憧れの赤ボックスロゴを、なぜ今かぶれるようになったのか
番組冒頭、明石ガクトさんは今日のテーマを「サーフスタイル」に設定します。この日の主役は、頭にかぶったSupremeのキャンプキャップです。
キャンプキャップは、かつてジェットキャップ ── 5枚のパネルで前が浅くつくられたキャップの通称。メッセンジャーやスケーターに好まれ、Supremeの定番アイテムとして知られますと呼ばれていた形です。明石さんはMADE IN USA時代のデッドストックを持っているものの、頭が大きい自分には似合わず、ずっとかぶれずにいたと話します。
明石さんは、憧れつつも手を出せずにいた理由をこう振り返ります。
これは憧れ、Supremeならではの(キャンプキャップの)。今まではなんかいまいち似合わない。
今回かぶっているのは、2週間ほど前に発売され即完売した「ウッドランドカモ」のキャンプキャップです。ポイントは、迷彩の上からさらに染めを重ねるオーバーダイ ── すでに染められた生地や製品を、もう一度別の色で染め重ねる加工。色がくすんで使い込んだような風合いが出ますが施されている点にあります。
赤いボックスロゴも黒く薄汚れ、全体が使い込まれた空気になっています。明石さんは、これなら赤ボックスロゴでもいけると感じたと話します。
赤ボは本当にいけないと思ってたんだけど、これなら赤ボいっちゃったね。ちょっとなんかくすんで。
横山さんは、この変化を「憧れの返しをしつつ、今の時代にぴったりなキャップをゲットした」とまとめます。加工によって、憧れと自分の似合う範囲が一致した一本だという流れです。
MADE IN USA時代のジェットキャップは、頭が大きい自分に似合わずかぶれなかった。赤ボックスロゴも派手すぎて手が出せなかった
オーバーダイでくすんだウッドランドカモのキャンプキャップなら、使い込んだ空気があり、赤ボックスロゴでも自然にかぶれると感じた
ゴローズの平打ちとカーハートの加工パンツで作る「丘サーファー」
明石さんは最近、手首にゴローズをつけていると話します。今までここはクロムハーツのヘアゴムが定位置でしたが、今は平打ちブレスに替えています。
この平打ちブレスは、明石さんにとって憧れのアイテムでした。平打ちを手に入れないことには何も始まらないと話し、ようやく手に入れた気持ちをこう表現します。
(ゴローズの平打ちの)入り口を手に入れないことには何も始まらない。ようやくパスポートを手に入れたような、そういう気持ちですけど。
明石さんは、この組み合わせを見て「丘サーファースタイル」だと感じたと言います。海を感じるゴローズに合わせるのは、潮風に焼けたような色のカーハートのダブルニーパンツです。
このパンツの色は、カーハートの一番定番の茶色でもタンでもない「ハミルトンブラウン」です。履き込むと白っぽく色が抜けていくのが魅力で、明石さんはデッドストックの状態から加工に出してこの色にしています。
今ここまで来ると(キャップも加工だし)パンツも加工だから、めちゃくちゃ作られた抜け感。
キャップもパンツも加工という、いわば「イミテーションの抜け感」で組み立てたコーディネートだと2人は笑います。
日本中から消えたエルメスのアブミ革ベルト、タイまで買いに行った話
話は、明石さんが腰につけていたベルトに移ります。これはエルメスの「アブミ革」で、もとは馬の鞍につける馬具です。
明石さんによれば、このアブミ革は数年前、ファッションで知られるヒロシさんの周辺の人がエルメスで探し始めたことで一気に注目され、日本中のエルメスから在庫が消えたといいます。
その瞬間に日本中のエルメスからアブミ革が消滅したという。
アブミ革は基本的に両足分あるため、2本で1セットです。長さには125と135と145があり、垂らして使うには135がベストだと横山さんは説明します。
横山さんは、自分もずっと探していて、最近メルカリに1本14万5000円で出たものの、悩んでいるうちに姿を消したと話します。それだけ手に入りにくいアイテムです。
明石さんは、世界中のエルメスのオンラインを定期的に検索し、ある日バンコクの店に在庫を見つけます。友達に頼んで押さえてもらい、正規で手に入れるためにタイまで自分で行ったといいます。
正規で手に入れたみたいな(ことが大事)。だってもうチケット代とか考えたら普通にメルカリで買うより高いかもしれないけど。
このベルトの魅力は、革を通すループがなく、革に金具が1つ付いただけの潔い作りにあります。パッと見ではエルメスとわからないのに革質は上質という、「エルメスだけど抜いている」点を2人は評価します。
クロムハーツの新作「KSデニムジャケット」を巡る2人の熱
ここからは横山さんの着こなしに移ります。主役はクロムハーツの新作「KSデニムジャケット」です。KSは、クロムハーツのデザイナーであるクリスチャン・スタックさんのイニシャルです。
