冒頭で全部説明する?しない?という論争
この回から、番組の冒頭に「これはどんなラジオか」という紹介を入れることになりました。清水さんは広報として「初めて聞いた人がわかる」ことを大事にしたいと考え、番組紹介文を読み上げます。ところがおしょうから「長くない?」とツッコミが入り、そこから“冒頭で全部説明するべきか問題”へと話が広がっていきます。
やっぱり広報として、初めて聞いた人がわかるってことを大事にしていきたい。
おしょうの主張は逆でした。最初に全部わかってしまうと「聞いた気になってもう聞かない」ことがある。ぬるっと始まって、最後に「あ、こういうことだったのか」となる方が広がる、という考え方です。取材でも「一番聞きたいことを一番最初に聞いてはいけない」とよく言われるそうで、雑談から入って急所を聞くのがコツだといいます。
一方で、二人が気づいたのは「知名度」という分岐点でした。全国区の有名人がゲストなら冒頭説明を省いても聞かれますが、無名の状態で広げたいなら前提を伝えた方がよい。おしょうは、ガチ足立という雑誌を全国の図書館に置きたいという目標を思い出し、「足立区外の人にも届く準備」として前提を言う方向で納得します。ただし「コテンラジオと同じくらい短く」が結論でした。
善覺寺とはどんなお寺か
今回のテーマは、おしょうが副住職を務める善覺寺です。実はこの番組自体が、善覺寺の広報活動の一環として制作されているといいます。経費でマイクやミキサーを揃えて収録しており、舎人ライナーノーツやガチ足立クラブの話をしても、巡り巡って善覺寺の利益になるように、という設計です。ここでいう利益はお金だけでなく、知名度が上がる、好きな人が増える、といったことも含みます。
足立区小台本町、日暮里・舎人ライナー「舎人駅」が最寄りの浄土宗の寺院。西暦1490年(戦国時代ごろ)に創建された歴史あるお寺です。
現在の住職はおしょうの父で三十二世。おしょうが継ぐと三十三世になる予定です。「世」は浄土宗などで代を数える呼び方。
本堂は「すごく厳かな雰囲気」で、当初はそこで収録する案もあったそうですが、雑談の内容を考えると「炎上しかねない」と見送ったとのこと。おしょうは住職を継いでも地域活動は続ける意向ですが、やれること・やれないことは出てくるかもしれないと語ります。ただ未来については「マジで行き当たりばったり」で、細かいイメージは固めていないそうです。
行き当たりばったりと、反復の力
おしょうは「ノリで始めて、最初は苦しくて、やりながら改善して、なんとか回ってよかったね」というパターンばかりだと明かします。清水さんもこれに強く共感。実は清水さんも「行き当たりばったり人間」で、それが楽しいタイプだと打ち明けます。ただし清水さんの場合は、準備や計画を徹底的にした上で、それを全部捨てて覚えているところだけをかいつまんで進める、というスタイルでした。
準備・計画は徹底的にする(清水さん)/予測はするが数字的な計画は好まない(おしょう)
計画は捨てて、歩き始めてから考える。忘れたアイデアは「その程度だった」として気にしない
おしょうはアイデアをメモしません。翌日忘れてしまったら、それはそれまで。「アイデアは実行しないと価値がない」という考え方です。この話から、お経の話へと自然につながっていきます。お坊さんがお経を覚えているのは、修行で死ぬほど唱えさせられるからで、「大事なことは何度も唱えるから覚える」。清水さんは、大事な思いも期間が空いても頭の中で反復している、と自分の経験に引きつけて納得します。
コンパの自己紹介は「させない」
反復の話から、おしょうの「コンパ論」へ脱線します。ポイントは、コンパで「自己紹介してください」とは絶対に言わないこと。自己紹介は緊張するから、代わりに「インタビュー形式」で進めるのです。まずチームの男性が「名前は?」「どこ住んでるの?」と合いの手を入れ、興味を持てば女性側も質問してくる。何も聞かれなければ「興味ないんかい」と小ネタも挟める、という設計でした。
清水さんは、これはコミュニティなど初対面の人が集まる場すべてで使えると気づきます。自己紹介の時間になると場が重くなるのが嫌だったそうで、「使わせていただきます」と手応えを得ていました。
お寺で働く「いいねポイント」3選
「善覺寺のことをどこから聞いたらいいかわからない」という清水さんの正直な戸惑いから、おしょうが「善覺寺いいねポイント」を挙げていく形に切り替わります。これは、お寺のスタッフ求人にもつなげたい、という広報的な狙いも兼ねた展開になりました。
現在の職員は4人で、常に1〜2人が出勤しているとのこと。仕事は寺院運営のほぼ全般に及びます。事務作業、敷地内の手入れ(高齢の方の手伝いも受けつつ)、そしてメインは樹木葬の見学案内と契約手続きです。おしょうは「みんな優しくて、俺らにはもったいないくらいちゃんとしている」とスタッフを高く評価していました。
毎日行くとか、頻繁に行くところは、気持ちのいい場所がいいなと私は思ってて。人もですし、環境も。
