乳牛はお散歩させるの?という質問
今日のお便りは、Instagramのお豆腐さんから届いた質問です。
乳牛の牛さんは定期的にお散歩させてあげたりするんですか?牛さんのお散歩を見たことないなと思ってたんですが、ずっとお家にいるんですね。
犬や馬を運動させるイメージから、牛も散歩しないとストレスが溜まるのでは、と思う人は多いかもしれません。
これに対して川上さんは、日本で飼われている乳牛の多くには「お散歩」という概念はあまりない、と話します。ただし、だからかわいそうという話ではないと続けます。
結論から言うと、日本の酪農で飼われている乳牛の多くは、お散歩という概念はあまりありません。ただし、だからかわいそうという話では実はないんです。
そもそも牛はなぜ歩いていたのか
まず、牛という動物の成り立ちを考えてみます。
牛はもともと草食動物で、野生の時代は草を求めて移動していました。つまり歩くことが好きというより、餌を探すために歩いていた動物だと言います。
一方で、現代の酪農では、牛舎の中に餌も水も寝床も仲間もそろっています。牛からすると、わざわざ何キロも歩いて草を探しに行く必要がないのです。
人間で例えると、冷蔵庫があって、ベッドもあって、水道もあって、そんな家に住んでいる状態です。
野生の牛
草を求めて移動し、餌を探すために歩いていた
酪農の牛
牛舎の中に餌・水・寝床・仲間がそろっている
結果
わざわざ歩いて草を探す必要がなくなった
たくさん歩くことは牛にとって良いことか
乳牛はかなり大きな体をしています。ホルスタイン日本で最も多く飼われている乳用牛の品種。白と黒のまだら模様が特徴で、乳量が多いことで知られます。の成牛だと、大きいもので体重は八百キロ前後にもなります。
その大きな体でたくさん歩けば、エネルギーを消費し、足にも負担がかかります。蹄がすり減ることもあります。
さらに牛は群れの生き物なので、移動が増えると牛同士の喧嘩やいじめ、怪我のリスクも高まります。特に乳量を多く出す牛は、食べた栄養をできるだけ牛乳に回したいため、無駄な運動が必ずしも良いとは限らないと言います。
そのため酪農家が大事にしているのは、どれだけ歩かせるかよりも、牛がどれだけ快適に生活できるかだと話されています。
酪農家が大事にしているのは、どれだけ歩かせるかよりも、牛がどれだけ快適に生活できるかというのを必要としています。
快適さの中身としては、寝床は柔らかいか、暑すぎず寒すぎないか、新鮮な水が飲めるか、餌は十分か、ストレスなく横になれているか。こうしたことの方が牛の健康や乳量に大きく影響すると言います。
牛舎で暮らす牛と放牧の牛、そして牛の性格
すべての牛が一生牛舎から出ないわけではありません。
牧草地がある牧場では放牧をするところもあり、北海道や海外では日中放牧なども取り入れられています。特にニュージーランド南半球にある国。牧草を主体とした放牧中心の酪農が盛んなことで世界的に知られています。は放牧中心の酪農が有名で、牛たちは毎日歩いて牧草を食べています。
一方、川上牧場のようなつなぎ牛舎牛を一頭ずつ所定の場所につないで飼う飼養方式。牛は基本的に牛舎の中で生活します。では、基本的に牛舎の中で生活します。ただし、乾乳牛を運動場に出したり、足が痛そうな牛を歩ける牛舎に移したりと、牛に合わせた管理をしていると言います。
さらに面白いのは、牛にも性格があるという点です。放牧場があっても外に出ず、寝床でゴロゴロして自分のテリトリーから動かない牛もいるそうです。
休日に山登りしたりキャンプに行ったりアクティブに動く人もいれば、家でNetflixを見ながら好きなお菓子を食べてゴロゴロするのが好きな人もいますよね。牛も結構そんな感じです。
散歩よりも大切なのは「休める環境」
川上さんは、牛は散歩させないと可哀想というより、牛にとって快適な環境があるかどうかが重要だと言います。
その理由の一つが、牛の休む時間です。牛は一日に十時間から十四時間ほど横になって休みます。人間の睡眠とは違い、反芻したり横になって休んだりする時間です。
実は牛乳をたくさん出す牛ほど、しっかり休める環境が大事だと言います。餌場や水飲み場、搾乳室へ歩く時間が長いほど、牛が休める時間は少なくなり、飼養管理はシビアになるからです。
この点から、海外でもつなぎ牛舎は実は生産性が高いのではないかと言われ始めていると話します。アニマルウェルフェアも、牛の快適性がより分かってくれば見直される可能性があるのではないか、というのが川上さんの個人的な見方です。
まとめ
乳牛は犬や馬のように散歩はしませんが、それは運動不足にさせているのではなく、必要な環境を牛舎の中に用意しているためだと川上さんは話します。牛が幸せかどうかは歩いた距離ではなく、快適に食べて飲んで休めているかで決まるのではないか、というのが今回の答えでした。
- 日本の乳牛の多くには「お散歩」という概念はあまりないが、それはかわいそうという話ではない
- 牛はもともと餌を探すために歩いていた動物で、餌も水も寝床もそろう牛舎では歩く必要が少ない
- 大きな体でたくさん歩くと足の負担や牛同士の喧嘩、怪我のリスクが高まる
- 牛にも性格があり、放牧場があっても動かずゴロゴロする牛もいる
- 散歩の有無より、しっかり休めて快適に食べ飲みできる環境づくりが大切
