全15回の予告、なぜ今Meta社なのか
ハイパー起業ラジオの新シリーズで取り上げるのは、Facebook、Instagram、WhatsAppなどを運営するMeta社です。尾原さんは、全15エピソードほどになる見込みで、番組史上最長のシリーズになるかもしれないと話します。
だって、今回のシリーズは僕が詳しいだけじゃなくて、へたするとけんすうが喋りすぎてしまうかもしれないシリーズなんですよ。
長くなりそうな理由は、Meta社がSNSの会社だからです。尾原さんは、SNS好きのけんすうさんが話題を足していき、1編のつもりが2編に膨らむような展開を予想しています。
リクルート編では尾原さんもけんすうさんも在籍経験があり盛り上がった一方、Netflix編は海外企業のため、けんすうさんの解像度が高くない部分もあったといいます。Meta編はその点で、二人とも語れる題材だと位置づけられています。
月間33億人、地球人口の半分が使うMeta社の規模
Meta社の影響力について、尾原さんはまず数字を示します。Meta社全体の月間利用ユーザーは33億人で、インターネットにつながっている人が45億人とされる中、ほぼ全員が使っている規模だといいます。
けんすうさんは「地球人口のほぼ半分」と驚きます。使っていない人はほとんどいないのではないか、というレベルでMeta社のサービスは日常に溶け込んでいます。
尾原さんによれば、Meta社は世界の時価総額でも5位まで戻っています。さらに、世界一の資産家がイーロン・マスクで、2番目がマーク・ザッカーバーグだという話も出ます。
一時期は「落ち目」と思われていたMeta社が、ここまで期待を集め直している理由を深掘りしたいというのが、尾原さんの狙いです。時価総額や個人資産は、周囲から「未来に伸びる」と期待されている指標だという見方が示されています。
リクルート編・Netflix編で語れなかった2つの観点とは
尾原さんは、これまでの企業深掘りシリーズを振り返り、抜け落ちていた観点が2つあったと反省を口にします。1つ目は「経営」、2つ目は「ネット企業同士の競争」です。
リクルート編では、個々の事業や組織の成功パターンを話した一方、それは執行の話ばかりで、多数の事業を抱える会社としての経営の話はあまりできなかったといいます。
Meta社は、Facebookで創業し、Instagramを買収し、WhatsAppを買収しました。SNSが収益の95%以上を占めているにもかかわらず、社名をメタバースに由来するMetaへ変えています。
今年の彼らの目標は、彼らのAIユーザーの月間利用者が10億人に、ライバルより一番先に到達するということがこの10年の中で最も重要な戦略だっていうことを今マーク・ザッカーバーグは言ってるんです。
メタバースの名前を冠しながら、今もっとも重要な戦略にAIを据える。尾原さんは、こうした経営と執行のダイナミクスを語りたいと話します。AIを重視する理由は、シリーズの10回目あたりで解説する予定だといいます。
2つ目の観点は、ネット企業同士の競争です。Netflix編はピボットを重ねて勝利する話でしたが、ライバルのブロックバスターやディズニー、映像会社はネット専業ではありませんでした。
事業ごとの執行の話が中心。Netflixのライバルはブロックバスターなどネット専業ではない企業
複数事業を抱える経営と執行の両方を扱い、ネット専業のライバル同士の競争を描く
ジャンルの発明者と勝者は違うのか
ネット企業同士の競争を語るうえで、尾原さんが軸に据えるのが、けんすうさんが以前から話していた「ジャンルを発明した人と勝ち残った人は違う」という考え方です。
例として挙げられたのは、Googleが最初の検索エンジンではないこと、Amazonが最初のeコマースプラットフォームではないことです。尾原さんは、Metaの歴史に入る前に、この全体像を初回で話したいと説明します。
この視点に立つと、SNSでもFacebookが最初の存在ではなく、多くの先行サービスの要素を取り込んで勝ち残ってきたことが見えてきます。
SNSはネットワーキングからソーシャルメディアへ
本題として尾原さんが投げかけたのは、「SNSは何の略か」という問いです。けんすうさんは「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」と答えます。
今世の中で増えている、そのXだとか、あと、まあ、Facebook自体もInstagramも、今ソーシャルネットワーキングサービスですか?
