リスナーから届いたマニアックな質問
今回はYouTubeネームのメイプルさんから、かなり専門的な質問が届きました。
九月上旬に分娩予定の牛でしたが、ゴールデンウィーク明け頃に双子の子宮捻転の流産で親牛も死亡してしまいました。分娩直前ではないのでびっくりしました。妊娠中期の子宮捻転は何が原因で起こるのか、わかる範囲で教えてください。
川上さんは獣医ではないため、獣医学的な断定はできないと前置きしています。
そのうえで、インターネット上の文献やAIを使って調べ、家畜人工授精師と酪農家の立場から自分なりにまとめてきたと話します。
私は獣医さんではないので、獣医学的なお話はできないんですけども、まあインターネットとかAIを活用して、出ている文献をまとめたりリサーチしたりして、ちょっとまとめてきました。
川上牧場でも子宮捻転は何度か経験があり、双子で帝王切開になり片方だけ生まれたケースなどもあったそうです。
そもそも牛の子宮捻転とは何か
川上さんはまず、子宮捻転がどんな状態なのかを説明します。
簡単に言うと、妊娠した子宮がお腹の中で雑巾のようにねじれてしまう状態です。風船がギュルギュルと一回転したようなイメージだと例えています。
こうなると子宮の血管が締まって血流が止まり、胎児が死んでしまいます。さらに進行すると母牛もショック状態になります。
通常は分娩直前に多い事故だと言います。
理由は単純で、子牛が大きくなると子宮も大きくなり、陣痛でぐるぐる動くため回転しやすくなるからです。
なぜ妊娠中期に、しかも双子で起きたのか
今回のように妊娠中期での子宮捻転は珍しいケースだと川上さんは話します。ここでポイントになるのが双子の妊娠です。
実は双子は重いから安定しそうと思いきや、逆なんですと。双子だと左右の子宮角への重量バランスが崩れやすいんですね。
牛の子宮は左右二つに分かれた子宮角という構造になっています。双子だとこの左右のバランスが崩れやすく、胎児の位置も不安定になります。
片方が大きい、動き方が違う、羊水量が違う。そうなると子宮全体が振り子のように回りやすくなると説明します。
さらに牛の子宮は構造的に不安定だといいます。馬など他の動物と比べて子宮を支える膜が弱く、お腹の中でハンモックのようにぶら下がっている構造に近いそうです。
だから重くなると横へ倒れやすく、回転しやすい。これが牛で子宮捻転が多い理由の一つだと語ります。
他にも、牛が立ち上がるとき頭を振り子のように振って勢いをつけるため、その動きで子宮もグルンといきやすいこと、お腹が大きい状態でドスンと座ったときに回ってしまうこともあると話します。
双子妊娠
左右の子宮角の重量バランスが崩れ、胎児の位置も不安定になる
不安定な子宮構造
牛の子宮は支える膜が弱く、ハンモックのようにぶら下がっている
物理的な刺激
起立や転倒、寝るときの衝撃などで子宮が振り子のように動く
子宮捻転
ある瞬間に子宮がぐるっと回転してしまう
発見が遅れると母牛の命にも関わる
今回のケースでもう一つ怖いのが、妊娠中期だからこそ発見が遅れやすいという点です。
分娩前ならいきみや陣痛、尾を上げる、変な粘液が出るといったサインがあります。しかし妊娠中期は「元気がない」「食欲がない」「反すうが弱い」程度の症状しか外から見えないと言います。
そのため気づいたときには子宮が壊死し、胎児が死亡していることがあります。
さらにねじれで血流障害が起き、傷んだ組織からエンドトキシンという細菌毒素が全身へ回ることがあります。
ここまで進むとショック症状や全身の血液凝固異常にまで至り、救命はかなり難しくなります。今回のように母牛が亡くなってしまうのは、こうした流れが考えられると説明します。
現場の感覚として、高泌乳牛ほどリスクを感じることがあるとも話します。胃の位置や脂肪の動員、ルーメンの容量など、お腹の中のスペースが大きく変化するためです。
そこへ双子妊娠による子宮の重量増加、急な起立や転倒、発情行動や牛同士のぶつかりなどの刺激が重なると、ある瞬間に回ってしまう可能性があるとまとめます。
予防と観察の大切さ、そして牛乳を届けるということ
双子妊娠は酪農家にとって、生まれてラッキーと思える一方で、流産や難産などのリスクも高まると川上さんは話します。
だからこそ、双子妊娠にはこうしたリスクがあることを知っておいてほしいと伝えています。
こういう事故は外から見るとただの流産に見えるかもしれませんが、現場では牛が苦しんで、農家も苦しんで、助けたくても助けられない、そんなケースもやっぱり酪農にはあったりします。
川上さん自身も、お腹に羊水が溜まり続ける胎膜水腫や、夜中に起きた激しい子宮捻転など、さまざまな経験をしてきたと振り返ります。
予想できる事故もあれば、原因がわからないまま牛が亡くなってしまうこともある。だからこそ日々の観察と勉強、早期発見による予防が大事だと締めくくります。
そういう中で、こう皆さんのいつもの牛乳をお届けしておりますので、この話を聞いて、そういうこともあるんだ、牛乳飲まなきゃなってなってもらったら嬉しいなと思うところでございます。
まとめ
妊娠中期に起きた双子の子宮捻転と母牛死亡というつらいケースを入り口に、牛の子宮がなぜねじれやすいのか、そしてなぜ発見が難しいのかを酪農家目線で解説した回でした。牛乳の裏側にある現場の現実を知るきっかけになる内容です。
- 子宮捻転は妊娠した子宮がねじれ、血流が止まって胎児や母牛の命に関わる事故です。
- 通常は分娩直前に多いですが、双子妊娠では子宮角のバランスが崩れ、妊娠中期でも起こり得ます。
- 牛の子宮は支える膜が弱く、ハンモックのようにぶら下がっているため回転しやすい構造です。
- 妊娠中期は症状が分かりにくく、発見が遅れるとエンドトキシンによるショックで母牛も亡くなることがあります。
- 原因を断定するのは難しく、だからこそ日々の観察と早期発見による予防が重要だと語られています。
