうといいます。
酪農は24時間365日休めず、電気代も飼料代も燃料代も上がっています。それでも牛乳価格は上げにくい構造にあるのが大きな問題だと語られています。
一度やめたら戻れない、というインフラの話
川上さんが個人的に一番怖いと感じているのは、気づいたときには戻れないということです。
酪農は新規参入の壁が他の産業と比べても極端に高く、個人で気軽に始められるものではないといいます。
一方で、やめるのは一瞬です。牛舎を壊し、牛を手放し、人がいなくなれば、地域の産業ごと消えてしまいます。
酪農を辞めるのは一瞬です。でも再開はほぼ不可能です。牛舎を壊し、牛を手放し、人もいなくなります。で、産業もなくなります。地域からね。
だからこそ川上さんは、酪農をインフラの一部だと意識してもらえると嬉しいと話します。
未来のために、消費者と生産者が近くなる
未来のために必要なこととして、川上さんは消費者と生産者がもっと近くなることを挙げます。
どこの誰が作ったかを知るだけでも、食べ物への見方は変わってくるといいます。
直売所でも牧場のイベントでもSNSでも、こうした音声配信でもいい。つながりが食料安全保障になる時代が来ると考えていると語られています。
ここで川上さんは、牛乳を飲むだけの応援の限界にも触れます。酪農家の平均年齢は約70歳で、後継者がいないと答える農家が半分以上を占めるといいます。
牛乳は一元集荷で全国の需給を調整しているため、飲めば全国の酪農家の応援になります。ただ構造的には、あと10数年でやめる農家の比率が高いのも事実だと話されています。
だからこそ、応援したい特定の農家を見つけて商品を買ったり活動を応援したりすることも大切だと、川上さんは自身のメンバーシップにも触れながら呼びかけました。
まとめ
酪農家の減少は感覚ではなく数字に表れており、大規模化で支えられている今の仕組みは異常時にとても弱い状態にあります。川上さんは、毎日牛乳を飲むことに加え、生産者とつながることが食卓を守る力になると本音で語りました。
- 日本の酪農家戸数は毎年4〜5パーセントのペースで減り続けている。
- 大規模化しているとはいえ、牛は生き物で急に増産できず、異常時には需給が崩れやすい。
- 安さだけを追い続けると国内生産の維持が難しくなり、一度やめた酪農は再開がほぼ不可能。
- 国民一人が毎日コップ1杯飲むと、今の生産量の3倍が必要になると言われている。
- 消費者と生産者が近くなるつながりが、これからの食料安全保障になると考えられている。
