リスナーからの質問「牛は風邪を引く?」
この日の配信は、リスナーからの質問に答えるお便りコーナーが中心でした。
質問を寄せたのは、配信アプリから届いた「ぽぽぽネーム関心さん」です。
私は牛乳を飲んでいるのでなかなか風邪を引かないのですが、牛さんは風邪を引くことはありますか。鳥インフルエンザのような空気感染はありますか。
川上さんはまず、牛も生き物なので風邪を引くことはあると答えます。
夏の暑さで免疫力が下がったり、ご飯が食べられなかったり、ゆっくり休めなかったりすると、牛も病気になりやすくなると話されています。
病気になるとお乳が絞れなくなったり、治療費がかかったりするため、牛に健康でいてもらうことが酪農の基本だといいます。
牛の風邪は一つの病気ではない
結論として、牛も人間でいう風邪に似た呼吸器の病気になります。
ただし「牛風邪」という一つの病気があるわけではない、と川上さんは説明します。
人でも風邪はライノウイルスやコロナウイルス、RSウイルスなど、様々な原因で起こりますよね。牛も同じで、複数のウイルスや細菌が関係している呼吸器病を起こします。
獣医学では、これらをまとめて牛呼吸器病症候群複数のウイルスや細菌が重なって発症する牛の呼吸器の病気の総称。BRDと略される。ウイルス感染に続いて細菌が増え、肺炎に進むことがある。と呼ぶことがあります。
代表的なウイルスとして、牛ヘルペスウイルス1型、牛RSウイルス、パラインフルエンザ3型ウイルス、牛コロナウイルスなどが挙げられました。
さらに、これらのウイルス感染をきっかけに細菌が増え、肺炎へ進行することも少なくないといいます。
つまり、ウイルスだけ、細菌だけではなく、複数の病原体が重なって重篤化することが多い病気です。
症状は人の風邪と少し似ていて、発熱、鼻水、咳、食欲低下、元気消失、呼吸が早い、といったものがあります。
重症になると肺炎になることもあり、特に子牛は免疫が未熟なので注意が必要だと話されています。
「空気感染」という言葉を整理する
質問にあった「空気感染はあるの?」という点について、川上さんはまず言葉の整理から入ります。
一般のニュースでは「空気感染」という言葉がよく使われますが、医学や獣医学では感染の仕方を分けて考えるといいます。
牛の呼吸器病ウイルスの多くは、咳やクシャミによる飛沫、近距離のエアロゾル、牛同士の接触で広がると考えられています。
そのため、牛舎の中で集団発生することはあり得ます。
だからこそ、換気や過密飼育を避けることが非常に重要になる、と川上さんは強調します。牛を牛舎に押し込まないことが大切だといいます。
牛の風邪と鳥インフルエンザは別の病気
では、鳥インフルエンザとはどう違うのでしょうか。
鳥インフルエンザはインフルエンザAウイルスによる感染症で、主に鳥類で流行し、高病原性の場合は家禽に大きな被害をもたらします。
一方、牛で一般的に問題になる呼吸器病は、先ほど紹介したような別のウイルスや細菌が中心です。
牛乳を飲めば風邪を防げる?
質問には「牛乳を飲んでいるので風邪を引かない」という話もありました。
川上さんは、これは個人の実感としてはあるかもしれない、と受け止めます。自身も牛乳を飲んでいて病気にならないけれど、それも個人の実感だと率直に話します。
ただし、現在の医学では、牛乳を飲めば風邪を予防できるという確立した科学的根拠はありません。ここは皆さん注意していただきたいなと思います。
一方で、牛乳にはたんぱく質、カルシウム、ビタミンB2、ビタミンB12など、健康維持に役立つ栄養素が含まれています。
栄養状態が良いことは免疫機能を正常に保つ上で重要ですが、牛乳そのものが風邪を防ぐとまでは言えない、とはっきり分けて説明されました。
牧場での予防は毎日の管理から
一度流行すると大変なので、牧場では予防が中心になります。
特別な薬よりも、毎日の飼養管理が病気を減らすと川上さんは話します。
川上牧場では特に子牛の呼吸器病に注意しているそうです。
少し元気がない、鼻水が出ている、呼吸が荒い、耳を触ると冷たい、目つき、鼻の乾き具合など、細かく観察しているといいます。
呼吸器病は早く見つければ回復する可能性が高くなりますが、発見が遅れると肺炎が進行し、発育や将来の乳量にも影響することがあります。
だからこそ、毎日の観察が何より重要だとまとめられました。
菌の世界にハマる酪農家の実験
質問への回答のあと、川上さんは最近夢中になっている「菌」の話へと話題を広げます。
腸内産細菌とか環境細菌とかっていうのがもう楽しくて楽しくて、もう菌は沼なんですよね。
今取り組んでいるのは、麹菌を牛舎の環境にたくさんいるようにすることだそうです。
善玉菌が多い環境を作ることで、悪い菌を抑えられるのではないかという考え方だといいます。
外部から牛をほとんど導入せず、自分のところで子牛が親牛へと循環していく牛舎だからこそ、環境全体の菌のバランスを整えたいと語ります。
具体的には、麹菌を牛が食べ、お腹の中で増え、うんちとして牛舎に広がることで、他の悪い菌が抑えられるのではと考えているそうです。
今気になっているのは納豆菌ですが、専用の餌は少し高いと苦笑いしていました。
阿蘇山にしかいない菌の話も飛び出し、見えない菌の世界を心から楽しんでいる様子が伝わる締めくくりでした。
まとめ
牛も人の風邪に似た呼吸器病になりますが、その原因は一つではなく、複数のウイルスや細菌が関係します。鳥インフルエンザとは別の病気であり、牧場ではワクチンや換気、衛生管理、ストレスの軽減を組み合わせて予防しています。
- 牛にも人の風邪に似た呼吸器病があるが、「牛風邪」という単一の病気があるわけではない
- 原因は複数のウイルスや細菌で、重なると肺炎へ進行し重篤化しやすい
- 牛の呼吸器病は飛沫やエアロゾル、接触で広がり、換気と過密回避が重要
- 牛の呼吸器病と鳥インフルエンザは病原体が異なる別の病気
- 牛乳は栄養価が高いが、飲めば風邪を防げるという科学的根拠はない
