プロコーチ・原田将嗣さんのしごと
今回のゲストは、パーソナルコーチングやビジネスコーチングを手がける原田将嗣さんです。個人向けのコーチングに加えて、チームビルディングのサポートも行っています。
活動の場はビジネスの現場だけにとどまりません。スポーツチームや、学校での学級づくりのアドバイスなど、幅広い領域で「チームをどうつくるか」に関わっています。
さらに、心理的安全性組織やチームの中で、対人関係のリスクを恐れず、自分の意見や不安を安心して発言できる状態を指す概念。近年、チームの生産性を高める要素として注目されている。についての研修を企業に提供する会社では、認定講師としても活動。研修やワークショップといった「学びの場づくり」も仕事にしています。
コーチングとの出会いと「変わる」体験
原田さんがコーチングに最初に出会ったのは、住宅会社で営業マネージャーを務めていた2007〜2010年ごろのことでした。マネジメントでつまずいた際に、コミュニケーションの手法として「コーチング的な関わり」があることを本やセミナーで知ったといいます。
当時学んだのは、一方的に教えるティーチング知識やノウハウを持つ側が、相手に対して答えややり方を教え伝える指導方法。コーチングと対比してよく語られる。ではなく、相手から引き出すのがコーチングだという関わり方でした。その後しばらくは、ビジネスの現場でコーチングスキルを使う形で触れ続けます。
転機は2017年。原田さん自身がプロコーチをつけ、パーソナルコーチングを受けたことでした。この体験を通じて「こういう仕事をしたい」と強く思い、プロコーチを目指すきっかけになったといいます。
会社員として学びを続けながら、2020年に独立。その決断もまた、パーソナルコーチングを受けながらゴールを設定していく中で生まれた行動でした。原田さんは自らを、コーチングによって行動を変えた「体験者の一人」だと語ります。
本当に変わるを経験した人間でもあるという感覚。
独立にあたって原田さんが掲げたのは「きっかけを作りたい」という言葉でした。ちょっとしたきっかけで人は変わる、という自身の実感が根っこにあるといいます。それはポジティブな変化にも、時にはネガティブな変化にも当てはまります。
そのきっかけを意図的に、体系立てて作れるものの一つがコーチングではないか——。原田さんはそう考え、「変わるきっかけ」を作る仕事へと進んでいきました。
なぜティーチングではなくコーチングなのか
「変わるきっかけ」を作るうえで、なぜティーチングではなくコーチングなのか。原田さんが挙げたのは「自分で決めることの大切さ」でした。
人から言われてやることも、信じてついていける相手であれば成り立ちます。それでも、自分で決めたことの方が行動しやすく、変わりやすいと原田さんは考えます。優れた人が優れたやり方や知識をいくら与えても、それを活かして変わるかどうかは本人次第だからです。
だからこそコーチングでは、本人が自分で決めることを後押しし、サポートすることを大切にします。自分で決めたからこそ、人は自分の人生を豊かに、自分の手で変えていける——。ここにコーチングの意義があるといいます。
知識ややり方を教える。「こうすると成功できる」と答えを与える関わり方。
「どうしたい?」と問いかけ、本人が自分で選び、進んでいくのを支える関わり方。
この考えに、パーソナリティの廣橋さんも強く共感します。廣橋さんは以前、河原あずさんと第1・2回ゲストの本木さんが運営していた、コーチング的なプロセスを取り入れた学びの場に参加していました。
そこでは毎回、自分がどうなりたいか、どう変わりたいかを言語化し、周りの人と共有していきます。その繰り返しの中で「口では言っているけれど、実は本質はここにあるのかも」と気づき、自分自身が大きく変わっていく感覚を得たといいます。
変わるを自分で経験してるって、なんか仲間だなと思って。
「明確化」が人を動かす理由
コーチングが人の変化に貢献できるのはなぜか。改めて言葉にしてもらうと、原田さんが挙げた核心は「言語化・明確化」でした。
「明確になればなるほど人は動く」と原田さんは言います。「将来こうなりたい」がぼんやりしたままではなく、いつ・どんな状態になり・どんな仲間とどんな貢献をするのか。そこまではっきりすればするほど、人はそこに向かって動き始めるからです。
明確にするのは、目指す姿だけではありません。マイナスに働く感情や思い込みといった、足かせになる要素も明確にしていきます。
原田さんが注目するのが「不安」の正体です。不安は、明確でないこと=不明確さから来ることが多い。自身の経験からも学びからも、そう感じているといいます。だからこそ、不安の中身も明確にしていくのです。
コーチングは答えを与えるものではありません。まだ言葉にできていないものを問いかけによって外に出してみる。すると「これは違うかな」とはっきりしたり、出してみたら意外と大したことのない不安だったと気づいたりします。自分の中から出してクリアにする——これがコーチングならではの大きな効果だといいます。
漠然とした不安
言葉になっていない、ぼんやりした状態
問いかけで外に出す
コーチの問いによって、頭の中のものを言語化してみる
明確になる
「意外と大したことなかった」「これは違う」とクリアになり、行動に向かえる
コンサルとコーチングの決定的な違い
同じ相談でも、ティーチングやコンサルティングを得意とする人に話すと、多くの知見をもとに「それってこうじゃない?」と言い当ててくれます。「であればこれだよね」と処方箋を出してくれるイメージです。
一方コーチングは、「何があるか分からない」ことを前提に、「今何があるか出してみてください」と掘り続けていくアプローチだと原田さんは説明します。
ここに違いが生まれます。与えられた処方箋は効くかもしれませんが、違うかもしれない。「偉い人が言っているなら、そういうことなのかな」と、100%の腹落ちがないまま渡される感覚が残ることもあります。
その点、コーチングは自分の中から答えを引き出すため、腹落ちや自分なりの納得感を作りやすい。廣橋さんは、コーチングは専門家が上から見るのではなく、クライアントと同じ目線で一緒に掘っていく点が面白いと語りました。
| 観点 | コンサル的な関わり | コーチング |
|---|---|---|
| 前提 | 知見から答えを持っている | 何があるか分からない |
| やり方 | 言い当てて処方箋を渡す | 問いかけて本人から掘り出す |
| 納得感 | 腹落ちしないこともある | 自分なりの納得感を作れる |
まだコーチングを学び始めたばかりという廣橋さん。この感覚をもっと聞きたいと、原田さんに次回への出演を依頼し、対話は続くことになりました。
まとめ
今回は、プロコーチの原田将嗣さんが「人が変わるきっかけ」について語りました。原田さん自身がコーチングによって独立という行動を起こした「変わる体験者」であり、その実感が仕事の原点になっています。
コーチが教えないのは、「自分で決めること」こそが人を動かし、変化を生むからです。そのために、なりたい姿も、足かせになる不安も含めて言語化・明確化していく。答えを渡すのではなく、本人の中から引き出すからこそ、深い納得感とともに人は行動を変えていける——。そんな学びの詰まった回でした。
- 原田さん自身がコーチングを受けて独立を決めた「変わる体験者」であり、それが仕事の原点になっている。
- コーチが教えないのは、人から言われるより「自分で決めた」ことの方が行動しやすく、変わりやすいから。
- なりたい姿を明確にするほど人は動き出す。「明確になればなるほど人は動く」。
- 不安の多くは「不明確さ」から来る。問いかけで外に出すと、意外と大したことのない不安だと分かることがある。
- 処方箋を渡すコンサル的関わりに対し、コーチングは本人から答えを引き出すため、自分なりの納得感を作りやすい。