体調不良でも仕事は続く、という現場のリアル
この日の川上さんは、声が変わってしまうほどの体調不良。節々が痛く、喉も痛むなかでの配信でした。
ついに、お薬に手を出してしまいましたね、僕はね。本当に元には戻れないと思ってるんですけど。すいません、本当に喉の痛みがあるんで、ちょっとお薬の力を借りております。
「牛乳を飲んでいると病気にならない」といういつもの持論も、今回ばかりは苦笑い。それでも配信は止めません。
牛乳飲んだら病気にならないですけどね。ですけども、昔は牛乳がお薬として飲まれたりしたんだよ。皆さんも体調気をつけてくださいね。
今日のテーマは、TikTokの「れいくん」さんから寄せられた質問。シンプルだけれど奥が深い問いに、体調と相談しながら答えていきます。
酪農で一番大変なところは?
大変さだけじゃない、という大前提
川上さんはまず、大変さばかりを語ることへのためらいを口にします。ネガティブな面だけを伝えると、酪農をやりたい人が減ってしまうから、というのがその理由です。
大変なところばかりをお伝えするとですね、うわ、こんな仕事をやりたくないわって思う人が増えちゃうじゃないですか。これは悲しいんです。
それ以上に面白いです、酪農はね。ここを大前提として置いてほしい。
体調が悪くても、牛は変わらず餌を食べ、牛乳を出してくれる。そのことに川上さんはやりがいを感じていると話します。
酪農の大変さを分ける5つの構造
そのうえで川上さんは、酪農の大変さを5つの構造に整理して説明していきます。まとめられた原稿を読み上げる形で、順番に見ていきました。
まず「体」の大変さ。朝は4時から5時台に起き、1日2回の乳搾りや餌寄せ、掃除、哺乳などが続きます。
暑さ寒さに関係なく、24時間365日。瞬間的に重い作業というより、負荷の軽い作業がずっと続く点がきついと言います。
次に「時間」の大変さ。餌やりも搾乳も毎日で、分娩は夜中も突然。人間の都合では動いてくれません。
AIや自動給餌機で省力化はできても、牛が生き物である以上、作業がゼロになることは絶対にないのが酪農の特徴だと話します。
努力が報われにくい経済の構造
川上さんが「一番深刻だと思う部分」として挙げたのが、経済の大変さです。頑張れば売り上げが増える、という単純なビジネスではないと言います。
牛乳の価格はほぼ固定で市場原理が働きにくい一方、飼料価格だけは世界相場で変動します。機械は高額で、労働時間は長いのに収入には上限があるのが現状です。
努力しても収入は上がりにくく、リスクはどれだけ省いても消えない。この「非対称性」が、酪農家のメンタルを削る一番の原因にもなると指摘します。
続く「精神」の大変さは、命と向き合う仕事であること。牛は病気になることも、亡くなることもあります。
牛の死はお金の面だけでなく、感情的にもつらい。さらに毎日絶対にやらないといけないという責任感も、精神的な負担を高めるといいます。
結局、一番大変なのは「自由に決められないこと」
5つ目に挙げられたのが、社会構造としての大変さです。生産量、価格、出荷ルート、需要調整のどれもが、酪農家自身の意思では決められないと川上さんは話します。
そのうえで、では結局何が一番大変なのか。川上さんが出した結論は、はっきりしていました。
身体的な負担は工夫で軽減でき、時間的な負担は機械化で調整できる。けれど、構造的に選択肢が少ないことだけは、個々の酪農家の努力ではどうにもならない、というのがその理由です。
体の負担は工夫で軽減、時間の負担は機械化で調整できる
価格や出荷ルートなど、構造的な選択肢の少なさ
だからこそ川上牧場では、生産と消費の需要をリアルタイムでつなぎ、AIが需給を最適化する仕組みを作ろうとしていると話します。
酪農を合理化して未来の酪農家が選択できるようにしたい。それが川上牧場がやっている取り組みですということで。ちょっと思想が強かったですね。
参入障壁を下げて、酪農をやりやすく
川上さん自身も、もともとは非農家から酪農家になった一人。だからこそ、酪農に興味を持った人が入りやすい構造にしたいと考えています。
川上牧場で研修を受けてから、別の牧場に移っていく人も実際にいるそうです。目指しているのは、参入障壁を下げること。
一人や家族だけで全部を抱える昔ながらのやり方だけでなく、TMRセンターやキャトルセンター、コントラクターなど、酪農を支える外部産業をうまく活用する道もあると話します。
利益とのバランスもあるので「あるから使えばいい」とは一概に言えないとしつつ、新しいことがしにくい構造を少しずつ変えていきたい、と川上さんは締めくくりました。
最後にコメントで「風邪引いてる」といじられつつ、頑張っている酪農家がいるから牛乳をおいしく飲もう、と思ってもらえたら嬉しいと語っていました。
頑張ってる酪農家さんいるから牛乳を美味しく飲もうって思ってもらったら嬉しいなと思いますね。
まとめ
体調不良のなかでも配信を続けた川上さんが、リスナーの質問に本音で答えた回。酪農の大変さは体・時間・経済・精神・社会構造の5つに整理でき、なかでも「自由に意思決定できないこと」が最も大きいと語られました。それでも、素敵な仕事だという思いは変わりません。
- 酪農の大変さは体・時間・経済・精神・社会構造の5つに分けて考えられる
- 一番大変なのは、価格や出荷ルートを自分で決められない構造の問題
- 体や時間の負担は工夫や機械化で軽減できるが、構造は個人の努力では変えにくい
- 川上牧場はAIで需給を最適化し、未来の酪農家が選択できる仕組みを目指している
- 外部産業の活用や参入障壁の引き下げで、酪農をやりやすくしたいという思いがある
