角度が違う質問と「中立で答える」というスタンス
この日の配信は、いつもとは少し角度の違う質問から始まりました。テーマは二酸化炭素と地球温暖化、そして地球が氷河期に入るのかどうか、です。
酪農といえば「牛のゲップが地球温暖化につながる」なんて言われることもありますよね。そのあたりを、川上さんは片方の意見だけに寄らず、中立的に調べてきたと話します。
中立かつ事実ベースですね。これを大事にしてちょっとお答えしていこうかなと思います。
質問には「川上さんは当然ご存知のはずですが」とありましたが、本人はまず「わからないですよね」と正直に前置きします。
そのうえで、寒冷期に入ったり温暖期に入ったりというのは地球の変動の一項でもあると考えていると話しました。
そもそも「2030年氷河期説」ってどんな話?
まず前提として、2030年氷河期説がどこから来た話なのかを整理していきます。
元ネタは、太陽活動の周期、つまり太陽の黒点の減少によって地球の気温が下がる可能性がある、という研究の一部に由来するそうです。
太陽活動は約11年周期で強弱を繰り返していて、活動が弱い時期には地球がやや寒冷化する傾向があるとのこと。
ただし、ここが大事なポイント。2030年に氷河期レベルの寒冷化が起きると予測する、信頼できる論文は存在しないと川上さんは説明します。
寒冷化する可能性そのものは否定されていないけれど、地球規模の氷河期のようなレベルに一気に入るという話ではない、というわけです。
CO2の温暖化効果はどう評価されている?
次に、誤解が多いというCO2の話です。科学的には、CO2が温暖化に影響しているのは事実、というのが現時点の国際的なコンセンサスだと紹介されました。
ただし、どの程度影響しているかについては研究者によって幅があるそうです。
つまり、100パーセントCO2だけが悪いという単純な話でもないし、CO2は無関係という極論でもない、と川上さんは整理します。
気候は、太陽活動・海流・火山活動・大気成分・雲の量など、いろんな要因が複合して決まるため、単一の原因に断定することはできないんですね。
寒冷化か温暖化か、結局どっちが来るの?
では寒冷化と温暖化、どちらが来るのか。川上さんの答えはシンプルでした。
正直に言うと、誰にも断定できないが正解です。
理由は、気候が複雑系で予測が非常に難しいから。未来の気候は、変化の幅も、地域差も、時期も、すべてが不確実だと話します。
だからこそ、農業は「何が来ても耐えられる柔軟性」が最も重要になる、という結論につながっていきます。
予測に依存しない酪農のために川上牧場がやっていること
川上牧場が大事にしているのは、予測に依存しない酪農です。温暖化が進んでも、寒冷化が来ても、異常気象が増えても、経済が不安定でも、続けられる酪農を目指しています。
具体的には、生産データや気象データをAIでリアルタイムに分析し、AIの予測をかなり使っているそうです。今の技術のなかで一番信頼性が高いから、というのがその理由です。
餌についてもリスク分散を徹底しています。輸入飼料、地元の餌、自給飼料を組み合わせ、どれか一本に絞らないのがポイントです。
さらに、地元で手に入る酒粕・醤油粕・もやし粕などの副産物も活用しているとのこと。
どれか1つの飼料に依存すると、その入手が途絶えたときに一気に弱くなってしまう
輸入飼料・地元の餌・自給飼料や副産物を組み合わせ、環境が変わっても供給が途切れにくくする
牛乳が売れないという事態を避けるための取り組みも欠かせません。音声配信やSNSで消費者と直接つながったり、いろんなコミュニティに参加して一緒に課題解決をしたりしています。
酪農のCO2はどれくらい?メタンをめぐる誤解
最後に、酪農のCO2排出がどれくらい影響しているのかという話です。
酪農で排出に関わる要因は、牛の腸内発酵によるメタンガス、堆肥の発酵、それに飼料生産にかかるエネルギー(トラクターや電気など)だと説明されました。
特にメタンはCO2の何倍もの温暖化効果があるとされ、畜産の温室効果ガスで大きく扱われます。
ただ、ここも誤解が多い分野。メタンは比較的短い期間で自然分解する温室効果ガスと言われているものもあり、長く大気に滞留するCO2とは性質が違うと川上さんは話します。
そのうえで川上牧場では、飼料効率を高める工夫として、餌が少なくても乳量が多い小型の牛を選ぶ品種改良に取り組んでいるそうです。
また、堆肥の発酵熱を再利用してさらに良質な堆肥を作り、地域に還元することで無駄なロスを減らす取り組みも行っています。
大事なのは「どんな未来でも生き残る仕組み」
温暖化か寒冷化か、極端な未来予測はSNSで拡散されやすいもの。でも本当に必要なのは、どんな未来でも生き残る仕組みだと川上さんは締めくくります。
弱肉強食と言われても、社会や情勢が変われば、強かったものがいきなり弱くなることもある。だからこそ、どんな環境でも生き残れることが持続性のある酪農だ、という考えです。
そして、片方の意見だけに触れることの危うさにも触れました。SNSでは自分の興味あるものばかり表示される、フィルターバブルが起きやすいからです。
反対意見のやつもよく見て、どっちもあって。自分の今いる環境と照らし合わせて、自分で考えてやっていくっていうのが大事なんじゃないかな
まとめ
2030年氷河期説もCO2温暖化論も、どちらか一方に断定できるものではない、というのが川上さんの立場です。大切なのは中立に事実を見て、どんな未来でも続けられる酪農の仕組みを整えておくこと。予測に振り回されず、自分の環境と照らし合わせて考える姿勢が印象に残る回でした。
- 2030年に氷河期レベルの寒冷化が起きると予測する信頼できる論文は存在しないが、寒冷化の可能性自体は否定されていない
- CO2が温暖化に影響しているのは国際的なコンセンサスだが、どの程度かは研究者によって幅がある
- 気候は複合要因で決まる複雑系のため、寒冷化か温暖化かは誰にも断定できない
- 川上牧場はAI活用・飼料のリスク分散・消費者とのつながりで、予測に依存しない酪農を目指している
- SNSのフィルターバブルに注意し、反対意見も見て自分で考えることが大切