けんすうさんは「違いますね」「ソーシャルメディアですね」と即答し、アメリカでは昔からソーシャルメディアと呼ばれていたのではないかと返します。
尾原さんによれば、呼び方は途中で切り替わっています。Facebookは友達とつながるネットワーキングサービスとして始まりましたが、今の利用者はショート動画やニュースなどのコンテンツを、ソーシャルの要素の中でメディアとして見ています。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス。友達とどんどんつながっていくことが中心
ソーシャルメディア。ショート動画やニュースなどのコンテンツをソーシャルの要素の中で見る
尾原さんは、けんすうさんから驚きの反応が来ると思っていたものの、けんすうさんにとっては当たり前すぎたと笑います。
Facebookより先にあったSNSの先駆者たち
SNSを分解するとどうなるのか。けんすうさんは、Facebookの原型を、友達とつながれるフレンドスター ── 2002年に始まった、友達同士のつながりを可視化するSNSの先駆け的サービス。一時は大きく成長しましたが、後発のSNSに押されて衰退しましたのようなサービスと、大学内の顔と名前が載った名簿サイトの掛け合わせだとイメージしています。
尾原さんはこの見立てを「さすが」と受け、年代を補足します。Facebookの誕生は2004年ですが、フレンドスターはその2年前の2002年、仕事をする人同士がつながるLinkedInも2002年に始まっています。
さらに遡ると、1997年には6 Degreesというサービスがありました。グリーの名前の由来とも話される、世界中の人は6人を経由すれば誰とでもつながるという理論にちなんだサービスです。
6 Degreesは当時100万人を超える規模になりながら、儲からずに倒産しています。尾原さんは、友達とつながるネットワーキングサービスという点で見れば、Facebookは結構後発だったと指摘します。
けんすうさん自身も、当時のFacebookには「後発のニッチサービス」というイメージがあったと振り返ります。
プロフィールの源流はパソコン通信にあった
SNSが使われる理由は友達とつながることだけではありません。けんすうさんは、最もプリミティブな機能としてプロフィールの更新が見られることを挙げ、そこから友達の近況が投稿でわかる方向に進んだと説明します。
尾原さんによれば、プロフィールを見る機能は、日本のニフティサーブにあたるアメリカのCompuServeの時代から存在しました。アメリカではAOLも大きな存在でした。
当時は、インターネットにつながるために電話回線でどこかへ接続する必要がありました。最初に接続する場所に多くのユーザーが集まり、そこがプロフィールページなどを拡張していったというのが尾原さんの説明です。
プロフィール機能は1991年のCompuServeの中にあり、プロフィールに特化したウェブサービスとしては1995年にThe Globeが始まっていたといいます。けんすうさんはパソコン通信には触れておらず、ワールドワイドウェブから使い始めた世代だと話しています。
SNSの3本柱、メッセンジャーの歴史
尾原さんは、SNSを支える3大柱を「友達とのつながり」「プロフィール」「メッセンジャー」だと整理します。
メッセンジャーについて尾原さんは、メールでは重いやりとりを、つながっている友達ならワンクリックで短文で送れる点が重要だと説明します。メールは1日に2、3回見ればいいものでも、友達からのメッセージはリアルタイムでやりとりしたくなります。
厳密には1970年代にMITで作られたサービスが先行していましたが、一般に広がったのはAOLがメッセンジャーを作ったことがきっかけだといいます。1996年にはICQも登場し、けんすうさんも使っていたと話します。
尾原さんは、AOLのメール着信音にときめく人がいたことから、トム・ハンクス主演の恋愛映画も生まれたと触れます。1990年代後半は、知らない人とつながり、リアルタイムの更新で関係を深めていくときめきが生まれた時代だったといいます。
でも確かにメッセンジャーサービスはもう90年代から結構ちゃんとあって、インターネット上の人とリアルタイムでやりとりする、つまり、まあ、今でいうインスタのDMとかLINEとを同じようなことはもうされてたんですよね。
なぜ先行サービスは消え、Facebookだけが残ったのか
メッセンジャーの先行サービスは、その後どうなったのでしょうか。尾原さんによれば、ICQは中国でQQとして模倣され、それを原型にWeChatが中国語圏で最大級のメッセンジャーになりました。それでも、この時期に出たサービスの多くはほぼ消えています。
けんすうさんも、Facebookがメッセンジャーを始める前はMSNメッセンジャーを使っていたと振り返ります。そのMSNメッセンジャーも、日本で大きかったYahoo!メッセンジャーも、すでに終了しています。
尾原さんは、背景にある原理としてネットワークエフェクト ── 利用者が増えるほどサービスの価値が高まる現象。仲間が多い場所にさらに人が集まるため、先行して大きくなったサービスが有利になりやすいとされますを挙げます。仲間がいる場所に人が集まり、仲間外れになりたくないから入らざるを得ない、という原理です。
