リスナーの質問から始まる「牛乳の定義」の話
今回の配信は、リスナーからの質問がきっかけです。以前、川上さんが牛乳の法律について話した回を受けて、実際に調べてくれた人がいました。
質問はポポポという配信アプリのポポポネーム、コルトマルテスさんから届きました。
牛乳の裁判を調べました。地域ごとに違いました。バターも定義が厳しくかつ曖昧で笑ってしまいました
川上さんはこの質問をとても喜びます。公式LINEやメルマガまで登録して、牛乳の話をどんどん面白がってくれているリスナーだからです。
そもそも川上さんは、豆乳やオーツミルクを「豆の絞り汁」「麦の絞り汁」と呼んでいます。牛乳は動物の母親から出たお乳を指すという定義があるからだと説明されています。
大豆は赤ちゃんも産まないですし、お母さんという概念も、まああるかな。ですけども、そこから出たものではないので、なので私は豆の絞り汁と言わせてもらってます
牛乳はただの名前ではない
多くの人は、牛乳を「牛から出た白い飲み物」くらいに思っています。でも法律ではかなり厳密に決められている、と川上さんは指摘します。
日本では食品衛生法や乳等省令の中で、牛乳は生乳100パーセントであること、加熱してあること、成分基準を満たすことなどが細かく定められています。
世界的にも「ミルク」という言葉には強い定義があります。国際的な食品基準を作るコーデックス委員会や、国際酪農連盟IDFでも、ミルクは動物の乳という考え方が基本だと紹介されています。
EUで植物性ミルクが負けたトーフタウン事件
ここからが面白いところです。ヨーロッパ、特にEUは牛乳の名前について非常に厳しいと言われます。
2017年には有名な裁判がありました。トーフタウン事件と呼ばれるものです。
ドイツの会社がソイミルクやトーフバター、ベジチーズといった名前を使って販売していたところ、EU側から「それはダメ」と言われたそうです。
ソイとかベジって書いてあるから、消費者にもわかるでしょう
しかし裁判所は「ダメなものはダメ」と判決を下しました。ミルクという言葉そのものに法的な意味があり、植物性と書いてあればOKではなく、ミルクという名前自体が動物の乳専用だという考え方が示されたのです。
そのためEUでは、基本的に植物性飲料にミルク、バター、チーズという名前は使えません。
販売
ドイツの会社がソイミルクやベジチーズなどの名前で販売
指摘
EU側が乳製品名の使用はダメと指摘
反論
会社側はソイやベジと書いてあれば伝わると主張
判決
裁判所はミルクの名前は動物の乳専用と判断
厳しいのに曖昧?例外としての伝統名称
ただし、この話には例外もあります。質問にあった「曖昧で笑ってしまった」という部分です。
ヨーロッパには昔からココナッツミルクのような伝統的な名称があります。こうしたものは例外として認められているそうです。
つまり、非常に厳密なルールでありながら、歴史や文化も考慮するという二面性があります。ここが法律の面白いところだと川上さんは話します。
法律というものは、科学、文化、歴史、経済、この全部が混ざって判決をされるということですね
なぜここまで牛乳を守るのか
では、なぜEUはここまで牛乳という名前を守るのでしょうか。川上さんは理由を大きく二つに整理します。
一つ目は、栄養に関する誤解を避けるためです。ミルクという言葉には、カルシウムやタンパク質、乳脂肪、ビタミンといったイメージがあります。
一方で植物性飲料は栄養構成がかなり違います。同じ名前にすると消費者が誤解する、とEUは考えたわけです。
二つ目は文化です。ヨーロッパではチーズやバターが文化そのものになっていて、ワインと同じような位置づけだと説明されています。
つまり牛乳という言葉は、単なる飲み物ではなく、地域文化と産業の名前でもある。だからこそ強く守られているということです。
植物性飲料は栄養構成が違うため、同じ名前だと消費者が誤解する
チーズやバターは地域文化そのもので、ワインと同じように守る対象
酪農家として、牛乳という言葉に意味がある
川上さんは、植物性飲料を否定したいわけではないと強調します。豆乳の鍋は美味しいと普段から話していますし、出されればちゃんと飲むとのことです。
ただ、用途が違うと言います。牛乳としてしっかり飲むという感覚は、植物性飲料にはないという立場です。
そのうえで、酪農家として牛乳という名前には意味があると語ります。牛を育て、毎日絞り、衛生管理をし、栄養成分を維持し、法律の基準を守る。その積み重ねの上に牛乳という言葉があるからです。
川上さんは、日本ではSNSで「牛乳なんていらない」といった声もあるが、科学的根拠のないものは訴えていくくらいの姿勢が必要だと話します。
牛乳には一万年の歴史があり、エジプトの壁画にも牛から乳を得る様子が描かれているほどだと語られています。海外のように酪農団体や乳業団体が裁判で権利を守り、その利益を業界へ還元する考え方にも触れられました。
六月の牛乳月間と牛乳で歌おうライブ
最後にお知らせです。牛乳の話をまとめた記事は、noteのメンバーシップ限定記事として公開予定だと案内されています。
また、川上牧場初のKindle本「酪農未経験者のために」が発売中で、Kindle Unlimitedの読み放題対象になっているとのことです。
来月6月は牛乳月間で、6月1日は世界牛乳の日、ワールドミルクデーです。川上牧場はこの月を盛り上げたいと話します。
今年はオープニングやエンディングを手がけるハロニルさんと「牛乳で歌おうライブ」を開催予定です。6月6日18時からで、詳細は概要欄のホームページから確認できます。
まとめ
今回は、リスナーの質問をきっかけに、牛乳という言葉が法律で厳密に定義されていることや、EUの裁判で植物性ミルクが敗れた理由を、酪農家の視点から読み解きました。牛乳の名前には、栄養、文化、歴史が重なっていることが見えてきます。
- 牛乳は法律で生乳100パーセントや成分基準などが厳密に定義されている
- EUではトーフタウン事件を機に、ミルクの名前は動物の乳専用と判断された
- ココナッツミルクなど伝統名称は例外で、法律には厳しさと曖昧さが同居する
- EUが牛乳を守る理由は、栄養面での誤解防止と文化の保護の二つ
- 6月は牛乳月間で、6月6日18時から牛乳で歌おうライブを開催予定
