「日本はハイコンテクスト」の出典は実在するのか?
公開収録の謬説ナイトは、「正しくないのに、なんとなく世の中に広まっている説」を持ち寄る企画です。堀元さんは謬説には独特の魅力があると考えていましたが、水野さんは「単に間違っている説を間違っていると話すだけ」のつもりで、言語学縛りのネタを用意してきました。
水野さんの1つ目の謬説は「日本語はハイコンテクスト、英語はローコンテクスト」です。会場で聞いたことがあるか尋ねると、ほぼ全員が手を挙げました。
この説には、SNSなどで広く出回っている図があります。日本をハイコンテクストの頂点に置き、中国、アラブ、ギリシャ、イギリス、フランスと続き、最後にアメリカ、ドイツ、スイスがローコンテクスト側に並ぶ図です。ここでいうコンテクストは、言葉にならない情報のことだと水野さんは補足しています。
この図の右下には「出典: エドワード・T・ホール ── アメリカの文化人類学者。異文化コミュニケーション研究の先駆けとされ、ハイコンテクスト・ローコンテクストという概念を広めたことで知られます『文化を超えて』」と書かれています。ところが水野さんによると、その本にはこんな図は載っていません。
唯一の欠点は、エドワード・ホールの『文化を越えて』にはこんな図が載っていないってことなので。
なんでだよ。誰かが捏造したぞ、おい。犯人おるぞ、多分。
水野さんの話の出典は、言語社会学者の寺沢拓敬先生が書いた「『日本人はハイ・コンテクスト文化、○○人はロー・コンテクスト文化』論にまつわる誤解」という記事です。それによると、ホールの本はイメージとしては「お気楽エッセイ」に近いものだそうです。
さらに、1980年代以降にこの説を確かめる実証研究が行われましたが、正しさを証明できたものはほとんどなく、逆に反証してしまう結果も多かったといいます。そのため、この説を信じている研究者はあまりいないと水野さんは話します。
お気楽なエッセイ
ホールの『文化を超えて』は厳密な事実の発表ではなかった
存在しない図の流布
国別ランキングの図が、ホールを出典として表示されてSNSで広まる
実証の失敗
80年代以降の研究でも、説の正しさはほとんど証明されなかった
一人歩き
日本語はハイコンテクスト、英語はローコンテクストという説が定着
堀元さんは、出典が示されていると原典に当たる人が少ないため、多くの人が納得してしまうと指摘します。コミュニケーション本では、「ハイコンテクスト文化だから」と書いたほうが根拠なく指示を書くより格好がつく、という事情もありそうです。
水野さんは、「日本人は英語話者に比べてものを言わない」という話を裏付けたい人にとって、それを言っていそうな本がたまたま近くにあったのだろうと考えています。
大きい皿だと食べすぎる、は本当か?
堀元さんが最近読んだのが、科学の再現性問題を扱った本『Science Fictions ── 科学研究の不正、誇張、統計の誤用などを批判的に検証した一般向けの本。著者は心理学者のスチュアート・リッチー』です。水野さんも話題になっていたので買ったものの、まだ読んでいないといいます。
水野さんね、これ読むとね、俺今までドヤ顔でひけらかしてたやつ全部再現性ねえってなってめまいがします。
堀元さんが例に挙げたのは、「人は大きい皿で出されるとたくさん食べてしまう」という有名な研究です。大きい皿だと少なく盛られているように感じて食欲が増し、小さい皿だと食べる量が減る、という話で、医療に応用されたこともありました。
この研究の主はワンシンクという研究者で、食に関する面白い研究を数多く出し、引用数も非常に多かったそうです。しかし典型的なPハッキング ── 統計的に有意な結果が出るまで分析や実験を繰り返すなど、p値を都合よく操作すること。実際にはない効果をあるように見せてしまいますだと批判され、コーネル大学を辞したと堀元さんは紹介しています。
水野さんは、チャールズ・スペンスの『「おいしさ」の錯覚』を読み、こうした衝撃的な事例を集めて得意げに話していたと動揺します。堀元さんは、全部ではないにせよ大部分は怪しいかもしれないと返しました。
その人(ワンシンク)俺に実験してくれればよかったのに。いくらでも出しますよ。再現性出しまくりますよ。
ここから堀元さんは、学生時代に先輩の実験に付き合ったときの話をネタとして披露します。ロボットがまばたきをするときとしないときで親近感が変わるかを調べる実験だと察し、まばたきするほうに好意的に振る舞ってしまったというのです。
こういうことやるから再現性の危機が起こるんだってね。皆さんは絶対やらないようにお願いします。
「しなやかマインドセット」の効果はどれくらいか?
