番組コンセプトと2人の役割
「ハイパー起業ラジオ」は、IT業界に長くいる尾原さんに、けんすうさんが疑問をぶつけて教えてもらう形式の番組です。世界で使われているネットサービスの裏側にある思想や考え方を、幅広く解きほぐしていきます。
尾原さんは、インターネットを「みんなにとっての武器」と位置づけています。生成AIによって誰もがサービスを作れる時代に、いいものが広がらず続かないのはもったいない、という思いがあるからです。
本当僕、インターネットって、みんなにとっての武器だと思うんですよね。 いいものができても広がらない、いいものができても続くものにならないっていうのは本当もったいないことだと思ってて。
アメリカのネットサービスには「長く続く」「勝手に広がる」「ユーザーから選ばれ続ける」ための秘訣が蓄積されています。一方、日本ではそうしたノウハウを体系化する余裕がある人がまだ少ない、というのが尾原さんの問題意識です。
アメリカだと起業家の人口が多いし産業も大きいから、僕みたいにまとめるだけの人みたいな人でも生きれるんですよね。それが日本はまだ僕ぐらい、まあ何人かいらっしゃるんですけど、あんまりそういう人がいないので、それをちゃんとまとめていけたら嬉しいなみたいなところがあったりするわけですよ。
けんすうさんも、長くIT起業家として活動してきた中で、定番のフレームワークや考え方を「表面的にしか理解できていない」と感じる場面があったと打ち明けます。海外の本やブログを読んでも、表面だけ真似ては使えない、という実感です。
シリコンバレーで売れてる本を読んだりとか、海外のブログ記事読んだりしてるものの、なんかこうちょっと表面的な知識しか入っていなくて、それを表面的に真似したとて全然使えないみたいな感じがするので。
そこで、個人的に尾原さんへぶつけていた質問を、ポッドキャストとして公開してしまおう、というのが番組の出発点になっています。
尾原さんは自分の説明が「切れ味が鋭すぎる」「ガンダムの例えが50代にしか伝わらない」と語り、けんすうさんとの掛け合いで、より分かりやすい言葉にしていきたいと話します。
尾原さん言ってることは良さそうなんだけれども、切れ味が鋭すぎて誰もこれコメントできませんよとか、ついつい僕の世代のガンダムのエピソードに合わせて説明すると、結局それって50代の人しかわかんないですよねみたいなことになったりするので。
シリーズのテーマ「ネットワーク効果」
初回シリーズのテーマは「ネットワーク効果」です。IT業界では誰もが聞いたことのある言葉ですが、けんすうさんは「全員知っているぐらいの気持ちでいる」と表現します。
しかし尾原さんは、そのネットワーク効果こそ深掘りすべき領域だと切り返します。きちんと理解すれば16種類に分解でき、導入には5段階のフェーズがあり、さらにAIとの関係まで広がっている、というのです。
ネットワーク効果なんてちゃんとわかってれば16種類に分解できるし、かつネットワーク効果をちゃんとインストールしようとすると5段階のフェーズってものをきっちり分けて考えなきゃいけないし。さらにはもう最近ネットワーク効果ってどんどん進化していって、AIを絡めた場合どうなるんだみたいな話になってたりとか、むちゃくちゃ解像度高くなってるわけなんですけど。
けんすうさんは現状の理解として、「LINEは友達が使っているほうが使いやすい」「人が多いサービスはより強くなる」というイメージを挙げます。これは多くの人が持つ典型的な認識です。
ネットワーク効果ってどう説明していますか?
友達がたくさんいるサイトのほうが人が来るので、より強いサービスになっていく、という認識。
尾原さんによれば、これはネットワーク外部性ユーザーが増えるほど、サービス自体の価値も高まる現象。電話やSNSのように利用者が多いほど便利になる構造を指すと呼ばれるもので、ネットワーク効果を大きく2つに分けたうちの片方にすぎないと言います。
それが「ネットワーク外部性」と呼ばれるもので、まあネットワーク効果を2つに大分したときの片方しか実は言ってないっていう、もったいない、惜しい、っていう感じなんですよ。
シリーズ全体の構成
シリーズはおおよそ13回程度を想定して構成されています。尾原さんは「コテンラジオ」を引き合いに、本題に入る前の前提づくりを丁寧にやりたいと話します。
コテンラジオって大体主人公出てくるの6回目ぐらいじゃないですか。 ネットワーク効果をちゃんと解説するのは3回目ぐらいかなみたいな感じで考えてますね。
ネットワーク効果に入る前に押さえておきたい言葉として挙げられるのが「戦略」と「MoatWarren Buffettが広めたビジネス用語で、城の周りの堀のように、競合が参入しにくくする構造的な参入障壁のこと」です。どちらも日常的に使われる一方、定義が曖昧なまま語られがちな言葉です。
全体像としては、まず「戦略」を整理し、次にGAFAやテスラのようなテックジャイアントがなぜ勝ち続け、時価総額が伸び続けるのかという視点から基本編に入っていきます。
ユニコーンどころかデカコーンであるそのGAFAだとか、Google、Amazon、今MetaのFacebook、そしてAppleといった会社だったり、最近でいうとテスラなど。 こういったテックジャイアントと呼ばれるものが、なんで勝ち続けるだけじゃなくてずっと時価総額上がり続けたりとかするのかっていう話を、やっぱりちょっと基本編で話させていただいて。
前提編
戦略とMoatの再定義
分類編
ネットワーク効果を分類し直す
