雪の朝と、難産だった子牛の話
配信は12月4日の木曜日。強風でスタジオが揺れる音がするほどの荒れた天気の中、雪のち曇りで最低気温1度、最高気温8度という寒い一日からスタートします。
この日のお仕事は堆肥の注文への対応。遠方への配送で、午前中はまるまるつぶれてしまいそうだと話されています。
そして前日には、少しつらい出来事もありました。
昨日、子牛が生まれたんですけど、ちょっと難産で。北海道から導入した初産の牛に黒毛和牛をつけていて、予定日よりちょっと早かったんですけど、トラブルがありますね。
残念ながら死産となってしまい、この日は協会に電話して手続きをする予定だと語られています。
いま酪農業界で起きていること
フリートークの中では、酪農業界の最近の動きにも触れています。ひとつは前向きなニュース。
コロナ前に話題になっていた「クラスター事業」が、来年度から再開することになったそうです。
これまでは頭数を増やすことが条件だったものが撤廃され、これから酪農を目指す人や続けていく若い人にとって使いやすくなった、と歓迎しています。
一方で、頭を抱えるようなニュースもあると打ち明けます。
年末年始の牛乳がヤバすぎるぜっていうニュースも上がっていて。消費者さんから質問が来た時に、僕どうやって答えたらいいのかわかりません。
「酪農」「牛乳」で検索するとすでにいろいろな記事が出てきていて、来年からどうなるのか怖い、と業界の矛盾を抱えながらの本音を語っています。
今日の質問「牛インフルエンザってあるの?」
お便りコーナーでは、配信アプリSPOONのリスナー「もぐらきぎせん」さんから届いた質問を紹介します。
鳥インフルエンザがあるように、牛インフルエンザとかありますか?寒い季節、どうぞ体調にお気をつけください。
体調まで気づかってもらったことにお礼を伝えつつ、配信中の咳については「牛乳のせいですよ」と冗談まじりに返しています。牛乳を飲んでいるので風邪気味になることはない、とのこと。
そのうえで、この質問はしっかり調べてきたと切り出します。
感染症は誤解が広がりやすい分野なので、今日は科学的根拠と酪農現場の視点でしっかりお話ししていきます。
結論:牛インフルエンザという特定のウイルスはない
まず結論から。牛には「牛インフルエンザウイルス」という特定のウイルスは存在しない、と川上さんは説明します。
ただし、インフルエンザに似た症状を出すウイルス感染はいくつかあるそうです。
牛呼吸器合胞体ウイルス。呼吸器の症状を出すウイルスです。
伝染性鼻気管炎。牛の鼻や気管に炎症を起こします。
パラインフルエンザウイルス3型。名前に「インフルエンザ」と入っています。
注意したいのが最後のPI3。名前に「インフルエンザ」と入っているため誤解されやすいのですが、人間のインフルエンザとは別物だと強調します。
鳥インフルは牛にうつるの?アメリカの事例を整理
次に、話題は鳥インフルエンザへ。まず過去の世界の事例からです。
高病原性鳥インフルエンザが牛へ感染した事例はこれまで確認されておらず、牛は主要な感受性動物ではない、と説明します。牛の細胞ではウイルスが増殖しにくいためです。
ただし、2024年以降に注目すべき動きがありました。鳥インフルエンザのH5N1が、アメリカの乳牛で検出されたという報道です。
ここが誤解の多いポイントだとして、事実を丁寧に整理していきます。
牛への感染
感染は事実だが、牛は死なず重篤化もしない。呼吸症状は軽度で乳量が一時的に下がる程度。
自然回復
多くの牛は自然に回復する。
人への感染1例
牛の目やにを直接触った作業者に接触感染。症状は結膜炎のみ。
人から人へは?
人から人への感染は起こっていない。
つまり「牛が人にインフルエンザをうつす」という話ではなく、ウイルスを持つ分泌物を直接触った特殊なケースだった、というのが実態です。
牛は鶏や豚のようにウイルスを体内で大量に増殖させる宿主ではないため、牛から牛、牛から人への感染拡大も限定的。社会的なパンデミックのリスクは低いと評価されている、と話します。
日本の酪農現場でリスクが低い理由
では日本での現場のリスクはどうか。川上さんは「極めて低い」と言い切ります。その理由をいくつか挙げていきます。
これらの理由から、日本の乳牛が鳥インフルにかかって人にうつるリスクは現時点で極めて低く、専門家も同じ見解だとしています。
牛乳は安全なの?消費者への影響
最後に、消費者がいちばん気になる「牛乳は安全なのか」という点です。
2024年のアメリカのケースでも、牛乳は加熱殺菌するためインフルエンザウイルスは完全に不活化される、と説明します。
日本では生乳が流通せず、必ず加熱殺菌される。そのため牛乳や乳製品の安全性はまったく揺らいでいない、とまとめます。
そのうえで牧場側がやるべきこととして、牛の体調管理、搾乳設備の衛生、外部からの動線管理、鳥が入りやすい場所の対策、異常のある牛の早期発見などを徹底すれば、リスクは限りなくゼロに近づくと話されています。
感染症は怖がらず、でも侮らず、正確な知識で必要なリスクだけ理解することが大事です。
これから寒くなる時期は、温度差やストレスで牛も呼吸器系の病気や下痢が出やすくなるため、ワクチンをうまく使って予防してほしい、と同業者へのメッセージも添えています。
まとめ
「牛インフルエンザってあるの?」という素朴な質問から、鳥インフルと牛、そして人への感染まで、誤解されやすいところを一つずつほどいていく回でした。怖がりすぎず、侮りすぎず、正確に知ることの大切さが伝わってきますね。
- 「牛インフルエンザウイルス」という特定のウイルスは存在しないが、インフルエンザに似た症状を出すウイルス感染(BRSV・IBR・PI3など)はある
- 高病原性鳥インフルが牛に感染した事例は過去にはなく、牛はウイルスが増えにくい体質
- 2024年以降アメリカの乳牛でH5N1が検出されたが、牛は重篤化せず、人への感染は目やにを直接触った1例のみで結膜炎だけ、人から人への感染はなし
- 日本は動物ごとに飼育場所が分かれ防疫レベルも高いため、牛から人にうつるリスクは極めて低い
- 牛乳は加熱殺菌でウイルスが不活化され、市販の牛乳で感染した例は世界でゼロ