『Science Fictions』には、ほかにも誇張された知見が次々に出てくるそうです。たとえば、犬やキツネを家畜化すると耳が垂れて顔が丸くなるという家畜化症候群 ── 動物を家畜化すると、垂れ耳や丸い顔、まだら模様など共通の身体的特徴が現れるとされる現象も、ゼロではないものの、多くの本でかなり誇張して書かれていると指摘されていました。
堀元さんが特にショックを受けたのは、自己啓発本『スイッチ!』で紹介されていた「カチコチマインドセット」と「しなやかマインドセット」の話です。能力は生まれつき決まっていると考えるのがカチコチ、人は変われると考えて努力するのがしなやかで、後者の人ほど幸福度が高く、その考えを持つ先生は生徒の成績を大きく伸ばす、という内容でした。
堀元さんは5年ほど前、人を切り捨てる傾向がありましたが、この本を読んで人は変われると信じようと誓ったといいます。ところが『Science Fictions』によると、効果は非常に小さいものでした。
先生の考え方ひとつで、生徒の成績や人生が大きく変わる
統計的に有意ではあるが、テストが60点から61点になる程度の小さな効果
ただそれは60点だったテストの点が61点になる話であって、みんなの人生が大きく変わりますみたいな話じゃないですって。
水野さんは、認知的なタスクの成績が上がったという実験結果が、「頭が良くなった」「仕事ができるようになった」という話にすり替わることはよくあると話します。簡単なテストの点数と自分の業務は関係ないかもしれないのに、「パフォーマンスが上がる」と受け取ってしまうのです。
なぜそうなるのかについて、堀元さんは本の内容を引いて「共犯関係」だと説明します。消費者は「頭が良くなった」という説明を求め、研究者も驚かれたいので結果を面白く盛ってしまう、という構図です。
あー、いや、耳痛いというか。自分が責められてるみたい。
NASAも盛った?ヒ素生命体と窒素の名前
堀元さんによると、『Science Fictions』にはNASA ── アメリカ航空宇宙局。宇宙開発や宇宙生物学などの研究を担う米国の政府機関による「ちょい盛り」も出てきます。一時期話題になった、ヒ素で代謝できる生命体の発表です。
地球の生命は特定の物質がないと代謝のサイクルを作れないと考えられていたため、ヒ素で代謝する生命体がいるかもしれないという話は非常にセンセーショナルでした。堀元さんは、予算を増やしてもらうチャンスだと勇み足になったのではないかと推測しています。
実際には、ヒ素を入れた際に別の物質が混入していたらしく、結果はそういうことではなかったようです。堀元さんは、この本にはコンタミ ── コンタミネーションの略。実験で試料に別の物質や微生物が混入し、結果が汚染されることの話もたくさん出てくると話しています。
水野さんは「原因の取り違え」の例として、窒素の名前の由来を持ち出します。ロウソクを燃やした容器にマウスを入れて死んだあと、残った気体を調べると大部分が窒素だったため、窒息の原因は窒素だとされた、という話です。実際には酸素がなかったから死んだだけで、窒素に窒息させる効果はないといいます。
ただ、堀元さんはすぐに「謬説ナイトで謬説を喋っているリスクがある」と気づきます。二人は窒素の由来を後で裏取りすることにし、間違っていたらテロップを出すと約束しました。
こういう本とか読むとね、もう怖いんだよね。裏取りしてないこと喋るのが。
イヌイットの雪を表す語彙は本当に400以上あるのか?