事例編
Amazon・テスラ・TikTokなどの実例
応用編
生成AIや個人への適用
さらに、Amazonやテスラ、TikTokなどがどのようにネットワーク効果をプロダクトに組み込み、ユーザーから選ばれ、収益と時価総額を伸ばしていったのかを具体的に扱う予定です。
加えて、生成AIとネットワーク効果の相性のよさ、そして組織だけでなく個人がどうネットワーク効果を使えるかにも触れていきたい、と尾原さんは話します。
ネットワーク効果マジ大事なので、大きな企業の中で組織として使っていく話だけじゃなくて、実は個人もめちゃめちゃネットワーク効果って使えるので、個人がネットワーク効果をどう使っていくのかみたいなところの話もできたらなって思ってんですよね。
なお番組名「ハイパー起業ラジオ」は、名前が決まらず仮で付けたものだと明かされます。今後変わる可能性もある、ゆるい船出です。
「戦略」とは戦いを略すこと
初回の本題は「戦略とは何か」です。けんすうさんは普段、「市場の中で独占的な立場になって利益を上げ続けるための方法」と捉えていると答えます。
市場の中で独占的な立場になって利益とかを上げ続けるための方法みたいな感じで捉えてますね。
尾原さんは「最終的にはそれです」と肯定しつつ、戦略という言葉そのものを漢字から読み解きます。鍵は「戦」と「略」という構成です。
戦略って、なんかこの本をどう売りたいかみたいなことも戦略って言ったりとか、このカツをどう作るかみたいなことも戦略って言ったりするんですけれども、戦略ってやっぱり日本語ってすげえ漢字に意味が込められてるから。
尾原さんによれば、戦略とは「戦いを略すことができるやり方」です。孫子の戦わずして勝つ孫子の兵法に由来する考え方で、正面からの衝突を避け、状況づくりによって優位を確保することを重視する戦略思想という思想と重なる発想です。
ビジネスに置き換えると、戦略とは「ユーザーがなぜかうちのサービスを選び続けてくれる状態」と「美味しいビジネスでも競合が入りたくても入れない状態」を作ること、と尾原さんは整理します。
戦略を支える2つの優位性
尾原さんは、戦略を「顧客選択優位性の確保」と「持続的競争優位性の担保」という2つの軸で定義します。難しく聞こえる言葉ですが、中身はシンプルです。
戦略っていうのは僕は「顧客選択優位性の確保」と「持続的競争優位性の担保」っていう、この2つを揃えることが僕は戦略だというふうに、これ尾原個人は思っていて。
1つ目の「顧客選択優位性」とは、お客さんから選ばれる魅力が仕組みとして増えていくことです。2つ目の「持続的競争優位性」とは、ライバルが参入したくてもできない仕掛けが、時間とともに積み上がっていくことです。
お客さんから選ばれる魅力が、仕組みとして増えていく状態
ライバルが入りたくても入れない仕掛けが、積み上がっていく状態
この2つが揃って初めて「戦いを略する」ことができ、ネットビジネスにおける戦略と呼べる、というのが尾原さんの定義です。
けんすうさんは具体例としてGoogleを挙げます。今からゼロから検索エンジンを作ろうとは思わないし、ユーザーもGoogle以外を使おうとはあまり思わない、という二重の強さです。
Googleとかを想像すると、僕とかがもう検索エンジン作ろうってもう思わないし、お客さんもGoogle以外の検索エンジン使おうとあんまり思わないみたいなのがあるので、とてつもなく強いっていうことですね。
Googleに見る、回り続けるループ
Googleの強さを支えているのは、検索結果が使われるほど良くなる仕組みです。広大なネットからデータを集める力に加え、ユーザーがクリックすることで「どのデータが良いか」が分かる、という構造があります。
Googleの検索結果っていうものは、いかにネットの中から広大なデータを持ってくるっていう話以外に、Googleの検索結果をユーザーがクリックしてくださることによって「あ、このデータがいいデータですね」ってことがわかるわけですよね。
クリックという行動が次のユーザーへの検索結果を改善し、その改善がさらに多くのユーザーを呼び込みます。プロダクトが使われるほど磨かれていく、典型的なループです。
ユーザーが使う
検索クエリとクリックのデータが集まる
結果が良くなる
クリック情報をもとに検索結果の質が上がる
さらに選ばれる
他の検索より良い結果が出るので、より使われる
尾原さんはこの構造を「ネットワークがぐるぐる回る」と表現します。次回以降、このループをより細かく分解しながら、ネットワーク効果の世界に入っていくことになります。
まとめ
初回は、シリーズのテーマであるネットワーク効果に入る前段として、「戦略」という言葉の意味を整理する回でした。戦略を「戦いを略すこと」と捉え直し、顧客から選ばれ続ける仕組みと、競合が入れない仕組みの2つを揃えることが、ネットビジネスの強さを支えていることが見えてきました。
- 番組はけんすうさんが尾原さんに問いを投げ、表面的になりがちなIT・ビジネスの定番概念を深掘りしていく構成
- 初回シリーズのテーマは「ネットワーク効果」で、全体はおおよそ13回構成、ネットワーク効果の本題に入るのは3回目あたりが目安
- 「戦略」とは「戦いを略すこと」であり、孫子の「戦わずして勝つ」の発想に近い
- 尾原さんは戦略を「顧客選択優位性の確保」と「持続的競争優位性の担保」の2軸で定義する
- Googleはユーザーのクリックが検索結果を改善し、さらに選ばれるループを生み出している典型例
