リスナーから届いた「冷凍牛乳」の疑問
今回の配信は、リスナーさんから届いた素朴な質問がテーマです。
牛乳を長期保存するために、脱脂粉乳やバター、チーズにする方法はよく知られています。
では、なぜ冷凍の牛乳は市販で売られていないのか。この疑問に酪農家目線で答えていきます。
牛乳は脱脂粉乳にはできるのに、冷凍は難しいのでしょうか。売れない、あるいは解凍が難しいのでしょうか。水分があると扱いが難しいのかもしれませんね。
川上さんは、この質問を「素晴らしい素朴な疑問」と受け止めます。
素朴な疑問、こういうのが本当にありがたいです。今日はなぜ牛乳は脱脂粉乳にはなるのに、冷凍牛乳は一般化しないのか、酪農家目線でお話ししていこうかなと思います。
結論、牛乳は冷凍「できる」
まず結論から。牛乳は冷凍すること自体はできます。家庭でも可能です。
たとえば余った牛乳を製氷機で凍らせて、シチューやスープに使う方法があります。
これから夏に向けては、凍らせた牛乳をアイスコーヒーに入れる飲み方もおすすめだと話されています。
氷だとこう薄くなっちゃうじゃないですか。ですけど、牛乳を凍らせたものでアイスコーヒーを作ると、アイスカフェラテみたいな感じになって、氷の牛乳が溶けていけばいくほど、ちょっと味が変わっていくみたいな、そんな美味しい飲み方があります。
ただし、冷凍すると品質が変わりやすい。ここが最大の壁になります。
なぜ冷凍で品質が落ちるのか
牛乳は実は、ただの白い水ではありません。
約87パーセントが水分で、残りに乳脂肪やタンパク質、乳糖やミネラルが絶妙なバランスで混ざっています。
川上さんは、これを白いスープのように具のない繊細な液体としてイメージしてほしいと話します。
これを普通に凍らせると、脂肪分と水分が分離しやすくなります。
解凍すると舌触りが変わり、ざらついたり風味が落ちたりします。
つまり牛乳は凍りますが、美味しい牛乳のまま戻すのがとても難しいのです。
普通に冷凍
大きな氷ができる
脂肪と水分が分離
バランスが崩れる
解凍
舌触りや風味が変わる
脱脂粉乳は「冷凍」とは考え方が違う
では、粉ミルクや脱脂粉乳はなぜできるのか。これは冷凍とは考え方が違います。
脱脂粉乳は、牛乳の水分を飛ばす加工です。水分を蒸発させることで微生物が増えにくくなり、保存性が一気に上がります。
粉にしてしまえば軽く、運びやすく、長く保管できます。物流にとても強いのです。
そのため冬の間に脱脂粉乳にして長期保存し、消費が伸びる夏場に加工して乳飲料などに変えることができます。
コロナ禍で学校給食が止まったときにも、脱脂粉乳やバターへの加工が増えました。
ただし、すべてを脱脂粉乳にすればよいわけではありません。工場の処理能力や設備、そして需要がそろって初めて成り立ちます。
水分を含んだまま凍らせる。解凍で品質が崩れやすい
水分を飛ばして粉にする。軽く運びやすく長期保存に強い
進化する冷凍牛乳の技術
実は最近、冷凍牛乳の技術も進歩しています。
北海道では急速冷凍技術を使い、解凍後もできるだけ品質を維持する冷凍牛乳に挑戦する牧場も出てきています。
普通の冷凍だと大きな氷ができて品質が崩れやすいですが、超高速で凍らせると細かい氷になり、品質変化を減らせるという技術です。
これは魚の冷凍技術などにも活用されている方法だと紹介されています。
つまり冷凍牛乳は不可能ではなく、技術とコストの壁があるという話です。
酪農は「水分を運ぶ産業」
最後に、リスナーのコルトマルテさんが書いた「水分があると扱いが難しいのかもしれません」という一文。川上さんはこれをまさに核心だと言います。
牛乳は約9割が水なので、冷蔵が必要で、輸送コストが重く、保存も難しいのです。
そのため人類は歴史の中で、脱脂粉乳やバター、チーズ、ヨーグルトなど、牛乳をどう保存するかを考え続けてきました。
冷凍牛乳も、その長い挑戦の続きなのかもしれません。
未来の牛乳の形
冷凍技術は海外への販売にもつながる可能性があります。実際にシンガポールへ空輸して飲んでもらう試みもあると話されています。
さらに、飴のように一口で食べられる牛乳も未来の食品として作られているそうです。薄いフィルムに包まれ、パクッと食べるだけでカルシウムや栄養が取れるものだと紹介されています。
水風船をパクッと食べるような感じで牛乳が飲めるみたいな、そんなのがあったりしますんで。
暑い地域など、水分を持ち歩きにくい環境でも役立つ可能性があり、食の豊かさが変わっていくかもしれないと語られています。
まとめ
牛乳が冷凍で市販されないのは「できないから」ではなく、解凍時の品質変化という壁があるからです。脱脂粉乳は水分を飛ばす別の発想で保存性を高めており、急速冷凍などの新技術も進んでいます。酪農が「水分を運ぶ産業」である以上、保存の工夫はこれからも続いていきそうです。
- 牛乳は冷凍できるが、脂肪と水分が分離して美味しく戻すのが難しい
- 脱脂粉乳は冷凍ではなく、水分を飛ばして保存性を高める加工
- 北海道では急速冷凍で品質を保つ冷凍牛乳への挑戦が進んでいる
- 冷凍牛乳は不可能ではなく、技術とコストの壁がある
- 酪農は水分を運ぶ産業であり、保存の工夫は人類の長い挑戦の続き
