金融エリートが書いた「お金の取扱説明書」とは?
しゅうへいさんが紹介するのは、田内学さんの『きみのお金は誰のため』です。東洋経済新報社から出ている本で、30万部突破、Amazonレビュー3000件超え、読者が選ぶビジネス書グランプリ2024で総合グランプリとリベラルアーツ部門第1位を受賞したと紹介されています。
『きみのお金は誰のため』は小説形式で書かれていて、GDPのような難しい経済用語はほとんど出てきません。しゅうへいさんは、小学生から高校生まで読めて、大人が読んでも「こういうことだったのか」とわかる本だと話しています。
しゅうへいさんがこの本を読んで抱いた感想は、少し意外なものでした。
一言で言うと、この本を読んで思ったのは、お金貯めてこなくてよかったと思った。これ僕視点ね、僕視点なんだけど。
貯めてこいよって思っちゃった。
しゅうへいさんはこれを冗談としつつ、株式投資や資産運用が広く勧められる今だからこそ、「みんなでお金を貯めても意味がない」と書かれたこの本を読んでほしいと語ります。身近にあるのに誰も学んだことがない、お金という道具の取扱説明書のような1冊だという位置づけです。
著者の田内学さんは、ゴールドマン・サックス ── アメリカの大手投資銀行・証券会社。企業の資金調達やM&A、債券や為替のトレーディングなどを手がける世界有数の金融機関ですに16年勤めた元金融マンです。日本国債や円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングで、何千億円という金額を動かしてきた人物だと紹介されています。
ゴールドマン・サックスのイメージを聞かれた幸あれこさんが「パワーポイントを使っている」と答え、しゅうへいさんがエリート像をいじり続ける一幕もありました。そのうえでしゅうへいさんは、何千億円を動かしてきた人が「みんなでお金を貯めても仕方ない」と書いている点が面白いと強調します。
物語の登場人物は基本的に3人です。お金があれば何でもできると信じる、とんかつ屋の息子で中学生のユウト君。投資銀行に勤める金融知識豊富なナナミさん。そして「お金の向こう研究所」の主で、お金の3つの謎を投げかけるボスです。この3人が謎を解きながら、お金の正体に迫っていきます。
1万円札は本当に価値がある?毎年30兆円が燃やされる理由
ボスが出す1つ目の謎は「お金自体には価値がない」というものです。しゅうへいさんは幸あれこさんに、1万円札をあげたらもらうかと問いかけます。
その1万円で何かが買えるから。
幸あれこさんは、お金自体に価値があると思うと答えました。物語の中でもユウト君とナナミさんは、ボスの「価値がない」という言葉に反発します。
しゅうへいさんが根拠として挙げるのが、日本円の紙幣が年間30兆円ほど燃やされているという事実です。理由は、ボロボロになって使われなくなった古い紙幣を処分しているためだと説明されます。本当に価値があるなら燃やさないはずだ、という問いかけです。
幸あれこさんが「焚き火で?」「うやむやにしたかったお金?」と的外れな推理を重ね、しゅうへいさんが「何悪いことしたんだ、30兆円」と返すなど、謎解きは笑いを交えて進みました。
続いてしゅうへいさんは、紙幣の性質の変化を兌換紙幣 ── 金や銀などと交換できることが保証された紙幣。かつての多くの国の紙幣はこの仕組みで価値の裏付けを得ていましたと不換紙幣 ── 金などとの交換が保証されていない紙幣。現在の日本円をはじめ、多くの国の通貨がこれにあたりますという言葉で説明します。
金や銀と交換できることが価値の支えになっていた
金との交換ができなくなった紙幣。今の1万円札は原価20円程度で作れる
今の1万円札には「日本銀行券」と書かれており、しゅうへいさんは券とはクーポンのようなもので、言ってしまえばただの紙だと話します。それなのに人はお金を追い求め、喧嘩や犯罪にまで巻き込まれる。その不思議さが1つ目の謎の出発点です。
ただの紙に価値を与えるのは何か?「周平ドル」の実験と税金
しゅうへいさんは、手元のブラックサンダーを自分が発行する「周平ドル」に見立て、50ドル分あげると言います。幸あれこさんは嬉しくないと答え、イケハヤさんも受け取りを渋りました。
まあなんか、もらうと嫌なことが起こりそう。借金になりそう。キングボンビー的な何かを感じちゃうよね。
ところが「今後、島のタコは周平ドルでしか買えない」と条件を付けると、イケハヤさんの反応は一変します。幸あれこさんも、スタバの新作ピンクマグカップが周平ドル5ドルと交換だと聞くと「ください」と即答しました。
