久しぶりの気になるニュース回、テーマは牛乳の先行き
今回は「牛乳飲む?牧場配信」の中でも、久しぶりの「気になるニュース」のコーナー。川上さんが独断と偏見で選んだニュースを深掘りしていく回です。
テーマは、いま国が進めようとしている牛乳の生産基盤の維持と、実際の現場のギャップ。今飲んでほしいと呼びかける一方で、国は生産を支えようと動いている、その複雑さがポイントです。
今皆さんに牛乳飲んでくださいと言ってたりするところで、一方で国の方では牛乳の生産基盤を維持しなきゃいけないという動きにもなっておりまして。
ちなみに、この回は月曜の朝の配信。年末年始が近づき、20日以降は牛乳が余りやすくなるという話も冒頭でされています。
20日から皆さんちょっと牛乳をたくさん飲んでもらわないと、牛乳が処理できなくて最悪廃棄になってしまうという、そんな事態になっておりますのでね。
畜産クラスター事業ってなに?制限撤廃の背景
取り上げたのは、十勝毎日新聞の12月11日の記事。「畜産クラスター酪農の制限撤廃へ」という内容です。
まず前提として、畜産クラスター事業がどんなものかを整理してくれています。
牛舎の建設や搾乳施設の整備、機械の導入といった大型投資について、その半分以内を国が補助する仕組み。上限は1件あたり最大5億円と、かなり大きな制度です。
この事業、実は2022年度以降、酪農分野では増産向けの投資が止められていました。理由はコロナ禍で牛乳の需要が落ち、生乳が余って脱脂粉乳が積み上がったから。いわば需給調整のためのブレーキだったんですね。
それが今回、農水省が制限を撤廃することに。狙いは、離農が続いて酪農家の軒数が減り、牛乳を作る人がいなくなるのを防ぐため。もう一度、生産基盤を支える投資を認めようという判断です。
歓迎されつつも「踏み切れない」現場のリアル
ここが今回のニュースの一番大事なポイント。十勝の酪農関係者は、制限撤廃そのものはありがたいと言いつつも、簡単には踏み切れないと話しているんです。
補助金があっても、今のコストでは踏み切れない。
理由は、ここ数年で建築資材や鉄骨、コンクリート、機械、人件費のすべてが高騰したこと。補助率は変わらないのに総額が膨れ上がり、補助金をもらっても数年前と自己負担額が変わらない状況が起きています。
記事の中で紹介された、40代の中規模酪農家の言葉も印象的です。
中小規模は先行きが見えず、投資に踏み切れない。大規模だけがさらに差を広げる。
借金を背負って設備投資しても、牛乳の価格の先行きは不透明で、飼料価格も不安定。この状況で増やす決断ができる人は限られている、という現場感覚が伝わってきます。
増やす?減らす?本当の問いは「どうつなぐか」
ここで川上さんは、根本的な問いに立ち返ります。日本の牛乳は今後、増やすべきなのか、減らすべきなのか。
実際には、生産は地域によって増えたり減ったりする一方で、消費は長期的に右肩下がり。学校給食や人口減少の影響もあり、作れば売れる時代ではありません。
それなのに、作る側には増産支援があり、売る側の消費拡大策は弱い。このアンバランスが、毎年同じ問題を繰り返す原因になっている、と指摘します。
クラスター事業などの増産支援が用意されている
消費拡大策が弱く、置き去りになりがち
だからこそ、投資支援だけでは問題は解決しない、というのが川上さんの見立てです。必要なのは、生産と消費を同時に見る視点だと話します。
設備を増やす前に、牛乳の出口をどうするかを考えないと、また同じ壁にぶつかってしまう。まとめとして、こう語られています。
島根の販売実績から見える、地域ごとの需給バランス
後半では、川上さんが実際に参加した島根県の生乳販売委員会で共有された、直近10月までの販売実績にもふれています。
まず北海道は生乳生産が増えていて、前年より102%。2%しか増えていないように見えますが、日本の牛乳の生産量の6〜7割ほどは北海道が絞っているため、規模で見ればかなりの増加です。
一方で、都府県は生産が横ばいから減少ぎみ。エリアごとにばらつきがあります。
| エリア | 前年比 |
|---|---|
| 北陸 | 98.2% |
| 東海 | 99.2% |
| 近畿生乳販連 | 98% |
| 中国地区 | 99.5% |
| 九州生乳販連 | 98.7% |
今年の夏には、一部エリアで飲用の生乳が足りず、脱脂粉乳や加工乳で賄った部分もあったとのこと。地域ごとに需給のバランスが崩れている状況です。
ここでクラスター事業が打ち出されると、条件のいいところはどんどん増やせる一方、条件が悪いところは増やせず、酪農家の軒数や頭数が減っていく。根本的なアンバランスは解消しにくいのでは、と川上さんは見ています。
北海道頼みのリスクと、飲む以外の応援
消費者からすると、牛乳が飲みたいと思っても、そのほとんどは北海道で作られている、というのが現実です。
ただ、北海道から輸送できる距離には限りがあります。西日本や九州まで運ぶと運賃が高くなったり、品質が落ちてしまったりする問題もあるんですね。
だから北海道だけに頼るのは、安定という意味では不安定。西日本でもどんどん絞っていける環境が必要なのに、年末年始や長期休みには学校給食が止まって牛乳が余ってしまう、というジレンマがあります。
そのうえで川上さんは、都府県の中小酪農家を応援する気持ちも込めて牛乳を飲み続けてほしい、と呼びかけます。さらに、飲むだけではない支援の仕方もいろいろあると話しています。
飲むだけじゃない支援の仕方もいっぱいありますんで、そういう取り組みを一緒に応援していただけたら嬉しいなと思うところでございます。
まとめ
制限撤廃は歓迎されるニュースですが、コスト高で踏み切れない現実があり、大規模と中小の格差が広がる懸念も残ります。牛乳の先行きは補助金だけでは決まらない、というのが今回の大きなメッセージでした。
- 畜産クラスター事業の制限が撤廃され、酪農の増産投資が再び認められる方向に。狙いは離農による生産基盤の崩壊を防ぐこと。
- ただし資材や人件費の高騰で自己負担は減らず、中小規模ほど投資に踏み切れず、大規模との格差拡大が懸念されている。
- 作る側の増産支援に対し、売る側の消費拡大策が弱いアンバランスが、毎年同じ問題を繰り返す原因になっている。
- 牛乳の6〜7割は北海道産で、輸送距離や品質の問題から北海道頼みには限界がある。西日本でも絞れる環境づくりが課題。
- 飲むこと以外にも支援の方法はあり、都府県の中小酪農家を応援する気持ちで牛乳とつながってほしい、と呼びかけられている。
