妻による夫プロデュース術 ── 「全ての毛」から始まった垢抜け大改造の全貌
ここだけの話第5回は、漫画家のカッピーさんとモデルの深見えりこさんが「結婚後に夫がどう垢抜けたか」を赤裸々に語る回。牛乳瓶メガネにシュプリームの原色コーデだったカッピーさんが、妻のディレクションでハイブランドを着こなすまでに変貌した過程と、その具体的な手順が明かされます。その内容をまとめます。
次女のガブリンチョ問題
毎回恒例の「次女にまつわる問題」コーナー。今回は「パパの二の腕ガブリンチョ問題」です。カッピーさんの腕にはくっきりと噛み跡が残っており、しかもパーカーの上から噛まれてこの状態とのこと。
噛む力が上がったっていうよりかは、ためらいがなくなった。本当に一思いにガッてくるの
「痛い!」と叫ぶと大笑いされるそうで、次女にとっては立派なコミュニケーション手段になっている模様。えりこさんは「怖い」と一言。赤ちゃんの成長は嬉しいけれど、パパの腕は犠牲になっているようです。
ビフォー:牛乳瓶メガネと原色シュプリーム
今回のメインテーマは「カッピー垢抜け問題」。新生活シーズンにちなんで、結婚後に妻のディレクションで劇的に変わったカッピーさんの変遷を振り返ります。
えりこさんが語るビフォーの姿は強烈でした。髪の毛・眉毛・髭──「全ての毛が無造作」。視力は0.01レベルで牛乳瓶のような分厚いメガネ。服装はシュプリームの原色アイテムで固め、ブルーのスウェットにショッキングピンクのニット帽という組み合わせだったそうです。
広告代理店時代の方がザ漫画家みたいな感じで。ザ漫画家だけど頑張って覚えたてのシュプリームとか着ちゃってましたみたいな
さらに衝撃的なのが、付き合う前のデートで2日連続まったく同じ服装で現れたというエピソード。えりこさんが「昨日と同じ服着てる?」と突っ込むと、カッピーさんは「へへ」と笑っただけだったとか。
カッピーさん自身も当時を振り返り、「洋服を色としてしか認識していなかった」と告白。珍しい色=おしゃれだと思い込み、高い黒い服は「どうせ黒じゃん、コスパ悪い」と考えていたそうです。シルエットや素材感という概念がまるでなかったのです。
「全ての毛」に専門サロンを指定
えりこさんが真っ先に手をつけたのは「毛」でした。髪の毛、眉毛、髭──それぞれに専門のサロンを指定し、通わせたそうです。
髪マジで大事。ってか一番大事かもしれない
美容室はえりこさんが当時通っていた担当・岡さんのサロンからスタート。岡さんが茨城に移転した後は家族総出で通ったこともあったそうですが、さすがに月1では厳しくなり、友人に紹介してもらった表参道のオムニバスへ。現在もカッピーさんはそこで月1回カットしてもらっています。
地味に見えるこの「月1美容室」が、えりこさんいわく一番インパクトがある変化だったとのこと。以前は「鬱陶しくなったら行く」程度で、3〜4ヶ月に1回だったカッピーさん。清潔感という点では、この頻度の変化だけでも見違えるほどの効果があったようです。
レーシックと髭の取捨選択
牛乳瓶メガネ問題を解決したのはレーシック手術。これはカッピーさん自身がもともと希望していたもので、視力0.01という「メガネを取られたら家に帰れない」レベルだったそうです。子供時代にケンカでメガネを奪われると本気で怒っていたというエピソードも語られました。
一方、髭については「残す」という判断に。鼻の下と顎の髭を剃ってみたところ、顔が薄くなりすぎて似合わなかったそうです。もともと薄い顔立ちのカッピーさんには、髭がある方が顔に立体感が出るという結論に至りました。
顔の印象が薄くなりすぎる。薄顔タイプには不向き
顔に立体感が出る。両方試した上で「ある方がいい」と確定
肌ケアにも着手し、毛穴汚れの除去やハイフHIFU(高密度焦点式超音波)の略。超音波を肌の深部に当て、たるみ改善やリフトアップを目指す美容施術。メスを使わないのが特徴。なども経験。「もともと肌に悩みはなかった」とのことですが、えりこさんの「これやってきて」の一声で通ったそうです。
服は「色」ではなく素材とシルエット
外見の土台を整えた後は、いよいよファッションの意識改革です。当時のカッピーさんは、シュプリームの原色アイテムを「攻めたおしゃれ」だと本気で思っていました。
転機となったのは、えりこさんと一緒に買い物に行くようになったこと。休日に子どもを抱っこしながら伊勢丹などを回り、「このブランド超似合うよ」と試着させていくうちに、カッピーさんの意識が変わっていきました。
えりこさんの指摘で気づいたのは、カッピーさんの体型(シュッとしていて足が長い)にはシンプルでスマートな服が似合うということ。派手な色の服は、顔立ちや体型に合っていなかったのです。
色=おしゃれ。ブランドロゴの大きさ、珍しい色で差別化。シルエット・素材・丈感は無視
素材感・シルエット・サイズ感・丈感で選ぶ。自分の体型に合ったシンプルなスタイルが軸
ジルサンダーとの出会いで目覚めたハイブランド体験
カッピーさんにとって「初めてのハイブランド路面店体験」となったのが、表参道のジルサンダーJil Sander。1968年にドイツのデザイナー、ジル・サンダーが創業。ミニマルで洗練されたデザインが特徴のラグジュアリーブランド。でした。
