今日の質問「都市近郊型酪農は自給飼料が難しい?」
今回のテーマは、Spoonのリスナー・レイニーさんから届いた質問です。
都市近郊型酪農は自給飼料の生産が難しいですか?北海道の方は自給のイメージがあります。
そもそも自給飼料とは、自分で作る餌のことです。川上牧場の場合、この自給飼料はほぼないと川上さんは話します。
川上牧場は自給飼料はほぼないですね。すべて購入飼料です。頼んで作ってもらってるものも本当に少量ありますけど、あるとしても一ヶ月分ぐらいですかね。
去年から年間を通じて給与している飼料稲(WCS)も、作ってもらっているものなので購入飼料に含まれます。
都市近郊型酪農が自給飼料を作りにくい理由
都市の近くにある酪農家は全国にたくさんあり、多くが同じ悩みを抱えています。理由はシンプルで、土地が確保できないからです。
都市周辺ではそもそも農地が少なく、土地の値段が高くて借りづらい。さらに工場や商業施設と競合し、小規模に分散していてまとまった面積を持ちにくい、という事情があります。
その結果、牧草地やデントコーンを作るための大きな圃場を確保しにくくなります。
だからこそ、多くの都市近郊農家は配合飼料などの購入飼料に依存しやすく、牧草やコーンといった粗飼料も外部からの購入比率が高くなる、という構造になっていきます。
一方で北海道はほぼ真逆
北海道は、都市近郊とはほぼ真逆の環境だと川上さんは説明します。広大な土地、畑作と輪作のシステム、そして規模の大きさから生まれるスケールメリットがあります。
規模の大きい農家が多く、頭数が集まる地域ではTMRセンターの普及も進んでいます。
こうした条件が揃っているため、自分の牧場でコーンや牧草を大量に作ることができます。北海道は牧草ロールやコーンサイレージなどの自給基盤が全国トップクラスで、「北海道=自給率が高い」というイメージにつながっています。
ただし、ここがポイントです。北海道でも購入飼料がゼロというわけではありません。
産乳量を目指すと濃厚飼料の購入は不可避なので、ゼロで飼うのはちょっと難しいところですね。飼料価格高騰の影響は北海道内も同じです。
土地が確保しにくく、購入飼料への依存が高い。消費地が近く直売や加工に強み。
広大な土地とスケールメリットで自給しやすい。ただし濃厚飼料の購入はゼロにはできない。
都市近郊酪農の強みとこれから
では、餌の値段が上がっていくこれから、都市近郊酪農はどうしていけばいいのでしょうか。川上さんは、都市近郊には大きなアドバンテージがあると話します。
いちばんの強みは、消費地が近いこと。牛乳やジェラート、スイーツなどの加工との相性が抜群で、加工販売や直売に強みがあります。
さらに食育や牧場体験との連携もしやすい。都市住民が来やすいので、収益の柱を分散できるのです。まさに川上牧場がやっているようなことですね。
SNSでの情報発信が刺さりやすいのも特徴です。都会の生産者が農業のリアルを求めているからだといいます。
最近はTMRセンターの利用、地域での粗飼料のシェア、堆肥と耕作放棄地のマッチングといった流れもあり、都市近郊でも自給率を高めるチャンスが少しずつ出てきています。
土地に合わせた酪農のスタイルが大事
川上さんは元々鳥取県で酪農を勉強し、酪農ヘルパーとしていろんな現場を回ってきました。鳥取県は都府県の中では自給飼料を作っている地域で、自分の牧場で牧草やデントコーンを作る酪農家が多かったそうです。
そのため、自給飼料があるのが当たり前だと思っていたと振り返ります。ところが島根県・出雲市の都市近郊酪農に触れると、飼い方がまるで違っていました。
いざ島根県に来て、出雲市のこの都市近郊酪農に触れると、もう全然飼い方が違って、就農当初は本当に戸惑いましたね。研修先も北海道の豊頃町という酪農のメッカで研修してたので、本当に合わなかったですね。
北海道や鳥取県で覚えたことを活用したいと思っていた川上さん。でも、その土地に合わせた酪農のスタイルでないと長続きしない、と気づいたといいます。
餌代は酪農経営の半分以上を占めるほど大事なもの。だからこそ餌代を下げる努力はこれからも続けたいと話します。
耕作放棄地がこれから増えて作る人がいなくなってくると、都市近郊でも餌を作れるチャンスがある。自分のところで作った餌で自分のところの牛を飼う、そんな酪農ができたらいいなと思っています。
まとめ
都市近郊型酪農と北海道の酪農は、土地の条件がまるで違います。どちらが良い悪いではなく、それぞれの土地に合った形を見つけることが、日本の酪農の面白さにつながっているんですね。
- 都市近郊は土地の制約が大きく、自給飼料を作りにくい
- 北海道は土地が広く自給しやすいが、それでも完全自給ではない
- 都市近郊には直売・食育・加工という別の強みがある
- 餌代は酪農経営の半分以上を占めるほど重要
- その土地に合わせた酪農スタイルこそがベストな形