そしたらね、必要だからね。欲しいよね。
本の中でも、ユウト君の父親が発行する家庭内通貨「サクマドル」を稼がないとスマホが使えない、という例が出てきます。しゅうへいさんは、周平ドルを稼がないとChatGPTやGeminiが使えないとなれば誰でも頑張って稼ぐだろうと付け加えました。
しゅうへいさんによれば、日本円がしているのも同じことです。税金は日本円でしか払えないという強烈な需要があるから、人々は日本円を稼ごうとし、紙幣に価値が生まれるという説明です。
っていうことを実は日本円もやっているだけなんだよ。それが何かというと、税金は日本円でしか払えないということなんですよ。
しゅうへいさんは、江戸時代の年貢がお米だった理由もこの本を読んで腑に落ちたといいます。教科書で習った当時は「米でもらってもしょうがない」と思っていたものの、米がなければ生きていけず、誰もが作る必要があるため合理的な仕組みだったと振り返ります。
しゅうへいさんは、税金によって紙幣に価値が生まれ、お金が循環することで、みんながお互いのために働く社会になっていると整理します。お金は汚いものと思われがちですが、お金によって人はコミュニケーションができている、という見方です。
余談として、しゅうへいさんはビットコインにも触れました。今は使い道を疑問視されがちでも、もしビットコインでしか納税できなくなれば需要は爆発的に増えるはずで、仮想通貨も社会実装が進めば価値を持つかもしれないと話しています。
100万円とドーナツ、どっちを選ぶ?お金で解決できる問題はない
2つ目の謎は「お金で解決できる問題はない」です。しゅうへいさんが100万円とブラックサンダーのどちらがいいか聞くと、イケハヤさんは迷わず100万円を選びました。
しかし、しゅうへいさんは状況次第だと続けます。無人島に100億円を持っていっても、焚き火くらいにしか使えません。お金そのものは何かを作れないのに、人はお金さえあれば何でもできると勘違いしている、というのがボスの指摘です。
本の中で例に出されるのがドーナツです。ドーナツができるまでをたどると、お金を介してはいても、お金が何かを作った形跡は一切ないとしゅうへいさんは説明します。
農家
自然から小麦を作り出す
小麦粉工場
小麦を買い、小麦粉にする
運送
トラックで小麦粉やドーナツを運ぶ
ドーナツ屋
オーブンを使い、小麦粉からドーナツを焼く
しゅうへいさんは、収録スタジオのLLACハウスを建てた経験を重ねます。建物に6000万円、土地を含めると約8000万円かかったものの、建つ過程を見ながら「自分は何一つ作れない」と感じたそうです。
LLACハウスは、コミュニティのメンバーで出したアイデア、ミリ単位の設計、農地転用、地盤改良、基礎や骨組み、断熱、内装、屋根、壁紙、家具選びまで、多くの人の手でできています。しゅうへいさんは、6000万円で建てたというより、6000万円を使って誰かが労働してくれたのだと気づいたと語ります。
イケハヤさんは、高知の山奥で暮らす実感として、この謎に強く同意しました。
まああれ金の問題じゃねえんだよな。もう人がいねえしみたいな。
大工さんもいないし、電気工事士も多分足んなくて。だからお金の問題というより、普通にエアコンがつけられないみたいなのは全然ありますよね。
しゅうへいさんも、地域にとっては、好きで住んでくれる人やスキルを持つ人がどれだけいるかが今後大事になると応じます。
話はAIに仕事を奪われる不安にも及びました。ボスは、人は昔から農業をやめた代わりに新しいことができるようになってきたとし、経済は無駄を減らすことで発展してきたと説きます。しゅうへいさんは、AIでワンクリックで済む作業を人がやり続けることこそ本当の無駄であり、人をどこに割り当てるかが大事だという話も紹介しました。
みんなで貯金すると全員で沈む?ゾンビアイランドで考えるお金の地動説
3つ目の謎は「みんなでお金を貯めても意味がない」です。ボスは、お金をみんなで貯めると全員で沈んでいくと語り、「お金の地動説」というキーワードを示します。
しゅうへいさんは、老後に2000万円、1億円が必要だと言われ、みんなが貯めればなんとかなると思いがちな風潮に対し、そうはならないというのが本の主張だと説明します。
わかりやすい例として、しゅうへいさんは人口5000人の大島がゾンビアイランドになった状況を想像させます。人間はLLACハウスにいる人たちだけで、パンは1つしかありません。
ここにパンは1つしかない。この状況でみんなでお金貯めたらどうですか?