なお、おしょう自身は「あんまり寺にいない」とも打ち明けます。理由の一つは、住職である父から税務や会計の話を振られるとイライラしてしまうから。「お金の話が一番興味ない」そうで、家族の話は歓迎でも会計の話は勘弁してほしい、と本音がのぞきました。
ヴィトンをスウェットのように着る理由
話題は、おしょうのファッション観へ。この日はヨウジヤマモトのトレーナーで、取材相手の青木さんに合わせて「威圧感でやられないように」選んだといいます。清水さんが「ブランドで鎧をまとうのはイメージが良くない」と率直に返すと、おしょうの服選びの哲学が明らかになっていきます。
おしょうにとって服は「記号」です。左派の論客・斎藤幸平さんがメゾンマルジェラを着て炎上した話にも触れつつ、自分がどういう人間かを表すためにあえて服を選んでいると語ります。ルイヴィトンについては「スウェット感覚で着ている」というのがキーワードでした。ありがたがらず、かしこまった服としてではなく着る。そこに「港区に屈しない」というメッセージを込めているといいます。
「金を持っているから、ハイブランドさえもスウェット扱いできるぞ」という成金的な着方
ブランドの歴史や背景に敬意を払った上で、あえて肩肘張らずストリートのように着る
おしょうは「有り金は全部使う」方針で、貯金や積立投資には縁遠いタイプ。ルイヴィトン六本木店で試着し、お腹が出るのでSからXLまで上がった、という自虐エピソードも披露します。つまり彼にとってヴィトンは「成金の服」ではなく、文脈と敬意をもって選ぶストリートウェアなのです。
憧れの人・近藤先輩
ファッションの原点は中学の裏原宿カルチャーで、大学時代に出会った近藤先輩の影響が大きいといいます。当時はフラボアがメンズにスカートを持ち込んで流行し、二人ともスカートを履いていたそう(40歳を超えた今でも履くとのこと)。近藤先輩はブランドの潮流に合わせて一気に「宗旨変え」できる人で、上ヴィトン・下ヨウジヤマモト・靴グッチといった組み合わせを衝撃的な格好良さで着こなすと絶賛します。
信じるものを持つことと、お寺の役割
「大人になっても憧れの人がいるって幸せ」という清水さんの言葉から、話は宗教的なテーマへと深まります。おしょうは、憧れや尊敬は崇拝ではないが「何を信じるのか」につながると語ります。信じるものがないと不安になる。今の日本には「お金を持っているやつは悪者だ」といった偏った“お金教”のような思想もありそうだ、と指摘します。
資本主義は土台だけど、あんまりそこに縛られない。そして自分が信じるものをちゃんと持つの大事だよね。
めっちゃ大事。それは激しく共感。
その日の取材相手・青木さんの話にも通じます。短期的なお金の尺度だけが暴走すると、都市計画や町の景観が守られず、街が悲惨な形でアップデートされてしまう。だからこそ「資本主義という土台には縛られすぎず、自分が信じるものを持つ」ことが大事だ、というのがおしょうの主張でした。そして「だからお寺って大事なの。善覺寺。阿弥陀様は大事」と、話は本題へ戻っていきます。
若い世代がお墓を手放したり、管理をつらく感じたりする現実はあります。それでもお寺は、人々のよりどころとしての役割を内包している。おしょうは清水さんに広報を頼んだ理由を「真面目な話」として明かします。地域コミュニティ活動だけでなく、善覺寺のお墓を持つ人たちへのアプローチもきちんとやってほしい、と。
最後に、スタッフ求人の応募窓口をどうするかが話し合われます。善覺寺には単独のホームページがなく(舎人めが僧圓のホームページはある)、この日は結論が出ませんでした。とりあえず「興味がある方はまずおしょうにコンタクトを取ってください」という形で締めくくられています。応募窓口の整備は次回への宿題となりました。
まとめ
屋外収録という新しい試みの中で、番組の冒頭説明論から善覺寺の紹介、和尚のファッション哲学、そして「信じるものを持つこと」まで、話題は思いがけずつながっていきました。行き当たりばったりに見えて、実は反復と信念が芯にある——それがおしょうの生き方であり、善覺寺という場所の役割とも重なる回でした。お寺という「よりどころ」を、広報という切り口でどう伝えていくか。その入り口が見えた対話だったといえそうです。
- この番組は善覺寺の広報活動の一環として制作されている。善覺寺は1490年創建の浄土宗のお寺で、おしょうは副住職(将来の三十三世)
- おしょうは「行き当たりばったり」を楽しむタイプ。アイデアはメモせず「実行しないと価値がない」と考える
- コンパでは自己紹介を「させない」。緊張をほぐすためインタビュー形式で進めるのがコツ
- 善覺寺で働く魅力は「相談できる常駐スタッフ」「優しい副住職」「土日のコーヒー飲み放題」の3つ
- ヴィトンは成金の服ではなく、背景に敬意を払ってストリートのように着る「記号」。有り金は全部使う主義
- 資本主義という土台に縛られず「信じるものを持つこと」が大事。お寺は人々のよりどころとしての役割を担う
- スタッフ求人に興味がある人は、まずおしょうにコンタクトを(応募窓口は次回への宿題)
