研修生が気になった「牛カフェ」と「保護牛」の話
今回のフリートークは、研修生さんが最近気になっているという話題からスタートしました。
ひとつは「牛カフェ」。もうひとつは、乳が出なくなった牛や、お肉にできない牛を屠殺せずに引き取って育てる「保護牛」の取り組みです。
研修生さんは、クラウドファンディングでお金を集めて牛を育てたり、お肉にできない黒毛和牛を安価なお肉として売るために育て直したりする例をSNSで見たと話します。
結局命にならない、人の命につながらずに殺すくらいだったら、安価で売った方がいいっていうのも見たんですけど。
川上さんは、この「経産肥育」のような取り組みが増えてきた背景を説明します。
クラウドファンディングとコロナ禍で広がった多様な飼い方
川上さんによると、こうした特殊な飼い方が広まったのはSNSとクラウドファンディングの登場が大きいと言います。
クラウドファンディングって言って個人でお金を集める方法もできるようになってきたんで、酪農とか畜産のやり方の多様性が出てきたんですよね。
転機になったのはコロナ禍でした。一般的な飼い方以外をしていた人たちが、餌代の高騰で活動を続けられなくなり、SNSで資金集めを始めたのです。
「コロナで酪農を助けましょう」というニュースが広がり、応援したい人がお金を出す。そうして成功例が出ると、第2弾、第3弾と真似する人も増えていった、という流れだと川上さんは見ています。
出始め方が、コロナがあってからっていう感じですか?
応援する人が集まってお金が回り、経済として成り立つならビジネスとしてアリ。ただ、資金が安定しない難しさも出てきている、というのが川上さんの見立てです。
「保護」なのに手放す?人間のエゴをめぐるモヤモヤ
川上さんが気にしているのは、クラウドファンディングやサブスクで運営していても、お金が回らなくなると「飼えなくなりました」と牛を手放すケースがあることです。
経済的に価値があっただろう廃用牛を、価値を出すために保護しますとやってるんだけど、結局最後また同じようになってしまってるんで、モヤモヤしますね。
一方で研修生さんは、何が正しいかは人によって考え方が違う、と受け止めます。
人間に命がつながらないんだったら殺してあげた方がいいっていう人もいれば、少しでも長く、自由に牧場を走り回って生きさせた方がいいんじゃないかっていう人もいるから。
川上さんが提案するのは、別の方向です。牛乳の買取価格が上がれば農家に利益が出て、その利益の中でこうした活動をやればみんながハッピーになるのでは、という考えです。
なんでそっちに向かわなかったのかなって思うんだよね。
ただ研修生さんは、それは難しいのではと指摘します。牛乳を飲むとき、人は牛を想像して飲まないからです。
クラウドファンディングは、頑張ってるのが目に見えるから応援したいって気持ちでやるじゃないですか。でも牛乳飲んでる時、牛を想像して飲まないじゃないですか。
見落とされがちな「家畜としての牛」のルール
話は、牛を飼うことに伴う法律やルールへと移ります。川上さんは、牛カフェで家畜防疫や餌の管理がきちんとされているのか気になると言います。
そのひとつが「飼料法」に関わる餌のルールです。牛には牛専用の餌しかあげてはいけない、と川上さんは説明します。
さらに、放牧場で猫やウサギ、ポニーなどと一緒に群れにする動物園的な飼い方も、昔は良くても今の法律では問題があると指摘します。
川上さんによると、日本でホルスタインの乳牛を飼う時点で、届け出制度への加入が必須。「ペットとして飼います」は通らないと言います。
海外から牛の伝染病が入って、その牛にうつって殺処分したくないですなんて言われたら、日本の畜産は大打撃ですからね。その1頭が出てくるだけで。
日本が「清浄国」でなくなれば、乳製品やお肉の輸出ができなくなるなど影響は甚大。だからこそ牛は家畜のカテゴリーに組み込まれている、というわけです。
牧羊犬、アニマルセラピー…海外との違い
犬や猫から牛に病気がうつる可能性がある、という話も出ました。ネズミを媒介にウイルスが入ることが多いそうです。
研修生さんは、ボーダーコリーのような牧羊犬が牛を追うイメージを挙げますが、川上さんは日本では今は難しく、ドローンで代替する動きもあると話します。
オーストラリアは全然みんな犬飼ってるんで、みんな牛を追いかけてるんで。
川上さんは、牛カフェのような活動そのものを否定はしません。ただ、防疫や餌のルールが守られているのか、応援する人にも考えてほしいと言います。
応援してる人たちも共犯者だと僕は思うので。そういうことが起こった時にどうするんですかっていうのを考えてほしい。
同時に、川上さんは「畜産の可能性の幅は狭めたくない」とも語り、両方の思いがあると本音を明かしました。
海外ではアニマルセラピーが普及していて、牛が認知症の方や特性のある人の心のケアに活躍している例もあるそうです。ただ日本では法律上、それが難しいのが現状だと言います。
答えはない。それでも新しいチャレンジを応援したい
研修生さんは、応援する人たちはどちらかというと「愛護」の視点だと整理します。
経営者と、愛護、動物としてペットとして見てる人の違い。
川上さんは「両立したら面白いと思うけどな」と応じつつ、答えのない話であることを認めます。
話題は、乳が出ないジャージー種のオス牛など、お肉の量が取れず経済的価値が低くなってしまう牛にも及びました。そうした牛の餌代を募るクラウドファンディングには、川上さんも「気持ちはわかる」と共感を示します。
気持ちはわかるけど、難しいとこですね。でもそれでクラウドファンディングの応援をしてもらって、経済が回るならいいかなと思ったりしますね。
最後に川上さんは、若い人の新しい挑戦への思いを口にしてトークを締めくくりました。
まとめ
牛カフェや保護牛といった新しい酪農の動きを、経営とアニマル愛護の両面から語り合った回でした。答えはないけれど、命との向き合い方や畜産のルールを知ることの大切さが伝わってきますね。
- クラウドファンディングやSNSの普及で、酪農・畜産の飼い方に多様性が生まれ、コロナ禍でその流れが加速した
- 保護をうたっても資金が続かず牛を手放す例もあり、川上さんは「人間のエゴ」としてモヤモヤを感じている
- 日本では乳牛は家畜として届け出制度に組み込まれ、飼料のルールや防疫、清浄国であることの重みがある
- 牛カフェを応援する人も含めて、何かあった時にどうするかを考えてほしいというのが川上さんの問いかけ
- 答えのない問題ながら、川上さんは若い人の新しいチャレンジを応援したいという姿勢を示した