明石さんは、イニシャルを冠したアイテムはパパのベスト以来だとして、これがブランドの自信作である証だと受け止めます。
背景として、少し前にクロムハーツから太めの「クリスチャンデニム」が出ていました。以前のピタピタなリチャードカット ── クロムハーツの細身のシルエットを指す通称。よりワイドなシルエットは近年クリスチャンカットと呼ばれ始めているとされますに対し、近年はよりワイドなシルエットが増えているという流れの中で、今回そのセットアップの上が登場した形です。
ジャケットの形は、セカンド・サード・フォースが混ざった作りです。中央部分はセカンド、ポケットの付け方はカーハートを思わせると2人は分析します。
裏はセルビッチがふんだんに使われ、ほつれる箇所が一つもない作りになっています。
一分の隙もないね。ほつれる隙がないねこれ。
スナップボタンでボタンホールも開いておらず、これは一生着ろというクリスチャンからのメッセージだと明石さんは表現します。横山さんは糊を塗らず、自然なフェードで当たりを出して育てるつもりだと話します。
価格についても、最近のクロムハーツのアウターが軒並み高額になる中で、非常に良心的だと明石さんは評価します。長く着られる点も含めて、2人はこのジャケットを「名作」と呼びます。
クローゼットの爆発と「横展開」という考え方
話題は今回のメインテーマに移ります。明石さんは、体は減量していたのに、クローゼットが増量しすぎて「爆発した」と表現します。
明石さんの言う爆発とは、クローゼットの外に服があふれ出す状態です。椅子の上に畳んだTシャツを積み始めた時点で、それはもう爆発だといいます。横山さんも、自分のクローゼットは爆発していると認めます。
この状況を整理する言葉として登場するのが「横展開」です。これは明石さんが好きなロイさんのポッドキャストによく出てくる概念です。
横展開とは、自分が今持っているアイテムを別の人に受け渡すこと、シンプルに言えばメルカリなどで売ることです。それによって予算を確保し、次のアイテムに向かっていくという考え方です。
以前このメインテーマの中で語られた「スイカゲーム」も、この話とつながっています。同じアイテムが集まると消え、そのハイスコアで次の高額なアイテムを手に入れるという例えです。横山さんは、スニーカーを横展開してKSジャケットを買ったと明かします。
手放す
今持っているアイテムを、メルカリなどで別の人に受け渡す
予算を確保する
横展開で得たハイスコア(売上)が予算になる
次へ向かう
確保した予算で、次に欲しいアイテムに向かっていく
40代で服を手放す。思い出と実用のあいだで揺れる
明石さんは、買ったアイテムの記録を残す「ファッションビクティムノート」を作ろうと考えていると話します。買った日や理由を書き留めておけば、後で「なぜこれを買ったのか」を思い出せるという発想です。
これは何月の何日、これはこういうふうな思いで、こういう感じで買ったみたいなのを書き留める。
ここで、ロイさんのポッドキャストの「最後のクロムハーツ」という回の話が出ます。人はみな最初のクロムハーツは語りたがるが、手放したもののことはあまり喋りたがらない、という指摘です。
その回では、年を取っていく中で最後に何が残るのかという思考実験がされていました。明石さんは、大好きなウォレットチェーンも、80歳になってもつけるかというと難しいだろうと考え直したといいます。
明石さんは、二十代の頃に買ったオールデンのコードバンについても、足のサイズが大きくなってもう履けないかもしれないと語ります。体型や肌が変わることで、かつてのスイカが自分にとってもう食べられないスイカになっているという表現をします。
横山さんも、二十代の頃に買ったブラックモールスキンのジャケットが小さくて着られず、それでも手放せずに残っていると打ち明けます。ここで、思い出と実用のあいだで揺れる難しさが2人の共通の悩みとして浮かび上がります。
思い出と実用の狭間(が難しい)。
横山さんは、ある人の言葉として、30代までは積んで集める増量期、40代以降は手放す時代が来る、という考え方を紹介します。明石さんはそれを受けて、自分も手放し時なのだと受け止めます。
マイファーストオールデンなど、明確なエピソードがある。サイズが合えば残し、合わなくても横展開はしても捨てない
大きな思い出もなく、デッドのまま持っているだけ。いつか着るかもと残しているが、手放すべき対象
「タイムカプセル」か、手放すか。冒頭のキャップで出した結論
明石さんは、冒頭のキャンプキャップを例に、手放すかどうかを横山さんに相談します。買ったものの似合わないと思ってかぶらず、今後かぶるかもわからない一品です。
横山さんは最初「タイムカプセル」という考え方を挙げますが、すぐに考えを翻します。そのタイムカプセルが増えすぎてクローゼットが爆発しているのだから、いらないと言い切ります。
