TikTokから届いた「牛を買えば酪農家になれる?」
今回の質問はTikTokのリスナー、ションアンドベンさんから届いたものです。
牧場をするには何からすればいいですか?牛を買ってくればできますか?
川上さんはまず、シンプルながら酪農の本質が全部詰まった質問だと受け止めます。
結論から言うと、牛を1頭買えば確かに酪農家にはなれます。でも、それを続けるのはとても大変なんですよね。
1頭からでもね、牛を買えば酪農家になるんですけど、それを続けるというのはやっぱり大変ですから。
牛を妊娠させ、赤ちゃんが生まれて初めて牛乳が出ます。その牛乳を適切に処理して乳業会社に回収してもらう。ここまでそろって、ようやく酪農が成り立つんです。
牛だけでは飼えない。最低限そろえるもの
川上さんが強調するのは「牛は設備と管理があって初めて飼える動物」だということ。牛を買っただけでは牧場はできません。
1頭飼うだけでも、まず毎日の餌が必要です。草だけでは牛は飼えず、粗飼料と濃厚飼料の2種類が最低でも要ります。
さらに、きれいな水、休む場所となる牛舎や日陰、糞尿を処理する施設や機械も欠かせません。病気や怪我に対応する健康管理の技術も必須です。
酪農の場合はこれに加えて、搾乳設備や絞った牛乳を冷却・保管する仕組み、そして出荷先まで必要になります。
つまり、牛だけいても成り立たない構造がありますということですね。
なぜ牛は「最後」なのか
川上さんは、準備には順番があると言います。まず環境、次に管理体制、そして販売、最後に牛です。
なぜ牛が最後なのか。それは、牛が毎日食べて飲んで排泄し、体調が変わる生き物だからです。
環境が整っていない状態で牛を入れると、体調を崩してお乳も出なくなります。最悪の場合は命に関わることも。これは現場で普通に起きていることだと川上さんは話します。
何から始める?まずは現場で研修
では質問の核心、何から始めればいいのか。川上さんが一番現実的だと挙げるのは「まずは現場で働いて研修すること」です。
まずは牧場に入ることです。これはほぼほぼ必須です。理由は教科書ではわからない、判断が経験に依存するからです。
酪農にはいろいろな形があります。牛をつなぎっぱなしにするつなぎ飼い、牛が自由に動けるフリーストール、そして放牧など。川上牧場はつなぎ飼いです。
どの形を選ぶかで、必要な設備も働き方も全部変わってきます。ここを決めないと前に進めないんですね。
初期投資という現実的なハードル
ここからは少し現実的な話。酪農は初期投資が大きい産業です。
牛舎はDIYで小さく作れる場合もありますが、規模が大きくなれば建てるだけで大きな費用がかかります。搾乳の機械も、1頭なら手作業でできても大変です。
土地の問題もあります。自分の畑でないところに牛の糞尿を撒くことはできませんし、牛が伝染病で亡くなったときに処理する埋却地まで確保しておく必要があります。
そして肝心の牛。素人がいきなり「牛を買わせてください」と行っても、まず売ってもらえませんし、家畜市場でも買わせてくれないと川上さんは言います。
ただし、新規就農の補助制度や融資制度があるのも事実。ハードルは高くても、支える仕組みは用意されています。
ゼロから作らない選択肢
最近は、すべてをゼロから作らない方法もあると川上さんは紹介します。
土地・牛舎・設備・牛をすべて自分でそろえる
既存牧場の第三者継承、雇用就農、法人牧場の譲渡など
たとえば既存の牧場を引き継ぐ第三者継承や、従業員として働きながら経営を担う雇用就農。法人牧場なら、第一牧場の譲渡を任される形でスタートすることもあります。
川上さんは、質問の本質は「牛を買う」ではなく「経営を作る」ことにあるとまとめます。本当にやってみたいなら、まずは一歩現場に入ることからだと。
川上牧場も研修を受け入れています
川上牧場でも、新規就農を目指す人を受け入れています。IUターン事業を使って1年間研修し、その後に北海道で新規就農した人の実績もあるそうです。
平日はサラリーマン夫婦として働きながら、土日だけ川上牧場で研修し、1年後に大きな牧場へ移った人もいます。
農業大学校や短期研修、新規就農者を受け入れる牧場や市区町村・都道府県の研修制度など、始め方はいろいろ。まずはそこから一歩を踏み出せばいいと川上さんは背中を押します。
なお、川上牧場初のKindle本「酪農未経験者のために」も発売中で、新規就農に大切な技術がまとめられています。
まとめ
「牛を買えば牧場は始められる?」という質問への答えは、はっきり「ノー」でした。牛は最後。まずは環境と仕組み、そして現場での経験から始めるのが酪農のリアルです。
- 牛を1頭買えば酪農家にはなれるが、続けるには設備と管理が不可欠
- 準備の順番は「環境→管理体制→販売→牛」で、牛は最後に導入する
- 餌・水・牛舎・糞尿処理・健康管理に加え、搾乳設備と出荷先が必要
- 一番現実的な第一歩は、現場で働いて研修すること
- ゼロから作らず、第三者継承や雇用就農という選択肢もある
