いい人はどこに?営業パーソンの最新採用事情
株式会社事業人 共同代表の宇尾野彰大さんと、株式会社Mentor For代表の池原真佐子さんが、ビジネス組織の作り方を語るおいしい組織。配信1周年を迎えた今回は、多くの企業が苦戦している「営業パーソンの採用」をテーマに、採用難易度が高まる背景、外部サービスの活用法、そして本当に求められる人材像まで、実践的な視点で語ります。その内容をまとめます。
営業採用が難しい理由
現在、営業職の採用は多くの企業にとって最重要課題の一つとなっています。特にエンタープライズセールス大企業や大規模組織を対象とした法人営業のこと。数千万円から億単位の商談を担当し、決裁までのプロセスが長く複雑なのが特徴。経営層との折衝力や戦略的な提案力が求められる。ができる人材は市場で枯渇している状態です。
営業のマネージャー職、特にBtoBのエンタープライズセールス、さらに無形商材となると、いやほんとこれ難しいですよね。
各企業がこぞって優秀な営業パーソンを求める中、その職種だけ報酬テーブルを変更したり、成功報酬型の給与体系を導入したりと、条件面での工夫も進んでいます。エンタープライズセールス特化のエージェントも登場し、通常より高い成功報酬を設定するケースも増えています。
しかし、単に人材が少ないだけではありません。宇尾野さんは、営業の再現性の問題を指摘します。過去に別の商材や顧客層で成功した営業パーソンが、新しい環境で必ずしも活躍できるとは限らないのです。
複雑なシステムを売ってきた人が、簡易的なシステムを売る方にシフトすると、途端売れなくなったとかはよく聞きます。
同じ業界・同じ職種であっても、「どんな商材を、誰に、どういうプロセスで売ってきたか」を解像度高く見極めることが重要です。たとえば人事領域でも、新人向け研修を売るのと経営層向けツールを売るのでは、求められるスキルがまったく異なります。SaaS型のツールと無形のコンサル型商材では、営業プロセス自体が違うのです。
採用難を乗り越える外部リソース活用
採用だけで営業力を確保するのが難しい今、外部リソースの活用が注目されています。宇尾野さんは、BtoBマーケット全体をコンサルティングする会社や、商談機会そのものを提供するサービスが増えていると語ります。
たとえば、サービス側がニーズを持つ企業を捕まえてきて、その商談機会に対して複数の企業が「入札」のような形で手を挙げる。条件に合った企業だけがアポイントを調整してもらえ、あとは商談に集中できるという流れです。リード獲得が難しい企業や、類似サービスの中で選ばれることに苦戦している企業にとって、営業プロセスの前半戦を代行してくれるサービスは大きな助けになります。
さらに重要なのが、セールスイネーブルメント営業パーソンが成果を出せるよう、体系的なトレーニング・ツール・プロセス整備を行う取り組み。単なるオンボーディングではなく、「売れるようになる」ための継続的な支援を指す。です。新しく入社した営業パーソンを「適用させる」だけでなく、「売れるようにする」ための投資が活況を呈しています。
セールスのトレーニングをしっかり組み込んでいかないと、商材が違う、お客さんのレイヤーが違う、プロセスが違うとなると、本当に未経験みたいな感じになってしまう。
イネーブルメントサービスを展開する企業は、顧客企業に深く入り込み、商談プロセスを分解し、成功パターンと失敗パターンを明確化します。そして、他のメンバーがそのグッドパターンを再現できるよう、業務プロセスとトレーニングを設計していきます。
宇尾野さんが代表を務める事業人でも、実際に営業同行を行い、社内の営業パーソンのタイプや状況を把握したうえで、半年から一年単位で育成プログラムを設計しています。良くも悪くも営業は経営に直結するため、ここへの投資は今後も盛り上がっていくと見られます。
経営者の営業からの脱却
多くの企業で、創業期は経営者自身が営業の最前線に立ちます。顧客からしても社長から提案を受ける方が決めやすく、スピード感もあります。しかし、会社が成長するにつれ、「経営者の営業からどう脱却するか」が大きな分かれ道になります。
池原さんは、経営者団体EOのメンバーに「いつまで営業をしているか」を聞いたことがあるそうです。その結果、売上50億円や100億円規模になってもトップ営業を続けている経営者が6割ほどいたといいます。経営者が営業し続ける理由は、マーケットの感覚やお客様の期待を直に感じ取れることにあります。
代表の方が営業されることで、今お客様がどういうことを期待してたり、どこが合ってるか合ってないかが一次情報として入ってくる。
ただし、すべての商談に出るわけにはいきません。そこで重要になるのが「切り分け」です。顧客のレイヤー(経営層か部長層か)、案件規模、波及効果(他社への紹介やネットワーク拡大につながるか)などの属性に応じて、「ここまでは代表が行く、ここまでは部長、ここまでは担当者」と役割を明確にすることが求められます。
この切り分けができるかどうかが、営業組織が太くなる(売上が安定的に拡大する)かどうかの分岐点だと宇尾野さんは語ります。
これから伸びる営業パーソンの条件
では、これから伸びる営業パーソンにはどんな条件が求められるのでしょうか。宇尾野さんは二つのポイントを挙げます。
一つ目は、会社や事業への共感です。商材は会社が生み出した成果であり、その背景にある想いやビジョンへの共感がなければ、「どの会社でもいい」という状態になってしまいます。会社に対する強い共感を持つ人こそ、営業として育ちやすいのです。
二つ目は、ソリューション営業の思考です。単に商品を売るのではなく、顧客の課題を一緒に解決する姿勢を持つこと。そのためには問題解決能力や論理的思考が求められます。
問題解決をするっていう千本ノックを前職でやっていた、それが仕事になってた人は強いですね。
そしてもう一つ、重要なのが「売り切る」というスキルとマインドセットです。数字への執着を嫌う人は多いですが、設定した目標に一秒でも執着し、諦めずにやりきる姿勢は営業には不可欠だと池原さんは語ります。
長期的な視点で見ると、営業職の採用難はますます厳しくなると予想されます。だからこそ、ポテンシャル人材を採用して育成する、外部メンバーと一緒に仕事をして技を盗ませる、といった長期投資の視点が重要になるのです。
まとめ
最後に、宇尾野さんは営業パーソンの採用・育成を一言でまとめます。
自分の会社のファンを増やせるかどうかに尽きます。ファンが増えれば、どうやったらこの大事な商品をいろんな人に届けられるかという動きにつながっていく。
営業職の採用は、スキルや経験だけでなく、「どうやったら自分の会社を好きになってもらえるか」という視点で社員と向き合うことから始まります。社員が会社のファンになれば、自然と売れる環境が整っていくのです。
- エンタープライズセールス人材は市場で枯渇しており、採用難易度が非常に高い
- 外部リソース(リード獲得代行、セールスイネーブルメント)の活用が有効
- 経営者の営業を段階的に切り分け、組織として営業力を太くすることが重要
- これから伸びる営業パーソンの条件は「会社への共感」「問題解決思考」「売り切る執念」
- 社員を自社のファンにすることが、営業力強化の本質
