牛に音楽を聴かせるとストレス解消になるのか
今回の質問は、配信アプリのポポポからポポポネームのコルトマルテスさんに寄せられたものです。
牛さんに音楽を聴いてもらうなど、ストレス解消にはどんな方法と効果がありますか。
以前この番組では、音楽を聴かせて乳量が上がったりストレスが緩和されたとして、ブランド化している牛乳を紹介したことがあると話されています。
その上で今回、川上さんは牛のストレス緩和について改めて整理してきたと言います。
結論からいくと、音楽もゼロではないですけれども、本質はそこではない。
ストレスは飼い方でほぼ決まります。
牛にとってのストレスとは何か
川上さんはまず、牛がとても繊細な動物だと説明します。温度、湿度、匂い、音、人の動きなどに反応して、ストレスを感じたりリラックスしたりするそうです。
そしてストレスの大きな原因は「非日常」だと話されています。いつもと違うことが、牛にとってはかなりの負担になるということです。
急な大きい音、雑な扱い、いつもと違う人による管理、暑すぎる環境、滑る床や濡れた床。こうしたものの積み重ねが、牛のストレスを溜めていく要因になると言います。
音楽が効く仕組みと、その限界
では音楽はどう関わるのでしょうか。川上さんは、音楽が効くのは「安心できる環境の一部になるから」だと説明します。
一定の音や一定のリズムは変化が少なく、牛にとって安心につながるそうです。ただし、ここに注意点があると話されています。
でも逆に言うと、環境が悪いまま音楽を流してもほぼ意味はありません。
さらに、毎日同じ音楽を聴かせても牛が慣れてしまい、それが当たり前になることで効果は薄れていくとも指摘されています。
ストレスを減らす本質は環境づくり
ここから川上さんは、ストレスを本当に減らす方法を5つに整理して話しています。
第一は温度管理です。牛は暑さに弱く、二十五度を超えるとヒートストレスが起こり、三十度を超えるとかなり危険になると言います。
そのため牛舎では、送風のための換気扇、ミストをかける催霧装置、日陰づくりなどで暑さ対策をしていると話されています。
第二は床と寝床です。滑る床は牛を常に緊張状態にしてしまうそうです。
クッション性のある寝床でしっかり横になれると、牛は反芻の時間が増え、ストレスが減ると説明されています。
第三は餌と水です。いつでも食べられ、いつでも飲める状態が基本だと言います。水が汚れているだけでも牛はストレスを感じ、乳量が低下することがあるそうです。
第四は人の扱いで、これがとても重要だと強調されています。
牛を雑に扱うと一発で信頼を失い、牛はそのことを覚えている。
牛の前ではゆっくり動き、大きな音を出さない。それだけで全然違うと話されています。
第五はルーティーンで動くことです。時間がバラバラだと牛のストレスになるため、搾乳や餌の時間を毎日同じにすることが大事だと言います。牛にとっては予測できる世界が安心なのです。
これらを整理すると、次のような流れになります。
温度管理
暑さ対策で二十五度前後からのヒートストレスを防ぐ
床と寝床
滑らない床とクッション性で横になり反芻を促す
餌と水
いつでも食べ飲めるきれいな状態を保つ
人の扱い
ゆっくり動き大きな音を出さず信頼を守る
ルーティーン
搾乳や餌の時間を毎日一定にして予測できる環境にする
人も牛も一緒という結論
最後に川上さんは、この話を人間にたとえてまとめています。
大きな音がしたり、上司や部下からガミガミ言われたり、お昼になっても仕事が終わらない。そんな状況で快適な音楽を聴かされても、根本的な解決にはならないという考えです。
音楽よりも生活環境、これが一番大事です。
川上さんは、ブランド化した牧場の牛を見た際に、牛自体は綺麗でも爪が長かったり気になる点があったと振り返り、ストレスの軽減は音楽ではないのではと感じたと話されています。
一方で、音楽を聴いた牛の牛乳を美味しいと感じる消費者がいることも事実で、そこは自由だとも述べています。
川上牧場では今年、牛の飲水量が増えるような装置をつけたそうです。快適に横になれて、いつでも水と餌が飲める環境こそが大事だと締めくくられています。
まとめ
牛のストレス解消の主役は音楽ではなく、快適で変化の少ない飼育環境そのものだという回でした。音楽は環境が整った上での一部にすぎないという、現場からの実感が語られています。
- 牛は繊細で、いつもと違う「非日常」が大きなストレスになる。
- 音楽は安心できる環境の一部にはなるが、環境が悪ければほぼ意味がない。
- 本質は温度、床と寝床、餌と水、人の扱い、ルーティーンの5つ。
- 搾乳や餌の時間を一定にし、予測できる世界をつくることが安心につながる。
- 人も牛も同じで、音楽よりまず生活環境を整えることが大切。