水野さんの次の謬説は、堀元さんが「ぶっちぎりの言語学クリシェ」と呼ぶ「イヌイットには雪を表す語彙が非常に多い」という話です。雪の多い地域に住むため、雪を細かく区別しているという説明です。
北海道出身の堀元さんが、雪の語彙が多いから世界の認識が違うと冗談を言い、サピア=ウォーフ仮説 ── 言語が話し手の思考や世界の認識に影響を与える、あるいは決定するという仮説。強い版と弱い版がありますを持ち出します。水野さんは、語彙の多さと認識の違いは別の話で、認識がまったく異なると主張するなら強いサピア=ウォーフの仮説になると整理しました。
水野さんによると、イヌイットの雪の語彙は、ある記述では400以上とされています。一方、ある辞書では2つで、寛大に数えても1ダース、つまり12ほどです。
え?俺らより少ないじゃん。ぼたん雪、粉雪、ざらめ雪でもう超えてますよ。
イヌイットの雪という単語の数は、なんとだいたい日本語とか英語と同じぐらい。
この嘘がどこから来たのかは、スティーブン・ピンカーの『言語を生みだす本能』に書かれているといいます。出発点はサピアの師匠にあたるフランツ・ボアズ ── アメリカ人類学の父と呼ばれる人類学者。北米先住民の言語や文化を研究し、サピアらを育てましたでした。
キンゼイ報告の11%が「半分」になった理由
堀元さんは、雪の語彙と同じように数字が膨らんだ例として、「農家育ちの青年の半分は獣姦の経験がある」という説を紹介します。性の文化史などの本を大量に読む中で、怪しい一般書に何度も出てきたそうです。
この説も、ハイコンテクスト論と同じく出典が明記されています。1948年、アルフレッド・キンゼイのキンゼイ報告 ── アメリカの性科学者アルフレッド・キンゼイらが、聞き取り調査をもとに男女の性行動をまとめた報告書。当時大きな反響を呼びましたによるものだとされています。
しかし原典に当たると、書かれているのは「田舎育ちの青年の11%は獣姦の経験がある」でした。水野さんは、雪の語彙の誇張に比べればかわいいものだと返しています。
堀元さんは、数字が膨らんだ理由を「周りに数字が多すぎる」ことだと考えています。統計調査の文献なので、近くに別の数字がたくさん並んでいるのです。
堀元さんは、これらの数字をざっと読んだ結果、「田舎育ちの50%は獣姦の経験がある」という話になったのではないかと推測します。また、キンゼイ報告はサンプルの3分の1ほどが囚人だったとされ、サンプルの偏りが後に批判されたことも付け加えました。
これ数字の羅列のせいで生まれてる謬説な気がするな。
水野さんは、書いた人自身が「半分」側だったので、仲間が多いと思いたかったのかもしれないと冗談を飛ばします。堀元さんは、その「希望が目を眩ませる」話も『Science Fictions』に出てくると話しました。
日本語の起源はタミル語、と言われたのはなぜ?
