
ホイクベースラジオコメントを投稿するにはログインが必要です
ログインページへ現役保育園看護師のチロ先生と高校の同級生たちによる保育の情報ラジオ「ホイクベースラジオ」。
今回取り上げるのは、水野太貴さんの『会話の0.2秒を言語学する』。ここで言う0.2秒とは、相手が話し終わってから自分が話し始めるまでにかかる平均時間のこと。世界陸上のウサインボルトと2位の差が0.13秒だったことを引き合いに、私たちはそれに迫るスピードで会話を返していると紹介されます。その0.2秒の間に何が起きているのかを、言語学の視点から解きほぐしていく一冊です。
本書から「語用論」「会話分析」「ジェスチャー」という3つの切り口をピックアップして話しました。「えーと」と「あのー」は無意識に使い分けられていて、前者は伝える内容そのものを考えている時、後者は内容は決まっていて伝え方を迷っている時に出る、という話。出版社の面接で「今会いたい人は?」と聞かれて恩師の名前を答えてしまった著者自身のエピソードや、1952年のイギリスで「Let him have it」という一言の解釈が人の生死を分けた事件など、文脈によって言葉の意味が変わる語用論の例も印象的でした。
保育の現場と重ね合わせると、見えてくるものがたくさんあります。「もうすぐお母さん来るよ」と声をかけると玄関に駆け出してしまう子。おかわりを聞かれてすぐ「いる」と答える子と、少し黙ってから「いる」と答える子の違い。オノマトペが飛び交うおままごとの世界。どれも言語学的に見れば、豊かで高度なコミュニケーションが起きている場面です。
そして本書のもうひとつの大きなメッセージは、会話のテンポが速い人が優秀なわけではない、ということ。沈黙が多い子、映像で思考する子、体で表現するのが得意な子──それぞれの違いを理解する土台として、言語学的な知見が支えになります。子どもの言葉を待つ、表情や身振りから気持ちを汲み取る、言葉にならない思いを組み立てる。保育者が日々あたりまえにやっていることは、言語学の観点から見てもかなり高度なコミュニケーション支援。普段の仕事の裏側にある「すごさ」に光を当ててくれる一冊として、ぜひ手に取ってみてください。
後半は、嫉妬の歴史や意味論、比喩でしか意味は捉えられないのでは?といった話まで脱線が広がった回。「どうでもいいことを深く考える」楽しさも感じていただけたら嬉しいです。
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