経営者の参謀、どう見つける?信頼できる右腕の探し方と育て方
株式会社事業人共同代表の宇尾野彰大さんと、株式会社Mentor For代表の池原真佐子さんが、おいしい組織第43回で「経営者の参謀の見つけ方」をテーマに語りました。経営者の多くが抱える「頼れる右腕が欲しい」という悩み。ビジョンを実現するための道筋をつくる参謀は、経営の超重要機能です。外部から採用すべきか、社内登用すべきか、参謀に求められる資質とは何か――その内容をまとめます。
参謀は経営の超重要機能
「経営者の参謀の見つけ方」――このテーマは、経営者や起業家から寄せられる相談のベストスリーに入る悩みだと池原さんは指摘します。創業者や社長が大きなビジョンを掲げても、それを具体的な戦略に落とし込み、組織に浸透させていくには、参謀経営者をサポートし、ビジョンを実現するための道筋をつくる役割。ナンバーツー、右腕、黒子などとも呼ばれる。の存在が欠かせません。
宇尾野さんは、参謀を「ビジョンを実現するための道筋をつくる人」と定義します。経営者が「ほら吹きのように大きなことをバーンと言う」のに対し、「じゃあそれ具体的にどうするの?」という問いに答え、実行可能な計画に落とし込むのが参謀の仕事です。歴史的大企業からスタートアップまで、目立つキーパーソンの裏には必ず優秀な参謀がいると、宇尾野さんは強調します。
過去古今東西、優れた経営者や優れたアスリート、政治家、芸術家には必ずメンター的な人がいるっていう研究があるんです。参謀もまさにそういう存在ですよね。
プロの参謀はどこにいる?外部採用のポイント
では、参謀はどこで見つければよいのでしょうか。宇尾野さんが最初に挙げるのは、経営経験者からの採用です。どこかの会社で経営を経験し、CEOの動き方や悩みを理解している人、あるいは世襲企業で会長に仕えてきた社長など、「ナンバーツー的な動きをしてきた人」は意外に多いといいます。
具体的な探し方として、宇尾野さんは次の方法を提案します。
池原さんは「参謀を見つけるときには、自分の事業への興味や人間的な相性を確かめるために、まずは食事などでゆっくり話すのがいい」とアドバイスします。また、プロのエージェントを挟むことで、自分では気づかなかった角度からマッチングしてもらえる可能性もあると指摘しました。
社内登用という選択肢
外部採用だけでなく、社内からの登用も有力な選択肢です。宇尾野さんは「会社の文化、歴史、人間関係、暗黙知を理解していることも参謀には必要」と説明します。参謀はプロジェクトマネジメントだけでなく、社長の在り方ややり方をサポートし、ブースターとして機能する役割も担うため、社内の文脈を深く理解している人が適任な場合もあるのです。
社長の補完機能としてだけでなく、社長の在り方やり方をサポートする、ブースターとしての機能も必要。社内で育てることが大事な要素もあります。
池原さんは「参謀に求める役割は多岐にわたる」と指摘します。ビジョンを戦略に落とし込む能力、壁打ち相手としての相談役、財務やファイナンスの知識――すべてを一人に求めるのは難しいかもしれません。そのため、参謀機能を複数人で分担する「参謀チーム」という発想も有効だといいます。
参謀に求められる資質とは
では、参謀にはどのようなスキルや資質が求められるのでしょうか。宇尾野さんは、まずどっしり構えて俯瞰できる力を挙げます。
経営者は外向的でオープンな人が多い一方、精神的に不安定になりやすい傾向もあるといいます。そんなとき、参謀は動揺せず冷静に状況を俯瞰し、的確な提案をする必要があります。また、社長が気になっていることを先回りしてサポートしたり、最悪の場合「社長が一週間寝込んでも自分が代わりにやれる」くらいの情報量と気概を持つことも重要だと宇尾野さんは語ります。
池原さんは「社長は変わった人や極端な人が多い中で、おおらかさや人としての成熟度が参謀には必要」と共感します。単なるスキルではなく、人間力が問われる役割だといえるでしょう。
「刺されない」信頼関係の築き方
参謀選びで最も重要なのは、信頼関係です。宇尾野さんは「背中を向けても刺されないか」という言葉で、参謀との関係性の本質を表現しました。
参謀は経営者と背中合わせで動くポジションです。後ろを向いたときに陰口を言われたり、攻撃されたりすると、経営者は安心して任せられません。池原さんも「参謀に刺されたという経営者を何人か聞いたことがある」と語り、その深刻さを指摘します。経営がひっくり返るほどの事態にもなりかねないため、参謀選びは慎重であるべきです。