(さよならして)その時は悔しいと思うんですよ。でも多分二日後にはもう次のネクストの何かの方に目が行ってると思いますよ。
横山さんは、持っているから名残惜しいだけだと指摘し、瀬戸内寂聴さんの「手放しなさい」という言葉になぞらえます。2人は、40歳を超えたら本当に思い出のあるものしか意味がないのではないかと語り合います。
明石さんは、現代のアップデートである今かぶっているウッドランドカモのキャップの方が絶対にいいと結論づけ、古いキャップを手放すことを決めます。
布は朽ちる。スニーカーの「賞味期限」と集団葬儀の構想
横山さんは、アイテムには「賞味期限」と「消費期限」があると整理します。賞味期限はトレンド的にそれが魅力的な期間、消費期限は自分がそれを着られる期間です。
明石さんは、この考えを「思い出のスニーカー」というコメントテーマにつなげます。今、スニーカーブームが一段落し、一周目だった人たちが加水分解の悲劇に遭っていると指摘します。
スニーカーは金属と違って、明らかに賞味期限があるアイテムです。数年で朽ち果てるため、加水分解する前に処分して次の波に乗り換える必要があるという話です。
何年かするともう朽ち果てるみたいな(のがスニーカー)。
明石さんは、あらゆるものは永遠ではないと語ります。デニムのように朽ちることに魅力があるものもあれば、ナイロンのように加水分解でペタペタするものもあります。その中で、金属は非常に長く持つと整理します。
明石さんは、スニーカーの処分に踏ん切りがつかないからこそ、リスナーの思い出を集め、みんなで「集団葬儀」のようにお別れの儀式をするイベントを構想します。そこにセカンドストリートなどが引き取りに来る、という笑いを含んだアイデアです。
続けて2人は、この夏に向けて「自分自身」を持って意思決定していくフェーズだと話します。横山さんは、その自分を支えるタンクトップを「お守りタンク」、後に「自分自身タンク」と命名します。
1周年コメント。「タグを切れ」「洗濯機は共同クリエイター」への反響
ここからは、番組1周年へのリスナーコメントを読み上げていきます。まず明石さんとの返報の法則として、ペディさんから横山さんへファルケの靴下、明石さんへビズビムの手ぬぐいなどの贈り物が届いたことが紹介されます。
一周年おめでとうございます。いつも非常に楽しみにしております。お二人の圧倒的な知識量とtodayさんのギャグが最高ですので、引き続き今のスタイルで続けていただけると大変嬉しいです。なお、私の好きなファッションVictim名言は「タグを切れ、それを通せ、メルカリに頼るな」です。
明石さんは、タグを切ることの大切さを改めて語ります。買ったらすぐに着るため、店でその場でタグを切ってもらうといいます。
ファッションのベースは肉体なので、トレーニングの話も面白いですよ。
明石さんと横山さんは、トレーニングの効果を実感していると応じます。似合わなかったキャップが似合うようになり、着こなせなかったジャケットが着こなせるようになるという、肉体と着こなしのつながりを語ります。
一周年おめでとうございます。仕事の移動中に車の中で聞いており、水曜の更新が楽しみでしょうがありません。僕の好きな回ですが、「タグが消える頃、ようやく俺らは服と会話できる」です。この中で出た「洗濯機はデザイナー、洗濯機は共同クリエイター」という言葉に強烈に食らいました。この言葉を聞いてから、ガンガン洗濯乾燥機に入れ、自分の服にしていくプロセスを楽しむようになりました。
横山さんは、乾燥機をかけた後に服を広げて、縮み具合ややれ具合を確認するのが楽しみだと語ります。コインランドリー用の小銭を持ち歩き、いつでも洗濯できる態勢だといいます。
ガールマスと、ビズビムを「正当化」する日々
ガールマスという言葉についてのコメントも紹介されます。明石さんによれば、ガールマスとは「これはここから10年使えるから実質タダ」といった、買い物をポジティブに計算する方法です。
ガールマスというワードが一番聞いていて印象的でした。いざ言語化されるとなんだか便利な言い訳ワードだと感銘を受けました。洋服をたくさん買うこと自体後ろめたいことも多々あり、常に自己正当化をしながら購入しているので、これはタダじゃんをキーワードにさらに買い物してる自分がいます。
明石さんは、ガールマス理論は便利だが、今日買ったビズビムを正当化できるほどの理論ではないと苦笑します。ビズビムの店では自分以外の客が全員インバウンドで、値段に驚いているのは自分だけだったというエピソードも語られます。
筋トレを1日も休まず続けるリスナーと、小麦をやめた効果
筋トレを始めたというリスナーからのコメントが続きます。番組をきっかけに本格的に筋トレを始めた翔悟さんは、今年に入って1日も休まず継続していると報告します。
