リスナーからの質問「ヘルパーは足りていますか?」
今回の配信は、ポポポという配信アプリのリスナー、リンさんからの質問に答える回です。
川上牧場さんの地域には何軒くらいの酪農家がいて、ヘルパーさんは何人くらいいますか?その人数で足りていますか?早めに予約しても冠婚葬祭が優先されて休めないこともあると聞きました。
川上さんは、この質問を「めちゃめちゃいい質問」と受け止めます。地域の軒数、ヘルパーの人数、そして休めない事情まで、現場の視点でひとつずつ答えていきます。
普段見えない牛乳の裏側を知ると、いつも飲んでいる牛乳がまた美味しくなるんじゃないかなと思います。
そもそも酪農ヘルパーとは何をする人か
川上さんはまず、酪農ヘルパーの前提として「酪農は365日休みがない」という事実を挙げます。
牛は毎日搾乳し、毎日餌をあげ、毎日体調を管理してあげないといけません。つまり誰かが必ずやらないといけない仕事だと話します。
酪農ヘルパーとは、農家の代わりに牛の世話をするプロの方です。農家が休む日、病気の時、用事がある時に、代わりに牧場に入って全部をやる方です。
仕事内容は、搾乳、餌やり、牛の観察、牛舎の掃除などが基本です。ただし川上さんは「ただの手伝いではない」と強調します。
完全に現場を任される仕事で、地域によっては分娩の対応や種付け、乳房炎など病気の治療まで行うこともあります。
農業機械の操作や牛の異常の発見もできた方がよく、川上さんは「未経験でも大丈夫」と謳われることも多いものの、実際は専門性が高い仕事だと話します。
ヘルパーは足りているのか、島根の現場の人数
リンさんの質問の中心である「人数は足りているのか」について、川上さんの答えは明確です。
結論、足りておりません。
島根県の酪農ヘルパー組合は県で一本化されており、酪農家は全県で70軒に届くか届かないかほど。そのうちヘルパーを使う中小規模の農家が30〜40軒ほどだといいます。
一方でヘルパーは、専任が5人ほどと、臨時のヘルパーが数人という規模です。かなりギリギリの人数で回している状態だと話します。
なぜ足りないのか。川上さんは、仕事が大変なうえ時間が不規則で、農家ごとに朝早い牧場も深夜まで働く牧場もあり、これを日ごとに変えていくからだと説明します。
遠方の農家を点々とするため通勤時間の負担も大きく、農家の財産である牛を扱う責任の重さもあります。それでいて給料がとても高いわけではありません。
その結果、年齢を重ねて辞めたり、体を壊して辞めたりする人が出て、なかなか増えていかないといいます。
なぜ冠婚葬祭が優先されるのか
リンさんが聞いていた「冠婚葬祭が優先されて休めない」という話も、川上さんは現場の理屈で説明します。
ヘルパーの仕事は有限です。人が足りないから優先順位ができるということです。その中で冠婚葬祭は最優先です。
つまり、どうしても休めない日が存在するわけです。川上さんはこれを「酪農の自由度の低さの一部」と表現します。
ただし、逆に言えばヘルパーがいるから休めるという面もあり、ケースバイケースだとも話します。
近年は高齢の農家が増え、通院や休養のためにヘルパーを使う人も増えています。長期入院や長期の怪我が重なると、それだけで他の農家が休めなくなってしまうといいます。
ヘルパー一人あたりの負担も大きく、この状態には持続性がない、というのが川上さんの見方です。
新規就農を目指す人へ、川上さん自身の経験から
川上さん自身も、もともと酪農ヘルパーをしていました。新規就農を目指し、いろんな農家の技術や飼養管理、機械の操作を学ぶためだったといいます。
その経験が、今の不安定な酪農情勢でも生きていると振り返ります。「搾って」と言われていたのが急に「搾らないで」に変わったり、和牛の値段が高騰後に暴落したりと、正解が見えない状況が続いているためです。
正解があんまり見えないところで、いろんな環境に合わせて牛を変えられるのは、酪農ヘルパーをやってた経験が生きてるんじゃないかなと思います。
一方で、体力的に大変なだけでなく、農家が納得する牛の扱い方をする必要があり、サービス業的な側面もあると話します。挨拶は大事で、遅刻は厳禁だといいます。
いろんな農家を回り、さまざまな機械や牛を見てスペシャリストになっていく仕事として、川上さんは酪農を志す人に一度体験してみてほしいと呼びかけます。
まとめ
酪農ヘルパーは、365日休みのない酪農現場で、農家の代わりに牧場を回すプロです。専門スキルが高く責任も重い一方で人手不足が深刻で、休みの取りやすさにも直結しています。川上さん自身の経験からも、酪農を支えるインフラのような存在として知ってほしい仕事だと語られました。
- 酪農ヘルパーは農家の代わりに搾乳・餌やり・観察などを一手に担うプロの仕事
- 島根県は全戸70軒未満に対し専任ヘルパーが5人ほどで、人数は足りていない
- 人が足りないため優先順位が生まれ、冠婚葬祭が最優先で休めない日が生じる
- 高齢農家の通院や長期入院が重なると、他の農家も休みを取りにくくなる
- 川上さん自身もヘルパー経験者で、多様な現場を知ることが今の経営に生きている
