島根の牧場の朝と、今日のテーマ
配信は11月26日の水曜日、雨のち曇りの朝から始まりました。前日には雷と雨があり、この地域で「雪起こし」と呼ばれる、これから寒くなる合図の雷だったそうです。
今日の仕事は、遠方への堆肥の配達と、繁殖検診の処置。ここだけの話、あまり気の進まないお客さんのところだけど行きます、という本音もこぼれます。
堆肥を買っていただいてありがとうございます。もうその気持ちはあります。
そんな日常の合間に届いたのが、中国と日本の外交をめぐる質問。輸入・輸出は農産物にも影響するということで、今回はそこを詳しく掘り下げていきます。
質問「中国の輸出規制を酪農家目線で」
質問はAWAという配信アプリから、リスナーの岩間さんより寄せられました。
中国が日本に生産物を輸出規制している件について、酪農家目線でお話ししてください。
川上さんはまず、こうした外交の摩擦は珍しくないと話します。日本の総理や大臣が変わったとき、あるいは中国国内の情勢が悪くなったときに、規制という形で表面化しやすいといいます。
ニュースでは日中の貿易摩擦や外交問題として語られがちですが、酪農の現場ではもっと生々しい話だと強調します。
これ、明日の餌代に直結している話じゃん、というレベルの問題です。
規制の本質は「牛乳が生まれる環境」への圧力
川上さんが挙げた結論は、中国の規制が牛乳や乳製品そのものではなく、牛乳が生まれる環境を揺さぶっている、という点です。
その具体例が肥料です。中国は2021年頃から、尿素やリン酸肥料、窒素肥料といった肥料原料の輸出を厳しく制限しました。理由は自国の農業を守るためです。
日本はこれらの資材の多くを中国に依存していたため、肥料価格が高騰。飼料作物の生産コストが上がり、餌代へと直撃しました。配合飼料は一時、1トン当たり1万円以上値上げされたといいます。
牛乳を搾れば搾るほど経費がかさむ構造になりつつある、と川上さんは言います。餌代、電気代、燃料代、資材費が同時に上がり、経営努力だけではカバーしきれない圧力になっています。
止められる資材、止められる製品——両面のリスク
もう一つ川上さんが指摘したのが、中国が政治的な判断で日本産の水産物を輸入禁止にした事例です。気に入らなければ止める、という選択が現実に行われたわけです。
これは水産だけの話ではありません。資材を輸出で止められ、製品を輸入で止められる。この両面のリスクが酪農にも当てはまるといいます。
将来的に、日本産の牛乳や乳製品が輸出できなくなる事態が起きても不思議ではない時代になっている、という見立てです。
肥料などの資材が入ってこず、餌代や生産コストが上がる
日本産の牛乳・乳製品などを相手国が受け取らなくなる
なぜ中国がこうした政策をとるのか。川上さんは理由を3つに整理します。感情論ではなく、超国家レベルの戦略だといいます。
「中国が悪い」で終わらせない——日本の農業を見直す機会
ここで川上さんが大切にしたのは、「中国が悪い」で終わらせないことです。むしろ日本の農業のあり方を見直す機会だと捉えています。
輸入飼料への過度な依存、化学肥料への依存、海外資材に頼る構造。これらをどう減らすかが問われています。
そのうえで、自給飼料や堆肥の循環、地域資源の活用が、理想論ではなく生き残るための戦略になってきたと話します。
牛乳の値段は生産者の都合ではなく世界情勢の結果である——そう考えると、酪農は単なる第一次産業から戦略産業へと位置づけが変わっていく、と締めくくりました。
肥料高騰、飼料コスト上昇、酪農経営の圧迫、供給リスクの顕在化、貿易の政治化
国産資源の価値再評価、持続可能な農業への転換、消費者との関係の再構築
リスク分散という考え方——黒毛和牛や牛乳の輸出をめぐって
コメントで「川上さんはどう思いましたか?」と問われ、川上さんは中国依存からの脱却をした方がいい、と自身の考えを述べます。
黒毛和牛の輸出でいえば、中国は市場が日本の10倍ほどあり、富裕層が和牛を食べているため、輸出できれば日本の利益になるといいます。
ただし、国際情勢に振り回されると日本の市場にも影響が出るため、中国だけを見るのではなく、中国以外の地域も含めてリスク分散していくことが大事だと話します。
牛乳・乳製品についても、近くて船で運びやすい中国へロングライフ牛乳を輸出しようという流れがあるものの、不安定になると日本の需給バランスに影響が出ると指摘します。
今ちょっといい流れだから売ろうみたいな、じゃなくて、長期目線でちょっと考えてもらいたいなと思うところでございます。
話の最後には激しい雨のなか、川上牧場初のKindle本『酪農未経験者のために』や、翌日から始まるSUZURIのブラックフライデーセールの案内もありました。
まとめ
今回は「中国の規制は酪農にどう影響するの?」というリスナーの質問に、川上さんが餌代のリアルから答えた回でした。規制は牛乳そのものではなく、それを育てる環境を揺さぶっているという視点が印象的です。
- 中国の肥料原料の輸出制限で、日本の肥料価格が高騰し、餌代に直撃した
- 配合飼料は一時、1トン当たり1万円以上値上げされた
- 資材を輸出で止められ、製品を輸入で止められる、両面のリスクがある
- 中国依存からの脱却と、輸出先のリスク分散が生き残りの戦略になる
- 安さより「どう守られているか」を考える時代への転換点にいる