去年の秋からこの番組をきっかけに本格的に筋トレを始め、今年はなんと1日も休まず継続しています。最初は25kgしか引けなかったラットプルダウンでも、今では50kgに。ずっとヒョロガリだったんですが、筋肉で体重もしっかり増え、体の変化を実感する日々です。ひん曲がった体が少しマシになり、服の着こなしも良くなってきた気がします。
明石さんは、この報告に責任を感じ、背筋が伸びる思いだったと語ります。2人自身も、明石さんが懸垂をできるようになり、横山さんは重りをつける荷重懸垂までいったと、進化を実感していると話します。
食事についてのコメントもあり、小麦をやめた効果が話題になります。
小麦を食べないという発想がなかったので、お二人の話をきっかけに取り入れるようになりましたが、明らかに体調がいいです。また、買ったらすぐ消費するという言葉がしっくりきて意識するようになりました。
2人とも、小麦をやめてから胃腸の調子やむくみが明らかに違うと実感しています。横山さんは、グルテンを取ると眠くなることにも気づいたと話します。
グルテンを取ると胃腸がベストコンディションでない状態が当たり前で、それを標準だと思っていた
小麦をやめてから胃腸の調子やむくみが改善し、これが本来の状態かと感じるようになった
マルジェラの「ドール着」Tシャツと、消費できない自分
明石さんは、まだ袖を通せていないアイテムとして、マルタン・マルジェラの九段ハウスの展覧会で買ったTシャツとキーホルダーを紹介します。デザインもボディの選定もマルジェラ本人が手掛けたとされる品です。
このTシャツはサイズ表記が独特で、キーホルダーがXXXXS、人が着るほうがXXXXLと書かれています。明石さんは、これがかつてのマルジェラのドール着 ── 人形が着る小さな服を、そのまま実寸大にスケールアップしたようなマルジェラのコレクション。極端なサイズ感が特徴ですを思わせると気づきます。
これマルジェラのまさにドール着ですよね。人形が着てる小さい洋服をそのままスケールアップしたかのような。
明石さんは、これも横展開の話とつながると認めます。買ったものの着なそうで、消費できない自分もいるという悩みが再び顔を出します。手放すなら賞味期限のうちに、という2人のやり取りにもつながっていきます。
番組名「Fashion Victim」の由来。おしゃれとは違う「自分自身」
コメントの流れから、横山さんが自身の過去を打ち明けます。学生の頃、雑誌に載りたかったのに載れず、洋服は大好きなのにファッションスナップに撮られない、というジレンマを抱えていたといいます。
世の中から見たら別にかっこよくないのかもしれない。でも、洋服に金と時間と熱量を使ってることだけは誰にも負けない。
この告白を受けて、明石さんが番組名「Fashion Victim」の由来を語ります。二十代の頃、仕事で関わったイタリア人の女性から「明石さんはファッションビクティムですね」と言われたのが始まりでした。
これはイタリア流の皮肉で、身の丈に合わないものをたくさん買っている、という意味でした。他に自己投資すべきものがあるだろうに、という消費行動への当てこすりです。その言葉が、明石さんの心に棘のように残り続けたといいます。
40歳を過ぎても変わらなかったからこそ、明石さんは胸を張ってファッションビクティムだと名乗ることにしたと語ります。おしゃれでありたいとか、ファッションを愛しているという人とは少し違う立ち位置です。
なんかね、これ買わなければ、もっとこういう旅行ができたかもしれない、こういう家に住めたかもしれないという思いがちらつかない日がない。それでもこれでよかったんだと思える、このマインドがビクティムってことなんですよね。
2人は、おしゃれであることとモテることは違う、という話にも展開します。番組が目指すのは、おしゃれの知識を語ることではなく、失敗した買い物も語れる、まっすぐで温かい場だと明石さんは語ります。
まとめ
サーフスタイルの着こなしから始まったこの回は、40代を迎えたファッション好き2人が、増えすぎた服とどう向き合うかを本音で語り合う内容になりました。手放すこと、思い出との折り合い、そして「自分自身」を持つことが通底するテーマです。
- 憧れだったアイテムも、加工やタイミングによって「今の自分に似合う」形で手に入れ直せる
- 横展開(手放して予算を確保し次へ向かう)とスイカゲームが、増えすぎた服を循環させる合言葉になっている
- 40代以降は「本当に思い出のあるもの」だけが残り、半端な思い出のアイテムは手放す時期が来る
- スニーカーや布は朽ちる素材で賞味期限があり、加水分解する前に手放す判断が必要
- 番組名「Fashion Victim」は皮肉が由来で、おしゃれさより「服に熱量を注ぐ自分自身」を肯定する姿勢を表す




