雨の朝、軽トラの車内から配信
この日は10月31日の金曜日。朝から雨が降り続く予定で、最高気温は16度でした。
川上さんは「圃場に堆肥まきに行きたかったな」と、田んぼに入れない天気を惜しみながら話します。
いつもは牧場から配信していますが、この日は自動餌やり機の修理業者が牛舎にいたため、軽トラの車内で収録することになりました。
ちょっと牛の声聞きたかったなとかね、ちょっとあれ、音質ちょっと違うんじゃね?みたいな。
いつもと音質が違うことを詫びつつ、「こんな日もあってもいいんじゃないか」と、そのまま配信を進めていきます。
今日の質問「餌で乳脂肪は変わる?」
この回のメインは、お便りコーナーに届いた質問への回答です。
質問はSpoonという配信アプリから、しゅうとれんさんという方が寄せてくれたものでした。前日までの餌の話を聞いての質問だそうです。
グラスフェッドとグレインフェッドで牛乳の成分って変わると思うのですが、グレインフェッドの方が乳脂肪多くなるのかなって。
川上さんはこの質問を「専門でグッとくる質問」と歓迎しながら、餌の違いとそれが牛乳に与える影響を解説していきます。
グラスフェッドとグレインフェッドの違い
まず川上さんは、2つの飼育方法の中身を整理します。
グラスフェッドは牧草中心の餌で、放牧やサイレージ中心の飼育方法のこと。グレインフェッドは穀物中心で、トウモロコシや配合飼料が主なものです。
牧草(グラス)中心。放牧やサイレージ中心の飼育。乳量は控えめだが脂肪の質が良い。
穀物(グレイン)中心。トウモロコシや配合飼料が主。乳量が上がり乳脂肪も高め。
どちらが良い悪いということではなく、目的と地域の条件によって選ばれている、と川上さんは説明します。
グラスフェッドの牛乳の特徴
グラスフェッドの牛は、稲科牧草やマメ科牧草を食べて育ちます。
タンパク質やエネルギーは穀物より少なめですが、繊維が多いので胃の働きがとても健全なのだそう。
牧草由来の脂肪にはオメガ3脂肪酸やリノール酸が多く含まれ、脂肪の質が良いとされています。
軽くてあっさりした口当たりで、でも風味が深くて青草の香りがあるのが特徴です。
ただし、カロリーは低めで乳脂肪率も少し下がる傾向があります。日本のように温度変化が大きい地域では、安定して乳量を出すのが少し難しい飼育方法でもあります。
グレインフェッドの牛乳と、気をつけたいこと
続いてグレインフェッドは、トウモロコシサイレージや配合飼料を多く与える、エネルギー効率型の飼育方法です。
トウモロコシには糖質が多く、牛の体内でプロピオン酸や酪酸といったエネルギー源に変わります。その結果、乳量が上がり、乳脂肪分も高くなる傾向があるのだそう。
いわばこってり系のミルクです。
ただし注意が必要なのは、胃のpHのバランスです。穀物が多すぎるとルーメンが酸性に傾き、アシドーシスを起こすことがあると言います。
だからこそ、穀物と草のバランスを保つように飼うことが大事だと川上さんは強調します。
味と成分の違い、そして「どちらも正解」
では、餌の違いは牛乳の味と成分にどう表れるのでしょうか。川上さんは傾向を整理してくれました。
| 項目 | グラスフェッド | グレインフェッド |
|---|---|---|
| 乳脂肪率 | やや低め | やや高め |
| オメガ3脂肪酸 | 高い | 低い |
| リノール酸 | 高い | 低め |
| 味・風味 | すっきり・草の香り | 濃厚で甘み強め |
ただし、これは完璧にこうと決まるものではなく、あくまで傾向だと川上さんは付け加えます。
そしていちばん大事なのは、どちらが上ということはない、という点です。
グラスフェッドは自然環境や動物福祉の観点から優れているとされ、グレインフェッドは安定した品質と乳量を確保できる。要は、どんな目的で牛を育てたいかが重要だといいます。
日本では「ハイブリッド」、そして技術の進化
日本のように梅雨があって湿度が高い場所では、通年放牧が難しく、グレインの力を借りざるを得ません。
そのため日本では、草も穀物も与える「グラスとグレインのハイブリッド」のような設計が多くされているそうです。
一方で最近は、AIやIoTで牛の採食量や反芻時間、乳成分をリアルタイムに分析できるようになってきました。
個体ごとに最適な給餌バランスを調整できる時代に入り、グラスフェッドとグレインフェッドの良さを両立できる可能性が出てきている、と川上さんは話します。
最後に、コストコで有機農法のグラスフェッド牛乳が一般的に買えるようになってきたことにも触れ、飲み比べを楽しんでみてほしいと呼びかけました。
いろんな牛乳があって、いろんな特徴があるのが、もうこの牛乳の深みというかね、奥深さにもなってますんで、ぜひいろんな牛乳飲んでみていただけたらと思います。
まとめ
餌の違いは牛乳の味や成分に確かに表れますが、大切なのは「どちらが上か」ではなく、牛の健康や地域の条件に合わせてバランスを取ること。身近なスーパーやコンビニでも、飲み比べで違いを味わってみてくださいね。
- グラスフェッドは牧草中心。脂肪の質が良く、あっさりして草の香りがある
- グレインフェッドは穀物中心。乳量が多く、乳脂肪が高くて濃厚
- 穀物の与えすぎはルーメンが酸性に傾くリスクがあり、草とのバランスが大事
- 日本では気候の都合から、草と穀物のハイブリッド設計が多い
- AIやIoTで個体ごとに給餌を最適化し、両方の良さを両立できる時代へ
