社員が動かない本当の理由|自己管理に頼らない仕組み化
『経営者のためのヤバい仕組み化』の著者・松田幸之助さんが、社員の自己管理に悩む経営者に向けて、仕組みで解決する方法を解説します。「意志の力」に頼らず、構造で行動を促す実践的なアプローチをお届けします。その内容をまとめます。
自己管理を求める会社が失敗する理由
「営業担当はサボっているのでは?」「テレワーク中の社員は本当に働いているのか?」──こうした不安は、多くの経営者が抱える悩みです。しかし、社員に自己管理を求めるアプローチは、ほとんどの場合うまくいきません。
なぜなら、セルフマネジメント自分で自分の行動や時間、感情を管理する能力。ビジネスでは目標達成のために自律的に行動する力を指す。できる人は、実際にはごくわずかだからです。松田さんは「社員がサボってしまうのは、社員が悪いのではなく、仕組みという構造が悪い」と指摘します。
「なぜ自分で考えて動けないのか」「確認しないと動けない」──こうした不満は、実は仕組みの不在を示すサインかもしれません。意識の低さを責める前に、自己管理を支える構造を整えることが、問題解決への最短ルートです。
意志の力は弱い──ダイエットで考える仕組みの本質
夏が近づくと「海に行くために痩せたい」と思う人は多いでしょう。運動と食事管理をすれば、理屈の上ではダイエットは成功します。しかし、実際にそれを達成できる人は驚くほど少ないのが現実です。
だからこそ、RIZAPパーソナルトレーニングジム大手。専属トレーナーによる徹底した食事・運動管理で短期間の減量を実現する高額サービスで知られる。のようなパーソナルトレーニングサービスが成立します。高額な料金を払い、トレーナーと約束することで、「もったいないから行かなきゃ」という心理的ハードルが生まれます。
自分で運動・食事制限を決める
→ 実行率が低い
トレーナーが日程を決め、報告を求める
→ 実行率が高い
ここで重要なのは、「自分の意志ではなく、他人にコントロールされている」という構造です。トレーナーが日程を決め、食事の報告を求めることで、意志の力に頼らずに行動できる環境が整います。
松田さんは「実行力は意志の強さだけに頼るのではなく、仕組みの強さ、仕組みの構造を作っていくことが大切」と強調します。これは、ダイエットだけでなく、組織運営にも応用できる普遍的な原則です。
テレワークでサボらせない仕組み設計
コロナ禍でテレワークを導入した多くの企業が、「社員がサボるのでは?」という不安を抱えました。松田さんの会社も例外ではありませんでしたが、綿密な仕組み設計によってこの課題を乗り越えました。
導入した具体的な仕組み
特に重要なのは、一見すると「雑談」に見える15時のコミュニケーションタイムです。実はこれ、「15時にはデスクの前にいなければならない」というサボり防止の仕組みでもあります。
朝礼での顔出しルールも同様です。音声だけなら寝転がったままでも参加できますが、顔を出すことで「身支度をして準備する」という行動が自然と生まれます。そして18時の成果物提出により、「一日何もしていない」という状況を防ぎます。
こうした小刻みなチェックポイントを設けることで、仮にサボっていたとしても、適切なアウトプットが出る環境を整えたのです。
自分との約束を破る習慣がもたらすもの
仕組みがあっても、幹部クラスなど自由度の高い仕事をする人には、どうしてもセルフマネジメント自分で自分の行動や時間、感情を管理する能力。特に経営層や専門職では、外部からの管理が少ない分、この能力が成果を左右する。が求められます。その際、松田さんが社員に伝えているのは「自分との約束を破ることに慣れると、自分が損する」という考え方です。
サボることは、会社に対して迷惑をかけるんじゃなくて、何よりも一番自分自身に一番のデメリットがあるから、だからサボらない方がいいよ
一度サボると、次もサボりやすくなります。人は楽な方に流れる性質があるからです。その結果、サボる習慣ができてしまった人は、仕事で成果を出すことも、顧客に喜んでもらうことも、キャリアアップすることも難しくなります。
①魔が差す
「今日くらいは…」と一度サボる
②ハードルが下がる
「また次もいいか」と習慣化
③成果が出なくなる
キャリアにマイナスの影響
松田さん自身、YouTubeやポッドキャストを一年近く続けていますが、「今週はいいか」と思う瞬間はあるといいます。しかし、視聴者の存在が「他者管理」として機能し、継続を支えています。
「一回飛ばしてしまったら、また飛ばそうとなる気がする」──この感覚は、セルフマネジメントの本質を突いています。意志の力だけでは続かない。だからこそ、他者の目や期待という仕組みが必要なのです。
環境が行動を変える──仕組みは人を縛らない
仕組みと聞くと、「窮屈」「管理される」といったネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、松田さんは「仕組みは人を縛るものではなく、人の弱さを補うもの」と定義します。
→ だから、他者管理の仕組みを作る(例:定刻朝礼、報告義務)
→ だから、思い出す仕組みを作る(例:リマインダー、チェックリスト)
→ だから、環境を整備する(例:集中できる場所の確保)
環境の力は、勉強や執筆の場面でも実感できます。自宅ではスマホの通知に気を取られて集中できないのに、カフェに行くと捗る──こんな経験は誰にでもあるでしょう。
松田さん自身、3作目の本を執筆中ですが、自宅ではなくカフェでパソコン1台とノイズキャンセリングイヤホンだけを持ち込むことで、集中を維持しているといいます。これも、意志の力ではなく環境という仕組みの力です。
テレワーク導入を躊躇している、幹部の自己管理に不安がある、社員がサボっているように見える──こうした悩みを持つ経営者は、まず「意志に頼らず、仕組みで解決する」という視点を持つことが重要です。構造を設計すれば、社員は自然と実行する組織になります。
まとめ
社員が動かないのは、社員のせいではなく、仕組みの不在が原因です。人の意志は弱く、忘れやすく、楽な方に流れる性質があります。だからこそ、経営者は「意志の力」に頼るのではなく、「仕組みの力」で行動を促す構造を設計する必要があります。
テレワークの成功事例が示すように、定刻朝礼、途中報告、雑談タイム、成果物提出といった小さな仕組みを積み重ねることで、サボりづらく、アウトプットが出やすい環境が生まれます。そして、仕組みは人を縛るものではなく、人の弱さを補い、力を引き出すものです。
自己管理に悩むのではなく、仕組みで解決する。この視点の転換が、組織の生産性を大きく変える第一歩となるでしょう。
- 社員が動かないのは、社員の問題ではなく仕組みの問題
- 人の意志は弱い──ダイエットと同じく、他者管理の構造が実行を支える
- テレワークでは、朝礼・報告・雑談・成果物提出で小刻みにチェックポイントを設ける
- サボる習慣は自分を損させる──一度の妥協が次の妥協を呼ぶ
- 仕組みは人を縛らない。環境を変えることで、意志に頼らず行動できる
