餌の値上げと牛乳月間の呼びかけ
配信は日曜恒例の「まったりゆったりコメント返し」です。今週はYouTubeの不具合で音声配信がアップされなかった回もあったと話されています。
冒頭では、来月から牛の配合飼料の値段が上がる見通しにも触れられました。
来月から餌の値段が3700円、多分ここら辺は4000円ぐらい上がるんじゃないかって思います。でもうまい。今日も牛乳飲んでいただいてありがとうございます。
配合飼料の値段は四半期ごとに決まります。ホルムズ海峡や原油価格の影響で大きく上がる懸念があったなか、4000円で抑えられたのはまだありがたいほうだと話されています。
川上牧場では1週間に約4トンの飼料を使うため、値上げがそのまま経費増につながります。だからこそ「本当に牛乳飲んでください」と繰り返し呼びかけていました。
リスナー同士でつながる「おいしい牛乳」の思い出
最初のコメントは、YouTubeの「かんしんさん」から。妙高高原の笹ヶ峰牧場で牛をたくさん見たという内容です。
もともとは常連リスナーの「メイプルさん」が、学生時代の合宿で笹ヶ峰の牛乳を飲み、一番うまかったと語ったことがきっかけでした。
島根に住む川上さんにとって、東日本の酪農の様子はなかなか知る機会がありません。リスナー同士が「この牛乳がおいしい」と伝え合う流れを、うれしそうに受け止めていました。
北海道は悪者なのか。牛乳の需給という視点
メイプルさんの牧場は育成を委託し、市場で初産牛を買うこともあるといいます。そのうえで「島根の牧場は北海道の悪口を言っているのか」という問いが寄せられました。
島根の牧場さんたちは北海道の悪口を言っているんですか?
川上さんは、牛乳の需給を語ると北海道の話が避けられない背景を説明します。生産の半分は北海道が担い、都府県が減るなかで北海道は生産を伸ばしています。
そのため「北海道が増やすから余る」といった見方が都府県側に出やすいと話されています。ただ、酪農家同士は顔を合わせる機会が少なく、それが誤解を生むのだといいます。
北海道を悪者にしていても、どうにも解決されませんので。北海道が伸ばしていただいてる分、生産が安定してる部分も絶対ありますんで、対立しても意味はない。
むしろ北海道に生産を伸ばし、海外で戦っていってほしいという立場でした。
ミルクケーキとご当地の乳製品
アンケートの一言メッセージでは、匿名リスナーから「ミルクケーキを食べてみて」という声が届きました。
名前から牛乳のしっとりしたお菓子を想像しがちですが、実際はサクサクした地元の銘菓だそうです。
Amazonでも買えるとのことで、川上さんは「食べたら食レポしたい」と楽しみにしていました。ご当地の乳製品情報も引き続き募集しています。
増産から減産へ。コロナ禍の判断は誰がしたのか
ここから話題は重くなります。Xに寄せられたのは、増産を勧めた国が一転して減産を進め、牛の処分に補助金を出したという趣旨のコメントでした。
僕が見てきた中で一番つらかったのは、国が増産を勧めてきた中で、新型コロナをきっかけに一転して減産を進め、牛を処分したら補助金を出し、酪農家は泣く泣く処分をした。牛乳の廃棄も大量に出たろ。
川上さんは共感を示しつつ、事実認識のずれを丁寧に訂正します。
増産はコロナ前の話で、生乳780万トンを目指す方針のもと、国の半額補助のクラスター事業複数の酪農家などが連携し、施設整備や増頭を進める際に国が費用を補助する事業。生乳の増産を後押しする目的で活用されました。で規模を拡大したといいます。
そのうえで、減産を判断したのは国ではなく酪農家自身だと強調しました。国は、酪農家が減産の努力をするのを支援する形で補助金を出したという流れです。
牛乳の廃棄についても訂正がありました。指定団体の生乳は一滴も捨てず、脱脂粉乳やバターなどに加工して乗り切ったと話されています。