なぜFacebookだけが強く生き残ったのかっていうところが大事なところですね。
けんすうさんは、MSNにはHotmailのアカウントがあり、メールでつながる相手とすぐやりとりできたと指摘します。近年でも、GmailとOSを押さえるGoogleがメッセンジャーで勝つと言われ続けながら、結局戦えていないといいます。
Google+、Viber、Orkut。尾原さんが挑んだ戦い
Googleの挑戦について、尾原さんは2011年のGoogle+を挙げます。Facebookを上回るために鳴り物入りで出され、AKBのメンバー全員が投稿する施策もありましたが、失敗に終わりました。尾原さん自身が、その日本の事業開発を担当していたと明かします。
けんすうさんが楽天によるViberの買収に触れると、尾原さんは「俺の闇を掘り下げてきた」と笑いつつ反論します。Viberは今でもイランでナンバーワンで、世界17カ国ほどでトップだといいます。
まあ、でも逆に言うと、こんだけ尾原がいろんな理屈をわかってたとしても、敵わないことって、なんで敵わないのかっていう話もいっぱいあるわけで。
話はさらに、学校の情報を軸にしたClassmates.comのようなサービスや、GoogleがブラジルでヒットさせたOrkutに及びます。けんすうさんは、日本でSNSが流行ったきっかけはOrkutだった印象があると話します。
Orkutは2004年、Facebookと同じ年に始まり、ブラジルで人気を集め、日本にも影響を与えました。それでも負けています。けんすうさんは、Googleが先に始めて成功していたのに負けたことを「面白い」と受け止めています。
Instagramはどうやって先行者と新興勢力に勝ったのか
尾原さんは、Facebookだけでなく、Instagramの成功も見逃せないと続けます。Instagramは当初デートマッチングサイトとして始まろうとしていたもので、写真共有ではFlickrという先行サービスがありました。
さらにInstagramは、後から登場する先進的なサービスにひっくり返されるリスクとも戦い続けてきました。代表例が、Twitterが買収した6秒動画のVineです。
けんすうさんは、ネットワーク効果を考えれば先行する強いサービスが勝ちやすいはずなのに、Meta社はそうならない局面でも勝っていると整理します。
尾原さんによれば、Facebookは先発が多い中で後発として勝ち、Instagramはライバルが新しいネットワークを次々に作る中でも生き残り続けています。けんすうさんは、レガシーなサービスが新しいサービスのフレッシュさに負けるという通説に反している点に注目します。
っていう風に、実は振り返るとやべえ会社なんですよ。
10年前から予告されていたAIとメタバース戦略
尾原さんが「さらにやばい」と強調するのは、Meta社のAIとメタバースへの取り組みが、実は2016年の開発者向けイベントで10年戦略として示されていたことです。
尾原さんによれば、2025年の今、Meta社はメタバース向け端末でトップの会社であり、AIでもオープンモデルとして一角を占めています。10年前に掲げた3つの柱のうち2つを当てているという点に、尾原さんは驚きを示します。
3つ目のコネクティビティは、インターネットにつながる場所を増やす取り組みです。Facebookのユーザーが頭打ちにならないよう、太陽光で飛び続ける大型ドローンを電波のアンテナにする計画などがありましたが、現在は終了しています。
尾原さんは、Facebookを経営として重心を丁寧に置きながら後発でも巻き返し、後から穴を突いてくる相手にも勝ち残り続けている会社だとまとめます。だからこそ、経営と執行の両方を語れる題材としてMeta社を選んだといいます。
シリーズの構成と第1話の予告
シリーズの構成も示されました。最初はしばらく執行の話で、Facebookがなぜ後発なのに世界中で使われるサービスになったのかを6〜7エピソードほどで語る予定です。
尾原さんに「喋れるでしょ?」と振られたけんすうさんは、「めちゃくちゃ喋れそう」と応じます。Facebookの立ち上げだけでもずっと話せそうだという期待がにじみます。
次回の第1話では、ハーバード大学で生まれたFacebookが、大学のキャンパスという第1フェーズを埋め尽くすまでを語る予定です。
まとめ
Meta編の初回は、Meta社の規模と、SNSの歴史を振り返る回でした。友達とのつながり、プロフィール、メッセンジャーのいずれにも先行サービスがありながら、Facebookは後発として勝ち残り、Instagramも新興勢力に勝ち続けています。そしてMeta社は10年前からAIとメタバースを見据えていました。
- Meta社の月間利用ユーザーは33億人で、インターネット利用者45億人のほぼすべてに届く規模
- SNSは友達とつながるネットワーキングサービスから、コンテンツを見るソーシャルメディアへと性格を変えた
- 6 Degrees、フレンドスター、ICQ、Orkutなど多くの先行サービスがあり、Facebookは後発だった
- Instagramは、Vine、Snapchat、TikTokなど後発の挑戦を受けながら生き残り続けている
- 2016年に掲げた10年戦略のAI・メタバース・コネクティビティのうち、2つを実現しつつある


