クリスマスの収録で研修生が選んだテーマは「子宮脱」
今回の収録日は12月25日、クリスマス当日。研修生も参加して、勉強しながら配信するスタイルです。
川上さんが「今日は何を勉強したい?」と聞くと、研修生から返ってきた答えは意外なものでした。
子宮脱です。
いやいやいや、クリスマスだぜ。本当にびっくりしとるぞ、視聴者の皆さん。
研修生いわく、結婚や出産をしたことのない自分の世代にとって、そもそも「子宮脱って何?」という状態。だからこそ聞いてみたかったそうです。
川上さんによると、乳牛が多い牧場でも見たことがない人はいるくらい、実はレアなケースなんだとか。
「子宮って外に出て大丈夫?」風船でイメージする子宮脱
まず川上さんは、子宮を「風船」に例えて説明します。風船の中に赤ちゃんがいるイメージです。
赤ちゃんが分娩で出てくる時に陣痛があって、いきむでしょ。いきむと、その風船がひっくり返って出てくる。
原因はさまざまで、筋力の低下や、子牛が大きく硬くて子宮を傷つけてしまった場合などがあると言います。ちゃんと飼っていても起こることがあるそうです。
大丈夫ではないので、見かけたら衛生的にきれいにして戻してあげます。風船がひっくり返った状態を、物理的に元へ戻すイメージです。
研修生は「臓器って体の中にあるのに、外に出てくるのが意味わからない」と、なかなかイメージがつかめない様子。
イメージでは、臓器って体の中にあるじゃないですか。その子宮が外に出てくるっていうのが意味がわからなくて。ちぎれてるの?って感じなんですよ。
違う違う。ちぎれてなくて、ひっくり返っちゃう。脱腸って知らない?腸がひっくり返って出てくる、あれと一緒。
砂糖をかけて戻す?現場での処置のしかた
では、実際にどう戻すのか。川上さんが語る手順は、酪農現場ならではのものでした。
まずはうんちなどが付かないように水できれいに洗い、洗えない場所なら大きなビニール袋をかけてゴミが付かないようにします。
そして意外だったのが「砂糖」の存在。塩ではなく砂糖をたっぷりかけるのだそうです。
塩じゃなくて砂糖。
塩は痛いので、砂糖をかける。浸透圧で水分が抜けるので、砂糖をめっちゃかける。
鬱血して膨らんだ子宮を、砂糖の浸透圧で水分を抜いて小さくするというわけです。その後、一升瓶やバットなどを使い、ちぎれないよう奥へギュッと押し戻します。
似ているけど別物、「子宮捻転」との違い
話の流れで出てきたのが「子宮捻転」。名前は似ていますが、こちらは別の症状です。
風船の口を吹くところがねじれてしまうイメージで、赤ちゃんがいくら陣痛で出ようとしても出てこなくなる状態だと言います。
牛が歩いたり、寝るときにドスンと体勢を変えたりしたときに起こるそうです。
いいえ、人の手でひっくり返します。子宮を片手で握っておいて、大人2〜3人で足を持ってポンとひっくり返したり、重機を使ったりします。
一方の子宮脱は、川上さんが十何年就農してきて一度しか経験がないほどレア。今回まさにクリスマスに遭遇したというタイミングでした。
今まで十何年就農してて、一回しかない、子宮脱を経験したの。レアレアなやつを質問してるっていう。
見つけたときは、あと産(胎盤)が出ているのかと思いがちですが、色が全然違うそうです。鮮血で赤く、処置が遅れるとどす黒い紫のように鬱血してしまいます。だからこそ、なるべく早く戻すことが大切だと話します。
4〜5ヶ月でも見分けられない、妊娠の見きわめ
子宮脱から話は移り、研修生から素朴な疑問が飛び出します。研修に来て4〜5ヶ月経っても、妊娠している牛とそうでない牛のお腹の大きさの見分けがつかない、というのです。
こいつが出産・妊娠してるのか、産んだばっかりなのかがわからない。こいつのお腹に赤ちゃんいるなっていうのが、わかりますか?
川上さんによると、牛の左側には胃袋があり、赤ちゃんは胃袋に押されて右の後ろ側にいるイメージ。後ろ足の付け根の少し上あたりを見ると、だいたいわかるそうです。
とはいえ、個体差も月齢による違いも大きく、最後は経験がものを言う世界。他の牧場に行って頭の形や体のフレームを見れば、何ヶ月齢かわかるようになってくると言います。
4ヶ月じゃわかんないよね。牛を見る頭数が、やっぱり経験になるかなと思う。
SNSで酪農情報に触れる時代の、情報との付き合い方
研修生がそもそも子宮脱を知ったきっかけは、牧場のYouTube動画。しかも「子宮脱したので戻します」という内容を、ハッピーな曲をかけながら流していたそうです。
子宮脱してるところじゃなくて、子宮脱したので戻しますみたいな動画でした。でも結構ハッピーな曲かけながら。
川上さんは、最近はTikTokを始めて、酪農系の配信者にもそれぞれ固定ファンがついていることに驚いたと言います。中には変わったことを言っている人もいるのだとか。
普段の生活では触れない知識に出会えるのはSNSの良さ。ただ、何事も取捨選択が必要だと二人は話します。
ここで得られる情報はあるから、本来普通に生きてて触れない知識もある。それはいいと思うけど、何事も取捨選択していかないとね。
そのうえで研修生は、リスナーに向けて大事な一言を添えます。ネットで聞いた話が正しいかどうかは、川上さんにちゃんと確認してほしい、と。
僕も正しいかわからないけど、調べるし勉強もする。でも酪農家っていう肩書きがあるだけで、なんか知ってそうってなってるんだよね。ちょっとやべえと思ってます。
まとめ
クリスマスの収録で飛び出した「子宮脱」という難しいテーマを、風船のたとえや現場の処置まで、研修生の素朴な疑問に答えながら解きほぐした回でした。牛の体のふしぎと、酪農の奥深さが伝わってきますね。
- 子宮脱は子宮が裏返って外に出る状態で、見つけたらきれいにして早めに戻すことが大切
- 現場では砂糖の浸透圧で腫れを抑え、器具でちぎれないよう押し戻す
- 名前が似た「子宮捻転」は子宮の口がねじれる別の症状で、人の手や重機で戻す
- 妊娠の見分けや月齢の判断は個体差が大きく、最後は見た頭数=経験がものを言う
- SNSは知識に出会える一方で、情報は取捨選択し、確かな相手に確認する姿勢が大事