社外取締役とも違う、本当に一蓮托生できるかっていう距離感の人にならないと、お互いが補完し合えないんです。
では、どうやって「一蓮托生感」を確かめればよいのでしょうか。宇尾野さんは「同じ釜の飯を食う」という表現で、接触時間を増やし、非日常の側面を見ることを勧めます。公式な会議だけでなく、プライベートを含めた時間を共有し、相手の価値観や考え方、非常事態での対応を知ることが重要です。可能であれば家族と接点を持つなど、内面を知る人とのつながりを持つことも有効だといいます。
池原さんは「過去の職場で一緒に働いた人や、大学の部活で苦楽を共にした人を一年かけて口説いた」という事例を紹介し、信頼関係の土台がすでにある人を引っ張ってくることの有効性を指摘しました。
参謀チームという発想
参謀に求められる役割は多岐にわたります。ビジョンを戦略に落とし込む力、壁打ち相手としての相談力、ファイナンスの知識――すべてを一人に求めるのは現実的ではありません。そこで宇尾野さんと池原さんが提案するのが、参謀チームという発想です。
池原さん自身も「チーム参謀」の経験を持ちます。あるプログラムに参加した際、経営チームに異なる専門分野のプロ参謀を5人セットアップしてもらい、月に一度ミーティングを重ねたといいます。「ドリームチーム」のような構成で、多角的な視点からアドバイスを受けられたそうです。
経営ビジョンを具体的なアクションプランに変換し、組織に浸透させる役割。
資金調達、予算管理、財務戦略を担当。CFO的な役割。
採用、育成、評価制度など、組織づくり全般をサポート。
経営者の孤独を癒し、客観的な意見を提供するメンター的存在。
宇尾野さんも「参謀チーム的に、このテーマはこの人に相談する」という使い分けをしていると明かします。一人で全機能を担おうとせず、複数人で分担することで、より現実的で持続可能な参謀体制が築けるのです。
サクセッションと参謀の処遇
最後に、宇尾野さんが触れたのがサクセッション後継者育成・世代交代のプロセス。経営トップが計画的に次世代リーダーに権限を移譲すること。時の参謀の処遇です。創業者が二代目社長に引き継ぐとき、創業者の参謀はどうなるのか――この問題は意外に難しいといいます。
二代目社長がその参謀を引き続き起用するケースもあれば、先代とともに退く場合もあります。また、参謀自身が「新体制では遠慮したい」と辞退することもあるそうです。宇尾野さんは「サクセッションを進めるなら、なるべく早めに参謀にも成果を共有し、新社長をサポートしてもらう引き継ぎをしていくのが理想」と提案します。
池原さんは「先代の番頭さんみたいな立場は難しいですよね」と共感し、参謀を長い目で育て、後継者とともに引き継いでいく視点の大切さを指摘しました。
まとめ
経営者の参謀は、ビジョンを実現するための道筋をつくる、経営の超重要機能です。外部から経験者を採用する、社内から登用する、参謀チームとして複数人で機能を分担する――選択肢は多岐にわたります。
最も大切なのは「背中を向けても刺されない」信頼関係です。プライベートを含めた接触時間を増やし、相手の内面や価値観を深く知ることが、一蓮托生の関係を築く鍵となります。
池原さんが最後に語ったように、「いい参謀を見つけるのを諦めない」こと。アンテナを張り続け、いろんな人と会い、信頼できる右腕との出会いを探し続けることが、経営者にとっての永遠の課題であり、組織を強くするための第一歩なのです。
- 参謀は、経営者のビジョンを具体的な戦略に落とし込み、実現への道筋をつくる超重要な経営機能
- 外部採用なら、経営経験者やナンバーツー経験者をエージェント経由で探すのが有効
- 社内登用も選択肢。会社の文化や暗黙知を理解している人が適任な場合もある
- 参謀に求められるのは、どっしり構えた安定感、俯瞰力、先回りサポート、人としての成熟度
- 「背中を向けても刺されない」信頼関係が最重要。プライベートを含めた接触時間で内面を知る
- 参謀機能を複数人で分担する「参謀チーム」という発想も現実的
- サクセッション時には、先代の参謀をどう処遇するかも重要な課題
- いい参謀を見つけるのを諦めず、アンテナを張り続けることが経営者の永遠のテーマ