それまではファミリーセールで三宅一生ISSEY MIYAKE。日本を代表するファッションデザイナー・三宅一生が手がけるブランド。プリーツ加工の「プリーツ・プリーズ」などで知られる。の小物を買う程度。定価でハイブランドの路面店で買い物をしたのは初めてだったそうです。
ハイブランドを路面店で買うのってこんなに楽しいんだと思って
特にハマったのが、当時ジルサンダーのクリエイティブ・ディレクターだったルーク・メイヤーLucie and Luke Meier夫妻の一人。2017年からジルサンダーの共同クリエイティブ・ディレクターを務め、2024年に退任。元Supremeのヘッドデザイナーという経歴を持つ。自身のブランドOAMCも手がける。のデザイン。もともとシュプリームのヘッドディレクターだった人物で、ハイブランドにストリートの要素を落とし込んだスタイルが、カッピーさんの「大人っぽいストリート」という潜在的な好みにぴったりだったのです。
ゆったりしたシルエットで手持ちの服とも合わせやすく、着やすさもあったことから、どんどんのめり込んでいったそうです。えりこさんが誕生日にプレゼントしたボッテガ・ヴェネタBottega Veneta。1966年にイタリアで創業。「イントレチャート」と呼ばれる革の編み込み技法が代名詞のラグジュアリーブランド。の服も気に入り、ファッションへの探究心が加速していきました。
買って失敗して覚える ── オタク気質の成長術
約7年の「鍛錬」を経て、カッピーさんは自分でシュプリームの「着ていいもの」と「そうでないもの」を見分けられるようになったと言います。最近ではジップアップのフーディー1つ選ぶにも、袖丈・身幅の寸法やオンス生地の重さを示す単位。一般的に数値が大きいほど厚手でしっかりした生地になる。スウェットやデニムの品質を判断する指標のひとつ。(生地の厚み)を確認するようになったそうです。
もともとスニーカーとかもオタク気質な性格だから、全てにハマっちゃったらもうオタクになっちゃうんだよね
時計も同じパターンで、最初は「わかってないくせに高いのを片っ端から買って」ディスられたこともあったそう。しかし使いながら「なぜこれが好きなのか」を突き詰め、自分の好みを言語化できるようになっていきました。サングラスも似た形のものを5個買ってしまうほど「より自分にフィットするもの」を追求しています。
さらに成長を加速させたのが、アントレースUNTRACE。カッピーさんが関わるファッションブランド。デザイナーの小野さんが手がける。など洋服の仕事を横で見るようになったこと。アントレースのデザイナー・小野さんに「バレンシアガってドーンと書いてあるキャップ被ってる奴がうちのメンバーにいるんじゃねえよ」と言われたエピソードは、ロゴに頼らないファッション観を学ぶ転機になったそうです。
最近では祐天寺のヴィンテージショップのInstagramをフォローし、入荷情報をチェックしてレザージャケットを見に行くまでに。えりこさんも「本当に変わった」と感心していました。
最後の砦は「歯」
えりこさんに「今変えてほしいところは?」と聞かれ、上から下まで見回された結果、出てきた答えは「歯」でした。
歯を直したらもう完璧です
カッピーさんは矯正の予約をしたものの「一生行けない」と嘆いています。歯科医からはインビザライン透明なマウスピース型の歯列矯正装置。取り外し可能だが、食事や飲み物のたびに外して歯磨きし再装着する手間がかかる。の方が動く幅が大きいと言われたそうですが、えりこさんは自身の矯正経験から「マウスピースは絶対やらないと思う。ワイヤーにして」と強く主張。食事のたびに外して磨いて付け直す手間を、カッピーさんの性格では続けられないと見抜いています。
結局「一緒に歯医者に来て。ディレクションして」というカッピーさんに、えりこさんは「だから長男なのよ、あなたは」と呆れつつも「ディレクション代もらわないと」と笑っていました。次回は「かっぴー矯正を始めるの巻」になるかもしれません。
まとめ
今回の話で見えてきたのは、「垢抜け」は才能やセンスではなく、信頼できる人のディレクションと、本人の素直さの掛け算で実現するということです。カッピーさんが変われた最大の理由は、えりこさんの言うことを素直に聞けたこと。逆にえりこさんがディレクションできたのは、カッピーさんの体型や雰囲気に何が似合うかを見抜く目と、一緒に買い物を楽しむ関係性があったからでしょう。
「30代の今が一番着たい時に買うのに価値がある」というえりこさんの言葉は、おしゃれへの投資をためらう人の背中を押してくれるかもしれません。
- 垢抜けの第一歩は「毛を整える」こと。美容室を月1回の習慣にするだけで清潔感は大きく変わる
- 服は色やブランドロゴではなく、シルエット・素材・サイズ感で選ぶのが正解
- 自分の体型や顔立ちに「似合うもの」を知ることが最も重要。髭の有無も両方試して判断
- パートナーのディレクション × 本人の素直さが垢抜けの最大の近道
- 買って失敗して覚える体験型の学び方も、突き詰めれば立派な審美眼につながる
- 最後の仕上げは歯。次回に続く(かもしれない)