ゾンビがお金を貯めるのかと混乱する幸あれこさんでしたが、最終的に「小麦から作ろうかになるよね」と答えにたどり着きます。しゅうへいさんは、ゾンビ映画の中で誰かが株式投資やNISAを始めたらパロディになってしまうと笑いつつ、小さな世界では誰もがわかることを、大きな世界では見失ってしまうと指摘します。
しゅうへいさんによれば、本当の解決策は、100人が分け合えるようにパンを100個焼く生産力を維持することです。少子化をなだらかにしながら技術革新を促すしかなく、みんなでお金を貯めるのは1億2000万人でやる椅子取りゲームのようなものだと話します。
椅子取りゲームになり、パンにありつけるのは運のよい人だけ
パンの焼き方や小麦の作り方を学び、100人分のパンを焼く
物語の最後でボスは、「僕」の範囲、「僕たち」の範囲を広げていこうと語り、それは人を愛することであり贈与なのだと締めくくるそうです。しゅうへいさんは、資産運用も大事かもしれないが、それだけをみんなでしていても仕方がない、やるべきは未来のために椅子を増やすことだと整理します。
大島では今、美容室とパン屋が新しくできるという噂が駆けめぐっているそうです。都会ならニュースにならない話に、イケハヤさんも「マジで」と色めき立ちました。逆に、うどん屋がなくなったときはげんなりしたと振り返ります。
住む人、作る人、そしてそれを楽しんで買う人、この三者がいないと地域って成り立たないから。
しゅうへいさんは、この本には地域の再生モデルのような視点も含まれていると話します。お金によって見えなくなっている社会のつながりが見えるようになり、お金と経済はあたたかいものだと学び直せる点が、経済を学ぶ意義につながるとまとめました。
物語の後半では格差問題も扱われ、ボスは「倒すべき悪は存在しない」と説きます。苦しいのは誰か、政府のせいだと考えがちな構造も解き明かされるため、家族で、子どもと一緒に読むのもおすすめだとしています。
なぜゾンビの例えばかり?雑談と前著の紹介
紹介を終えると、イケハヤさんが「二人ともゾンビ映画が好きなの?」と突っ込みます。番組でゾンビの話がたびたび出てくるためです。
幸あれこさんはゾンビは嫌いだとしつつ、究極の場面を想像するとゾンビが出てきやすいのかもしれないと答えました。イケハヤさんは一時期よく見ていたそうで、楽しみ方を次のように語ります。
テンプレがあって、たまにこう、なんか異世界系のなんかなろう系みたいなのも、なんかテンプレの中でどうやって工夫してアホらしいことやるのかみたいな。ああいうのは好きだよね。
しゅうへいさんは、羽田空港に着いたときに乗客がゾンビになったらどう逃げるかを考えているそうで、幸あれこさんに「少年だな」と言われていました。
最後に幸あれこさんが、金融のプロがたどり着いた内容が意外だったと感想を述べると、しゅうへいさんは田内学さんの前著『お金の向こうに人がいる』も紹介します。『きみのお金は誰のため』はその内容を優しくした小説で、しっかり知りたい人は前著も読むとよいと話しています。
株式投資は結局転売してるだけだよとか書いてますから。面白いです。
次回は、幸あれこさんが食べ物と経済学をつなぐ『経済学レシピ』を紹介する予定です。
まとめ
田内学さんの『きみのお金は誰のため』は、お金そのものではなく、その向こうにいる人の労働とつながりに目を向けさせる1冊として紹介されました。しゅうへいさんはLLACハウスの建設や大島の暮らしに重ね、お金と地域、社会の関係を読み解いています。
- お金自体には価値がなく、税金が日本円でしか払えないことが紙幣の価値を支えている
- ドーナツも建物も、お金ではなく誰かの労働から生まれている
- パンが1つしかない社会では、みんなで貯金しても食べられるのは1人だけで、大事なのは生産力を維持すること
- 住む人・作る人・買う人がそろわなければ、お金があっても地域は成り立たない
- 小説形式で難しい用語が少なく、親子で読むのにも向いている





