今日の質問「卒業した牛の行方は気になりますか?」
今回のお便りは、ポポポという配信アプリのリンさんから届いた質問です。
自分の牧場で乳牛を卒業させた牛の行方は気になりますか?食べたことはありますか?
川上さんは「酪農をやっていると避けては通れない話」としつつ、できるだけ正直に、現場の目線で答えていくと話します。
子牛が生まれる様子はSNSでよく投稿されますが、牛舎には限りがあります。誕生があれば別れもある。それを繰り返していくのが酪農業だと語られています。
「乳牛の卒業」とは何か
そもそも乳牛は、一生ミルクを出し続けるわけではありません。
年齢を重ねたり、種がつかず子牛が産めなくなったり、病気の影響で乳量が減ってしまったりと、理由はさまざまです。
乳量が減ると生産価値が落ちてしまうため、価値の高い牛に入れ替えていくことが、経営を続けるうえで大事になると説明されています。
こうして飼い続けるのが難しいと判断された時、乳牛は役目を終えます。現場ではこれを「淘汰」や「更新」と呼び、その対象となる牛を「淘汰牛」「更新牛」と言うそうです。
卒業した牛はどこへ行くのか
結論から言うと、多くの場合は食肉として流通していきます。
ただし乳牛はいわゆる和牛とは違い、肉質は硬く脂は少なめです。そのため用途は、合い挽きのひき肉や加工品、牛肉の切り落としなどが中心になります。
消費者が食べている「国産牛」というのが、この乳牛にあたると川上さんは話します。
普段は牛乳を出し、最後は役目を終えて生活を支えるお肉になる。それが乳牛の役目だと語られています。
川上さんは食べたことがあるのか
「食べたことはありますか?」という質問についても、正直に答えています。
川上さん自身は農業大学校の授業の一環で食べたことはあるものの、川上牧場で卒業させた牛を意識して食べたことは一度もないそうです。
ただ、島根県内の加工場を経てスーパーに並んだものや、国内産の肉を使う外食店などで、知らずに口にしている可能性はあると話します。
ここで伝えたいのは、乳牛の肉は特別なものではなく、生活に馴染んでいて分からなくなっているということだと強調されています。
気になるかどうか、正直な気持ち
「気になるかどうか」という問いにも、川上さんは正直に答えています。
気になるかと言われたら、あるかないかで言えば、気にはなりますよ。毎日世話をしていて、感情もゼロではないです。ただ、それはもう産業としては当たり前のことなので、当たり前になっているということですよね。
川上牧場では子牛から産ませて育て、役目を終えるまでおよそ五年間飼うといいます。それでもこれは命の循環であり、生まれたらどれかは出さなければならないと語られています。
牛乳をもらって、最後はお肉として人に返ってくる。ここまで含めて酪農という仕事だと話します。
消費者に伝えたいこと
この話は重く感じるかもしれません。しかし川上さんは、逆に言えば無駄になっているわけではないと語ります。
最後まで価値がある。それを前提に、できるだけ長く健康に飼うことが酪農家の仕事だといいます。
この質問に正解はなく、酪農家によって考え方や感じ方も違うとも話されています。聞いて残酷だと思う人も、そうだよねと思う人もいて、いろんな考え方があっていいという立場です。
トレーサビリティと、つながりを感じた出来事
川上牧場では黒毛和牛も産ませて家畜市場に出荷しています。それは日常のことで、淡々と送り出しているそうです。
ある時、出荷から二年ほど経って、知り合いから連絡が届きました。いいレストランで食べた黒毛和牛の個体識別番号を調べたら、川上牧場から生まれた牛だったというのです。
あの時は何とも言えないですけど、嬉しかったですね。うちは一ヶ月ぐらい子牛を飼って産ませただけなので、美味しくしてくれたのは肥育農家さんなんですけど。
生産して、肥育農家に渡り、お肉になって消費者へつながる。それが見えたのが嬉しかったと振り返ります。
牛の耳標によるトレーサビリティで、どこで生まれ、どこで肉になり、どこで出荷されたかが分かるようになっています。
美味しいお肉を食べた時に個体識別番号を調べてみると、どんな生産者かまで分かり、食がより豊かになるのではないかと勧められています。
まとめ
今回は、乳牛が役目を終えた後どうなるのかという質問に、川上さんが正直に答えました。命の循環を前提に牛を育て、最後まで価値をつなげていくのが酪農の仕事だと語られています。
- 乳牛は年齢や繁殖・病気などの理由で乳量が落ちると役目を終え、現場ではこれを「淘汰」「更新」と呼ぶ
- 卒業した乳牛の多くは食肉として流通し、ひき肉や加工品、切り落としなど「国産牛」として生活を支えている
- 川上さん自身は牧場で卒業させた牛を意識して食べたことはないが、知らずに口にしている可能性はあると話す
- 気にならないわけではないが、命の循環として当たり前のこととして受け止めている
- トレーサビリティで牛の生産者までたどれるため、美味しいお肉に出会ったら個体識別番号を調べてみると食が豊かになる
