牛乳に「旬」はあるのか
今回の配信は、リスナーからの質問に答える回です。届いたのは「牛乳の一番おいしい季節はあるの?」というシンプルな問いでした。
牛乳の一番おいしい季節はあるの?
夏になればトマトやトウモロコシ、枝豆といった夏野菜が旬を迎えます。牛乳も牛から出る農産物なので、同じように旬があると川上さんは話します。
品種改良や飼養管理のおかげで、牛乳は365日24時間いつでも手に入るようになりました。それでも生き物から出るものである以上、味の変わる時期はあるそうです。
川上さんの結論は明快です。牛乳が一番おいしいのは、個人的な感覚として2月ごろだと言います。
なぜ冬の牛乳はおいしいのか
冬の牛乳がおいしい理由はシンプルで、牛が快適だからだと川上さんは説明します。
日本で飼われている乳牛のホルスタインは、もともと北欧の涼しい地域が原産です。そのため暑さに弱く、寒い時期のほうが得意なのだそうです。
夏は暑さで食欲が落ち、餌を食べないので乳量も乳成分も下がります。一方、冬は牛がよく食べ、体調が安定します。
その結果、乳脂肪や乳タンパクが上がり、濃くてコクのある牛乳になるといいます。これは現場の感覚だけの話ではありません。
冬は本当に牛がよく食べます。無限に食べます。そうすると体調が安定するので、乳脂肪や乳タンパクが上がってくる。つまり濃くてコクがある牛乳に変わっていくということですね。
牛乳パックの裏には、乳脂肪率が「3.6%以上」「3.8%以上」などと書かれています。2月や冬の時期には、これが4%近くまで上がることもあるそうです。
数値は地域や牧場の飼育条件で変わるため断定はできないとしつつ、川上さんは「冬が濃い」というのは業界の共通認識だと話します。
牛が快適でよく食べ、体調が安定。乳脂肪や乳タンパクが上がり、濃くて甘くコクがある。
暑さで牛の食欲が落ち、乳量や乳成分も下がる。まずいのではなく、さっぱりして飲みやすい味わい。
夏の牛乳は「まずい」のか
冬が濃いなら、体調が悪くなる夏の牛乳はまずいのでは、と思う人もいるかもしれません。川上さんはこれを誤解だと言います。
夏の牛乳はまずいのではなく、むしろさっぱりして飲みやすい味わいなのだそうです。つまり味のタイプが違うだけだと説明します。
濃くて甘い牛乳が好きな人は冬、後味すっきりの牛乳が欲しい人は夏、と好みで選ぶのもよいといいます。
さらに、牛の体調が悪くなる夏場でも乳成分を落とさないよう、酪農家や乳業メーカーが工夫と努力を重ねていると話します。3.6%以上を切らない牛乳を出せるようにしているそうです。
一番おいしい2月に一番売れない現実
ここからが本題で、川上さんが最も伝えたい部分です。一番おいしい2月なのに、この時期に牛乳が一番売れないというのです。
味はよくなっても価格は変わりません。それでも需要が落ちてしまうのが、酪農業界の悲しい現実だと言います。
日本の牛乳消費のピークは夏です。暑いと飲み物を飲む量が増えるからですが、冬は寒くて飲む機会が減ります。
特に2月は、お正月で出費がかさんだあとに財布の紐が固くなる時期です。大きなイベントも節分くらいで、購入する人が少なくなってしまいます。
さらに給食が止まる長期休みや、「牛乳は夏の飲み物」という習慣も重なります。味だけで言えば冬がピークなのに、需要はそこで落ちてしまうのです。
寒さ
寒いと飲み物を飲む機会が減り、牛乳も飲まれにくくなる。
出費
お正月の後で財布の紐が固くなり、大きなイベントもない。
習慣
給食が止まる長期休みや「夏の飲み物」という習慣が重なる。
結果
味のピークの2月に、需要が最も落ち込んでしまう。
2月の牛乳を飲んでほしい
だからこそ川上さんは、2月の牛乳をもっと飲んでほしいと繰り返します。牛乳が苦手な人でも、この時期なら美味しく感じられるはずだと自信を見せます。
味も一番よく、品質も安定しています。冬は牛が春に向けて食べていく時期で、ストレスも少ないといいます。
夏の暑さの影響は秋ごろまで残りますが、冬になると牛が回復し、一気に食べる時期に入るのだそうです。
ちょっと飲んでみようかなって思ったら、ぜひ2月の牛乳を意識してみてください。今カレンダーに「2月牛乳飲む」で入れてもらえたら嬉しいかなと思います。
需要が少ない時期の濃い牛乳は、北海道などでバターや脱脂粉乳の加工に回されることもあります。それでも、そのまま飲んでもらえると嬉しいと川上さんは話します。
もっとも、春も牛の調子がよくなるので美味しく、結局は24時間365日いつでも美味しいとも語られています。
まとめ
牛乳にも旬はあり、日本では2月ごろが味のピークになりやすいと川上さんは話します。ところが、その一番おいしい時期に消費は最も落ち込むという現実があります。味のピークと需要のピークがずれていること、そして2月の濃い牛乳の存在を、ぜひ覚えておいてほしいという回でした。
- 牛乳にも旬があり、日本では2月ごろが味のピークになりやすい
- 冬は牛が快適でよく食べるため、乳脂肪や乳タンパクが上がり濃厚になる
- 夏の牛乳はまずいのではなく、さっぱりして飲みやすい味のタイプ
- 一番おいしい2月に消費が最も落ち込むのが酪農業界の悲しい現実
- 牛乳が苦手な人こそ、2月の濃い牛乳を試してみてほしい
