フランスで牛5頭が「新入生」になったニュース
今回の質問は、公式LINEのお便りフォームに届いた長文の相談でした。
質問者は「川上さんは牛のいる学校をどう思われますか」と尋ねています。
フランスの学校で児童数が100人を切ると閉校になることを阻止するために、牛を五頭新入生として入学させて学校維持を図った校長先生のニュースを読みました。学校教育の中における命の教育について、また学校の飼育環境の有無について、川上さんはどのようなお考えをお持ちですか。
川上さんはこのニュースを、単なる冗談としてではなく受け止めています。
ポイントは、校長先生が生徒数という数字だけで学校を判断していいのか、と教育委員会に抗議した点だと話されています。
このニュースの面白いところは、牛を本気で授業に参加させたいというよりも、学校を数字だけで見ないでほしい、地域の学校を守りたい、子供の居場所を残したいという抗議の意味があります。
児童数が足りないなら牛を入れて増やそうという、フランスらしいユーモアの裏に、学校は人数だけで価値が決まる場所じゃないという主張があると解釈されています。
過疎地域を抱える日本でも共感できる話だと考えられます。
昔はあった「学校の動物」が減った理由
日本でも、学校に動物がいる風景は昔からありました。
ウサギ、ニワトリ、チャボ、金魚、メダカなどが代表的だったと話されています。
もともとは観察して学ぶ理科教育の意味が強く、その後、世話や死を経験する「命の教育」としての意味が強くなってきたそうです。
ただ、最近は学校で動物を飼うことが減っています。
理由はかなり現実的で、休日の世話、先生の負担、アレルギーや感染症、動物福祉への配慮など、時代とともに課題が増えたためだと説明されています。
つまり、教育的価値はあるけれど、昔みたいにとりあえず飼えばいいという時代ではなくなっています。
子供を評価しないスクールドッグの役割
そこで最近注目されているのが、質問にもあったスクールドッグです。
単に癒しを与える犬ではなく、学校生活の中で子供たちを支える存在になっていると話されています。
目的は、子供の安心感を作ることや、不登校のきっかけになること、人との橋渡し、自己肯定感を育てることなどだそうです。
犬は子供を評価しません。勉強ができるとか、話すのがうまいとか、そんなことを見ません。ただそこにいる。これが子供にとって大きいのではないかというわけですね。
牛は「社会の仕組み」を見せてくれる
では、牛はスクールドッグのように学校で飼えるのでしょうか。
川上さんは、牛はウサギや犬とは全然違うと話します。体が大きく、餌も多く、排泄物の量も多い上に、世話には専門知識が必要だからです。
そのため、公立の小中学校で日常的に牛を飼うのは正直かなり難しいとしています。
一方で、教育的な価値はものすごくあると強調しています。
牛乳を出す、牛のフンが堆肥になる。堆肥が畑に戻り、その畑から人が食べるものにつながる。牛って社会の仕組みそのものを見せてくれるという、そんな特別な生き物です。
命を守ることから食、酪農という仕事、地域産業、環境の循環まで、牛はすべてをつなげてくれる動物だと語られています。
命
ミルクの温度や量がずれると子牛は体調を崩す
食
牛乳や乳製品として人の食につながる
産業
酪農という仕事や職業教育につながる
環境
フンが堆肥になり畑に戻る循環になる
実際に日本でも、北海道の小学校が地域の牧場と連携し、子牛を一定期間学校で飼育した事例があると紹介されています。
子供たちはミルクを与え、成長を見て、フンの片付けや体調の変化を観察します。
大事なのは「可愛いだけじゃない」という点で、世話を間違えると子牛はお腹を壊し、命に関わることを実感するそうです。
つまり、ちゃんと世話をしないと命に関わるということを子供たちは実感します。これは教科書ではなかなか伝わりません。
学校で牛を飼うのは「ありよりのなし」
最後に、学校で牛を飼うのはありかなしか、という結論です。
川上さんの答えは「ありよりのなし」でした。体験してもらいたい気持ちはあるものの、ハードルが高いという理由からです。
学校だけで行うのはまず無理で、牧場、獣医、家畜保健所、地域や保護者の理解が必要だと話されています。
この連携があれば、ものすごく価値のある素晴らしい取り組みになると考えられています。
一方で、熱意のある先生が一人で進めると失敗しやすい、とも指摘されています。動物にも負担がかかり、子供にも安全面のリスクがあるためです。
学校で牛を飼うよりも、地域の牧場と学校が一緒に牛を教材にする、この形が一番現実的だと思います。
この「牧場と学校が一緒に牛を教材にする」形こそ、酪農教育ファームが今やっていることだと説明されています。
産業動物と愛玩動物のあいだで
後半では、牛を学校に預ける場合の難しさも語られました。
川上さんが一番怖いのは、アレルギーや食中毒、そして怪我だと話しています。
牧場から預けるのは、ホルスタインのオスや販売しにくい牛などになると想定されますが、それも命なのでないがしろにはできません。
ここで「産業動物」と「愛玩動物」の考え方の違いが難しいと指摘されています。
可愛い、癒されるといった観点で関わる存在
市場価値や人の役に立つかという観点で見られる存在
今の子供たちは動物との距離感がとても大きく、牧場に来た反応を見てもわかると、川上さんは危機感を語ります。
同時に、伝染病や病気が流行する中で、人が多く集まる場所に牛を持ち込むリスクや責任を酪農家一軒で背負うのは大変だとも話されています。
コメントでは、ランドセルが牛革であることにも触れられ、身近なところで牛が貢献していると再確認されました。
経験を奪わないために大人ができること
リスナーからは「経験するのは大事だけど、持続するのは厳しいよね」というコメントも寄せられました。
川上さんはこれに共感しつつ、厳しさを理由に子供の経験を奪ってしまう点は大人が考えるべきだと話しています。
これは危ない、これは問題があったらどうするんだ、責任はどうするんだと。今の子供たち、マジで何もできなくなってきちゃってるんで、そこはちょっと大人がちょっと頑張っていくところではないかなと思います。
そして、フランスの校長先生のように熱意のある人がいれば実現できるかもしれない、と締めくくられています。
この配信を聞いてやりたいなと思われる方は、校長先生やPTAとご相談して、お近くの酪農教育ファームにご相談していただけると、できないことはないんじゃないかなと思います。
まとめ
フランスの牛の入学は、学校を人数だけで判断しないでほしいというユーモアある抗議でした。川上さんは、牛のいる学校は理想として魅力的だが、学校だけでは難しく、地域と牧場と専門家が連携するなら「あり」だと語っています。
- フランスの牛5頭の入学は、学校を数字だけで見ないでという抗議のメッセージだった
- 学校での動物飼育は、負担や衛生管理、動物福祉などの理由で減っている
- スクールドッグは子供を評価せず、安心感や自己肯定感を支える存在
- 牛は命・食・産業・環境をつなげて学べる特別な動物
- 学校で牛を飼うより、牧場と学校が一緒に牛を教材にする形が現実的
