リスナーからの質問と、酪農家の最初の予想
今回の質問は、YouTubeネームのナベルミさんから届いたものです。
牛さんに食物アレルギーはあるのでしょうか?もし乾草や塩などにあれば、たくさん食べても大丈夫なのでしょうか。アトピー性皮膚炎などもあれば教えてください。
川上さんは、牛を飼っていてアトピーやアレルギーで調子が悪くなるのを見たことがなく、「もうないもの」だと思っていたと話します。
その理由として、牛が反芻動物であることを挙げます。
牛さんは入ってきたタンパクとかアレルギー物質を、とりあえずお腹の中に入れて、一番初めに胃袋にいる微生物がそれを分解吸収していくので、アレルギーみたいなことにならないなと思ってたんですよね。
ところが調べてみると、この前提は少し違っていたそうです。ここからは憶測を避け、確認されている事実をもとに整理していきます。
牛に食物アレルギーはあるのか
結論から言うと、牛にも免疫反応はありますが、人でよく知られている典型的な食物アレルギーは一般的ではありません。
牛は反芻動物なので、食べた餌はまず第1胃のルーメンで微生物によって分解され、タンパク質はアミノ酸や微生物タンパクへと変わっていきます。
そのため、人のように未分解のタンパクに対して即時型アレルギーを起こすケースは、多くは報告されていないんですね。
ただし、飼料への過敏反応や、飼料を変えたあとの皮膚症状、消化障害が報告されることはあります。これはアレルギーの場合もあれば、代謝や消化の問題である場合もあります。
牧草・塩には反応するのか
まず牧草について。牧草そのものへのアレルギーが一般的だというデータはありません。
問題になりやすいのは、カビの汚染やダスト、保存状態の悪さです。
カビが生えたときに出す毒素はマイコトキシンと呼ばれ、粉塵などのダストとあわせて、呼吸器や消化器に悪影響を与えることがあります。これはアレルギーというより、毒素や物理刺激による健康障害です。
次に塩について。牛はナトリウムを必要とするので、ふだんはミネラルブロックや配合飼料で補給されています。
ただ、取りすぎれば塩中毒が起こります。これもアレルギーではなく中毒で、通常の給与量でアレルギー反応が起こるという一般的な報告はありません。
アトピーのような皮膚炎はあるのか
人のアトピー性皮膚炎と同じ疾患分類は、牛では一般的ではありません。
ただし、アレルギー性皮膚炎や接触性皮膚炎、ダニなどの寄生虫、吸血昆虫に刺された跡、真菌の感染による皮膚トラブルはあります。
そして、これらには湿度や寝床の環境、衛生状況が強く影響します。つまり牛の皮膚トラブルは、環境要因によるものが多いんですね。
もし皮膚炎や下痢が出た場合、川上さんは飼料の変更はあったか、保存状態は良かったか、ほかの牛にも症状が出ているか、発熱や全身症状はあるかを確認し、単純な食物アレルギーと決めつけることはしないといいます。
免疫反応はあるが、人型の典型的な食物アレルギーは一般的ではない
牧草そのものより、カビ毒・ダスト・保存不良が問題になりやすい
アレルギーではなく、取りすぎによる塩中毒に注意
環境・寄生虫・感染が主な原因のことが多い
川上さんが現場で見てきた症状
事実の整理をふまえて、川上さんは自身の経験も語ります。
季節の変わり目やストレスがかかったときに、牛の全身にブツブツが出て、体がイボイボのようになることがあったそうです。
そのときはビタミン剤などを少し多めに与えると、一時的に治る場合があったといいます。
もうひとつは薬による反応です。
お薬を打ったときに、ちょっと体にブツブツが出たりする子牛がいたかな。ペニシリン系だったような気がしますね。
ただ、こうした症状を見るのは何年に一度というくらいで、めったにないとのことです。
アレルギーに気をつけて牛を飼っているかと言われると、そんなに気をつけてはいないんですけど、衛生環境とか牛の健康状態とか常に観察しながら飼っております。
だからこそ、安心して牛乳を飲んでほしい、というのが現場からのメッセージです。
まとめ
牛にも免疫反応はありますが、人のような典型的な食物アレルギーは一般的ではなく、皮膚トラブルの多くは環境や感染によるもの。「アレルギー」という言葉だけで決めつけず、構造から理解することが大切だと伝わる回でした。
- 牛にも免疫反応はあるが、人型の典型的な食物アレルギーは一般的ではない
- 牧草はカビ毒やダスト、塩は取りすぎによる中毒が問題になりやすい
- 皮膚炎は湿度・寝床・衛生など環境要因が主な原因のことが多い
- 川上さんの現場では、季節の変わり目や薬でブツブツが出ることが数年に一度ある程度
- 日々の衛生環境と健康観察が、安心して飲める牛乳につながっている
