今日の質問「子牛はどこから微生物を入れているの?」
今回の配信は、リスナーからの質問に答えるお便りコーナーが中心です。
質問はTikTokから届きました。TikTokネームのカーボーイさんからで、初めての質問だそうです。
ホルスタインの子牛は成長するにあたって、どうやって微生物をお腹に入れているんですか?
牛の胃袋が四つあることは、この番組でも何度も紹介されてきました。
子牛のときは、人間の胃と同じように胃酸を出して消化する四番目の胃が主に働いています。
では、草を分解するための微生物は、いつどこから子牛のお腹に入ってくるのでしょうか。
生まれたばかりの子牛はミルクしか飲めない
まず前提として、子牛は生まれた時、成牛のような立派な胃を持っていません。
牛は第一胃から第四胃まで四つの胃を持ちますが、生まれたばかりの子牛が飲めるのはミルクだけです。
そのため実際に働いているのは第四胃で、第一胃であるルーメンはほとんど機能していないと話されています。
この状態は、人間の赤ちゃんに近いと言えます。
つまり子牛は、最初から草を消化できるわけではないのです。
微生物はどこからやってくるのか
では肝心の微生物はどこから来るのか。川上さんは、実は完全には解明されていないと前置きします。
微生物はどこから来るのでしょうか。実は完全には解明されていません。
現在わかっていることとして、まず出産時の接触が挙げられます。
生まれた子牛を母牛が舐めますが、頭や口を舐めるその接触のときに、微生物が体内に入ってくると考えられています。
さらに、牛舎の環境も関係します。牛が休んで呼吸するときに入ってくる微生物や、ベッドに敷いたおがくずなどの敷料、水や餌からも少しずつ取り込まれていきます。
こうして取り込まれた微生物が、第一胃に定着していくと考えられています。
餌がカギ、固形飼料でルーメンが育つ
なかでも特に大きいのが餌だと、川上さんは強調します。
子牛は生後まもなく、スターターと呼ばれる固形の飼料を少しずつ食べ始めます。
この固形飼料を食べることで、ルーメンの発達が進んでいくのです。
面白いのは、ルーメンの内側にある絨毛が、子牛の成長とともに伸びていく点です。
そして周囲の環境から取り込んだ微生物が、発達したルーメンの中で増えていきます。
放牧された自然界では、もっとわかりやすいと言います。子牛は母牛の口の周りを舐めたり、一緒に草を食べたり、糞便に触れたりしながら微生物を取り込んでいきます。
人間から見ると少し驚くかもしれませんが、牛にとっては普通のことなんですよね。
牛は草ではなく「微生物」を育てて生きている
ここで川上さんは、牛の本質に踏み込みます。
牛が草を消化しているのではなく、ルーメンの微生物が草を消化しています。牛は巨大な発酵タンクを体の中に持っているような動物なんです。
例えば人間は、セルロースという植物繊維をほとんど利用できません。
しかし牛は利用できます。ルーメンの中の細菌や原虫などの微生物が草を分解し、その発酵産物を牛がエネルギーにしているからです。
つまり牛は、草を食べているようで、実は微生物を育てながら生きている動物とも言えます。
だから酪農家は、牛だけを管理しているわけではありません。この業界には「牛飼いは虫飼い」という有名な言葉があるそうです。
餌が変われば微生物も変わり、季節が変われば微生物も変わり、暑くなれば微生物の働きも変わります。
酪農は牛を飼う仕事でありながら、微生物を育てる仕事でもあるのです。
セルロースをほとんど利用できない
ルーメンの微生物が分解し、発酵産物をエネルギーにできる
腸内細菌から広がる酪農のロマン
川上さんは、この胃袋の話にはまだ解明されていない部分が多く、それがロマンだと話します。
こんだけ科学の進歩があって、こんだけいろんなことがわかってるのにまだわからないというのが、これがロマンなんです。
近年は人間でも、腸内細菌が免疫や活動、うつなどの精神的なものに影響しているとわかってきています。
牛も同じで、どういう環境でどんな細菌が増えれば健康になり乳量が増えるのかを調べ、牛舎に合った微生物を提供する会社もあるそうです。
さらにエピジェネティクスという研究も紹介されました。同じ血統の牛でも、飼う地域によって能力が違うことがあると言います。
これは遺伝の能力だけでなく、お腹の微生物などの環境要因も関係していると考えられているそうです。
川上牧場でも、こうした発想を取り入れているそうです。ユーグレナの子会社から出る食品残渣を活用したり、餌に麹菌を入れる取り組みをしていると話されています。
麹菌を牛舎環境に広げることで、悪玉菌を抑えられるのではないかという考え方です。
キリがないんで、ここで終わりましょうか。また質問があったらまたお答えしていこうかなと思います。
まとめ
今回は「子牛はどうやって微生物をお腹に入れるのか」という質問から、牛が微生物と協力して生きる動物であることが語られました。牛乳を見る目が少し変わる回です。
- 子牛は生まれた時、第一胃であるルーメンが未発達で、ミルクを消化する第四胃が主に働いている
- 微生物は母牛との接触、牛舎環境、飼料、水、餌などから自然に取り込まれる
- 固形飼料を食べ始めることでルーメンが発達し、微生物が増えて牛らしい消化ができるようになる
- 牛は草を食べているようで、実はお腹の微生物を育てながら生きている「発酵タンク」のような動物
- 腸内細菌や遺伝と環境の相互作用など、牛の消化にはまだ未解明のロマンが残されている