捨てていたのは指定団体に所属しないアウトサイダーで、独自に六次産業化して自社販売していた農家だといいます。
それでも、牛乳を捨てたり牛を減産したりするときの農家の気持ちは、いたたまれないものだと語っていました。
妊婦と牛乳。「体にいい」だけではない話
TikTokの「ようこさん」からは、妊娠中に酪農牛乳が赤ちゃんにいいと知り、毎日飲んでいるという声が届きました。
川上さんは飲んでもらえることに感謝しつつ、ここでも一面的にならないよう補足します。
妊婦が牛乳を飲むと乳腺炎になりやすいという指摘があること、飲みすぎればコレステロールや脂肪でバランスが崩れることを挙げました。
食物アレルギーについても「なりにくい」という意見だけでなく、母親が飲みすぎると赤ちゃんが過剰反応を起こしやすいという見方もあると伝えました。
これも人それぞれなんで本当に言いにくいですけど、そういうのもありますっていうのをお知らせして、でも引き続きお子さんと一緒に牛乳、乳製品を楽しく美味しく飲んでいただけると嬉しいです。
と畜、動物福祉、そして日本と海外の違い
この回の核心は、noteに寄せられた「ユキさん」からの長文コメントです。命を預かる大変さは伝わるが、死ぬときの苦しみや恐怖を和らげる方法に触れていない、という問いでした。
現実から目をそらさないというスタンスで書かれているのに、死ぬ時の苦しみや恐怖、それを和らげる方法を模索してきたのか、触れられていません。日本にそこまで配慮した屠殺場があるとは思えません。
ユキさんはヨーロッパで育った肉は食べられるが、日本の肉は食べられないと書いています。イギリスでは鹿を苦痛なく一発で仕留めることが法律で定められている、という具体例も挙げられていました。
川上さんはまず、ペットとして犬を飼うユキさんに向けて、経済動物食肉や乳、卵などを得るために飼育される家畜のこと。ペットとして愛情を注ぐ愛玩動物とは、飼育の目的も社会的な位置づけも異なります。と愛玩動物の違いを知ってほしいと話します。
アニマルウェルフェアの国際的なルールはヨーロッパが作ったもので、日本はそれに横並びで合わせている面があるとも指摘しました。
さらに歴史の違いにも踏み込みます。ヨーロッパは縄文よりずっと前から肉食文化があり、消費者の意識も長い時間をかけて育まれてきました。
一方、日本で肉食文化が広がったのは明治以降。牛鍋などが登場してからで、歴史そのものが浅いといいます。
肉食の歴史が非常に長く、隣国からの脅威で自国調達が必要だった背景がある
肉食は明治以降に広がり歴史が浅い。四季と海に囲まれ外的圧力が少なかった
そのうえで、最も伝えたかったのは酪農が分業制であることでした。川上さんは牛を育てて牛乳を搾る仕事を担い、と畜して肉にするのは別の担い手だといいます。
僕は車を作る会社なんですよね。その車を乗せてお客さんを運ぶのはまた別の会社で。タクシーの料金高いよ、全然来ないよって僕に言われても、ちょっと待ってくださいよっていう構図になってる。
それでも川上さんは、質問を投げ捨てませんでした。改めてリサーチし、noteやメンバーシップの記事、音声配信で今週中に答えていくと約束しています。
まとめ
餌の値上げから始まり、需給の誤解、妊婦と牛乳、そしてと畜と動物福祉まで、酪農家として一つずつ誤解をほどいていく回でした。共感を示しながらも事実は事実として訂正する姿勢が印象的です。
- 配合飼料の値上げは経費増に直結し、川上さんは繰り返し牛乳を飲んでほしいと呼びかけている
- コロナ禍の減産を判断したのは国ではなく酪農家自身で、国はその支援として補助金を出した
- 指定団体の生乳は捨てず加工で乗り切り、廃棄は所属しないアウトサイダーの一部だった
- 牛乳は体にいい一面だけでなく、飲みすぎや妊婦への影響など別の見方もあると丁寧に補足された
- 酪農は分業制で、川上さんは牛を育て搾る立場。と畜は別の担い手が担うという構図が語られた
