北海道のリスナーから届いたお便り
今回はスタンドFMのレター機能に、北海道で酪農をされているサイロさんからお便りが届いたところからスタートしました。
研修生さんの様子を「素直でいい感じですね」とほめてくれつつ、酪農にまつわる心配事として、奥さんがクリプトスポリジウムという原虫にやられて5日間ほど大変だったエピソードが綴られていました。
しかもそのタイミングが息子さんの5歳の誕生日と重なってしまい、残念な思い出になってしまったとのこと。搾乳バイトで「クリプトの洗礼」を受けた友達も多かったそうです。
酪農と手荒れ、冬場のケア
お便りを受けて、まずは研修生さんの手の調子の話に。研修生さんは「治った方」と言いますが、川上さんから見るとまだ荒れているようです。
手荒れてないんですよ。
全然荒れとるやん。
でも治った方ですよ。夜痒くてとかあんまなくなったんですよ。
酪農の仕事はこの時期、水仕事が多くて手が荒れやすいそう。とくに哺乳瓶や器具の洗浄を担当することが多い女性は大変だといいます。
対策として、寝る前にクリームを塗ってから搾乳用のゴム手袋をして寝ると、手荒れがやわらぐそうです。冬場は乾燥で余計に荒れやすいので、気になる人は試してみてくださいね。
クリプトスポリジウムってどんな病気?
話題は本題のクリプトスポリジウムへ。子牛のところで出やすく、親牛にもうつって牛舎全体が下痢して餌を食べなくなることもあるそうです。
ひどくなると腸が剥がれて血便が出ることもあるとのこと。原因はお腹の中で増える「原虫」で、寄生虫に近いものだと説明されました。
川上牧場では子牛にバイコックスという薬を使っていますが、これはコクシジウムという別の原虫を予防するもの。腸に保護膜をつくるように働くそうです。
一方で、クリプトには効く薬があまりなく、対策は牛舎を清潔に保つことが中心になります。
バイコックスなどの予防薬があり、腸を保護して防げる
効く薬が少なく、牛舎の清掃・消毒で防ぐしかない
石灰・ガスバーナーでの消毒
薬がないクリプト対策として、牛舎の消毒方法についても話が広がりました。
石灰は水がつくと高温になる性質があり、その熱で原虫や菌を焼き殺すイメージで使うそうです。壁や床、破風などに塗って消毒します。
川上牧場で親牛のところに撒いている石灰は、大腸菌などの消毒が主な目的とのこと。石灰はいろんな菌に効果的なんですね。
さらに強力な方法として、子牛が全部いなくなったタイミングで牛舎の壁をガスバーナーで焼く消毒もあるそうです。ただしリスクが高く危険なので、牛がいる状態ではできません。
なぜ北海道で流行するのか
クリプトスポリジウムは北海道の一部で大流行しているそうです。研修生さんは「寒いから?」と尋ねますが、理由はそれだけではありませんでした。
家族経営だった酪農が企業化し、狭いスペースに牛を多く入れて過密になっていることが背景にあると川上さんは話します。
やっぱり過密にすると病気が多くなっちゃうので。犬や猫もそうでしょ。狭いところでギュッてやっちゃったりすると病気が増えちゃうのと一緒で。
つまり一番良くないのは衛生状況が悪くなること。お湯と洗剤でしっかり洗って消毒することが基本の対策になります。
乳首を子牛どうしが舐め合ってうつったり、下に落ちたものをペロペロ舐めてお腹に入ったりするので、日々の清潔さが大事なんですね。
研修生さんが来てからは牛舎で発生していないか尋ねると、川上さんは「調べたら普通にいると思う」と回答。健康状態が良ければ多少お腹がグルグルする程度で元気に過ごせるものの、過密でストレスがかかると悪化しやすいそうです。
牛から人へ、感染を防ぐには
クリプトスポリジウムは人にもうつります。人にうつるのは、風邪などで体調が悪いときや、牛舎で何か食べてしまったときなどです。
ここで川上さんが、牛舎でおにぎりを渡されたらその場で食べるか研修生さんに質問。研修生さんは即座に「食べれる」と答え、川上さんを驚かせました。
だってここにうんこあって、うんこをやった作業の手じゃないですか。人が握ったおにぎりはやっぱ抵抗感あるよ僕は。
私本当に何の抵抗感も。落ちてても食べれる。
クリプトは0.0何ミリという小ささで、手を洗っても流れはするけれど死にはしないそう。60度以上の熱湯でないと死なないほど熱にも強いといいます。
だからこそ、免疫を超えるほど大量に体に入らないようにすることが大切。牛舎で落ちたものは食べない、というのが基本ですね。
酪農現場のその他のリスク
牛から人にうつるのは原虫だけではありません。堆肥の切り返し作業では、アンモニアなどの有毒ガスが少し出るそうです。
海外では、こうしたガスを吸った畜産関係者に呼吸器系の障害が出ているという調査もあり、いずれマスクをして作業するよう言われる時代が来るかもしれないと話されています。
川上さんが酪農ヘルパー先で見た例では、傷跡に黄色ブドウ球菌が入り、1ヶ月ほど腕が腫れたままになった人がいたそうです。牧草の収穫時期に寝ずに働き、免疫力が落ちていたことが原因だったといいます。
研修生さんは、一人でやっている酪農家は体調が悪くても搾乳を続けるしかなく、免疫が弱ると病気にかかる「負のスパイラル」になりやすいと指摘しました。
この間Xで、酪農家はやばい、あいつらは骨折してもやり続けるっていうのがバズってたじゃん。否定できなくて、ちょっと悲しくなったもん。
乳を搾らないと乳房炎になってしまうため、松葉杖をつきながら牛舎に出てくる人もいるそう。川上さん自身は「怪我も病気もしないよう常に気をつけている」と話していました。
まとめ
今回は、酪農現場で牛から人へうつる病気や、日々の衛生リスクについて研修生さんと学ぶ回でした。クリプトスポリジウムを中心に、薬が少ない病気にどう向き合うかがよくわかる内容でしたね。
- クリプトスポリジウムは薬が少なく、牛舎を清潔に保つことが最大の対策になる
- 過密飼育は病気が増える原因になり、北海道の一部で流行している背景にもなっている
- 牛から人へもうつるため、牛舎で落ちたものを食べない・しっかり洗うなどの基本が大事
- 堆肥のガスや黄色ブドウ球菌など、酪農にはさまざまな衛生・健康リスクがある
- 一人経営の酪農家は体調が悪くても休みにくく、怪我や病気の予防意識が欠かせない
