豚の臓器を人へ。2027年に実用化を目指すプロジェクト
今回の話題は、日本経済新聞の2025年10月22日の記事です。臓器移植向けのドナー豚を2027年にも日本で実用化しようという内容で、川上さんが「めちゃめちゃテンションが上がっている」ニュースとして紹介します。
プロジェクトを進めるのは、明治大学農学部の永島教授が中心となって立ち上げたバイオベンチャー「ポルメドテック」です。2017年に設立され、豚の体細胞クローン技術と遺伝子改変技術を組み合わせて、人の移植に使えるドナー豚を作ることを目指しています。
なぜ豚なのかというと、臓器のサイズや生理機能が人間にとても近いから。ただ、そのままだと人間の免疫が異物とみなして激しい拒絶反応を起こしてしまいます。
遺伝子を組み換えて「拒絶されない豚」を作る
そこで使われるのが遺伝子改変技術です。アメリカのイージェネシス社が開発したドナー豚では、免疫拒絶を起こす糖鎖を削除し、人間の免疫を調整する遺伝子を追加し、ウイルス感染を防ぐ遺伝子を組み込んでいます。
こうして作られた豚の臓器は、人間の体内でも拒絶されにくくなり、機能を保てるようになります。ポルメドテックはこのイージェネシス社と連携して、日本国内でクローン豚を増やす技術を確立しました。
糖鎖を削除
免疫拒絶を起こす原因となる糖鎖を取り除く
遺伝子を追加
人間の免疫を調整する遺伝子を加える
ウイルス対策
ウイルス感染を防ぐ遺伝子を組み込む
移植可能に
人間の体内でも拒絶されにくく機能を保つ臓器になる
すでに始まっている、世界の移植手術
この技術は空想の話ではなく、すでに世界で動いています。アメリカでは2022年に豚の心臓を人間に移植する手術が行われ、患者は約2ヶ月間生存。医学史上初の成功例として注目を集めました。
2024年にはマサチューセッツ総合病院のチームが豚の腎臓を人間に移植し、その患者は透析なしで7ヶ月以上生存中で、異種移植の最長記録となっています。中国でも豚の肝臓を部分移植し、170日以上生存した例が報告されました。
期間だけを見ると「2ヶ月しか持たないの?」と感じるかもしれませんが、これはもう命が助からないという方に対して試験的に行われているものだと川上さんは補足します。
日本ではポルメドテックが2027年に国内初のドナー豚専用施設を稼働させる計画です。遺伝子改変豚を数百頭規模で繁殖させ、完全にクリーンな環境で感染症を徹底的に防ぎながら飼育します。
出資には養豚設備メーカーの関根舎やニッキホールディングスのファンドが参画し、国の補助金も活用して経産省の支援を受けています。これが整えば、日本で臓器移植を待つ1万4000人以上の患者に新たな希望が見えてくるかもしれません。
残る課題と、酪農家が感じる「動物の価値の変化」
ただし課題もあります。豚由来のウイルスが人に感染するリスク、動物福祉の観点からの倫理的な議論、そして社会がこの技術をどう受け入れるか。命を救うために別の命を使うという問いは、酪農や畜産に関わる立場にも無関係ではありません。
川上さんは、初めて知る人にとっては衝撃的で、気持ち悪さを感じるかもしれない、と受け止めます。ただ、いろんな医薬品や化学製品、農薬なども動物実験を経て社会に実装されてきた、とも話します。
初めて出る時は、今当たり前だよねってみんなが思ってるやつは、全てそういう風な流れを取ってきてるので、その最初だと僕は思っていますね。
そのうえで、牛を飼う畜産農家として感じることがあると言います。それは、動物の価値が変わってきているということです。
今までは食品として使われるというところだったんですけど、命を助けるっていうところまで、こう経済動物の価値が上がるっていうのは。
川上さんは、家畜が人間にどれだけ役に立てるかがその役目だと考えています。だからこそ、命を救える生き物にまで昇華したことを「めっちゃすごい」と受け止めています。
牛の価値も変わっていく。酪農家が期待する未来
話は牛にも及びます。日本では人口が減って牛乳やお肉の消費も減っていくかもしれない。けれど川上さんは、技術の進歩や科学の進化によって、牛の価値がまた変わっていくことに期待していると語ります。
例えば、牛のゲップや排せつ物が地球温暖化に影響するといわれてきましたが、今は技術が進み、牛がいることでメタンガスやCO2の削減につながるような牛が、あと数年で完成すると考えているそうです。
どんどん地球の温室効果ガスを下げてくれるっていう生物になっていくっていうことになってくると思うので、これは今期待してますね。
リスナーからは「体温計ですら導入に批判があった」「細胞学の発展は目覚ましい」といったコメントも寄せられました。川上さんは、カメラで魂を吸われると言われた時代も同じで、新しい技術には最初こう受け止められるものだと応じています。
まとめ
臓器移植向けのドナー豚が2027年にも日本で実用化を目指すというニュースを、牛を飼う酪農家の視点から読み解いた回でした。食べる存在だった家畜が命を救う存在へ、という価値の変化に、川上さんは大きな期待を寄せています。
- 明治大学発のポルメドテックが、遺伝子改変で拒絶されにくい移植用ドナー豚を開発している
- 世界ではすでに豚の心臓・腎臓・肝臓の移植が行われ、7ヶ月以上生存する例も出ている
- 日本では2027年に専用施設を稼働予定で、1万4000人以上の移植待ち患者への希望となりうる
- ウイルス感染リスクや動物福祉など倫理的な課題も残されている
- 酪農家として、家畜の価値が「食べる存在」から「命を救う存在」へ広がることに期待している