水野さんが次に挙げたのは「日本語の起源はタミル語である」という説です。唱えたのは、『日本語練習帳』などで知られる日本語学者の大野晋 ── 国語学者。古代日本語の研究で多くの業績を残し、一般向けの著書も多数ありますです。
大野さんは『日本語の源流を求めて』などで、南インドで話されているタミル語との関係を主張しました。根拠として挙げたのは次のような点です。
- どちらも語の後ろに接辞をくっつけていく膠着語である
- 助詞や助動詞に20個の対応がある
- 音の似た単語が500語ほどある
- 和歌の五七五のような形式がタミル語の古典にもある
しかし、この論証の仕方は雑すぎると後世の人から批判されました。日本語の祖先の形である日琉祖語 ── 日本語と琉球諸語が分かれる前の共通の祖先にあたる言語。比較言語学の手法で再建が試みられていますを研究する人のなかで、タミル語説を信じる研究者はほとんどいないだろうと水野さんは話します。
水野さんは、自分はこのテーマに詳しくないと断ったうえで、大野さんは比較言語学 ── 言語どうしの系統関係をたどり、共通の祖先である祖語の姿を再建する言語学の分野の専門家ではなかったことを挙げます。堀元さんはこれを、1つの分野で結果を出した人が詳しくない分野を語り始める「やばいパターン」だと受け止めました。
さらに、タミル語説が岩波新書という手に取りやすく安いレーベルから出ていることも、広く普及した理由だと水野さんは考えます。『日本語に主語はいらない』のように、普通の出版社から普通の見た目で出ていても研究者が支持していない言語の本は多く、知識がないと「すごいことを言っている」と思ってしまうのです。
英語はインド・ヨーロッパ祖語から分かれてドイツ語やフランス語と仲間だとわかっているので、日本語にはなぜ仲間がいないのかと気になってしまいます。実際には、琉球諸語以外に決定的な証拠はまだ見つかっていないのが現状だそうです。堀元さんは、仲間を見つけたいという希望が目を曇らせた面もあるかもしれないと話しました。
インターネットはソ連の核攻撃に備えて作られたのか?
堀元さんは「人間は面白いものを見てしまう」例として、インターネットの起源を取り上げます。冷戦中、アメリカ国防総省の下部団体が、ソ連の核ミサイルで基地局が壊れても通信が途切れないネットワークを作ろうとした、という説明です。
会場の半分ほどが聞いたことがあると手を挙げました。厄介なのは、この話がほぼ本当だという点です。
前身はARPANETで、国防総省の下部団体ARPA(後のDARPA)が作った。一部の基地局が落ちても止まらない頑健なネットワークを目指した
ソ連の核ミサイルへの備えという動機。実際は回線トラブルや停電などで基地局がよく落ちていたため
堀元さんは、元の情報だけでは面白くないと話します。そこに「時は冷戦の最中」という語りを足すと、一気にストーリーとして頭に入ってくるのです。
ここに、時は冷戦の最中、ソ連からの核ミサイルの危機が高まっていた。今にも撃ち込まれるかもしれない。そうなった時、最も問題なのは何か。通信の断絶である。
そもそも当時は水素爆弾のような威力の大きい兵器が大量に作られていたので、撃ち込まれたら基地局1つどころの話ではない、と堀元さんは指摘します。堀元さんはこうした謬説の原因を、勝手にいいストーリーを作って話したくなる「面白バイアス」だと考えています。
一方、水野さんは鬼の伝承に近いと解釈しました。昔は説明のつかない怪奇現象に鬼という名前を与えたように、現代の人も生存を脅かす「鬼」を探し、ソ連のようなわかりやすい存在にストーリーを託したのではないか、という見方です。
堀元さんは、この話が『ファクトフルネス ── 統計データをもとに、人々が世界を実際より悪く思い込む傾向を指摘したハンス・ロスリングらの本』にも通じるとしつつ、イヌイットの雪の語彙の例は400のほうが面白いから広まったので、やはり面白バイアスだと返しました。
水野さんは、友達に「聞いた話によると」と盛って話すこと自体は大きな問題ではないと話します。問題は、書くときに「聞いた話によると」を抜くと、それが事実になってしまうことです。
堀元さん自身も過去の配信で、サポーターコミュニティの活動で地球の直径を測った人が「マイナス10万キロ」という結果を出したと話していました。後で確認すると、実際はマイナス2万キロほどだったそうです。
普遍文法は「全言語に共通する文法」ではない?
水野さんの最後のネタは、生成文法 ── チョムスキーが提唱した言語理論。人間が限られた規則から無限の文を生み出す仕組みを解明しようとしますの「普遍文法」についての誤解です。普遍文法は、全ての言語に共通する文法事項のことではないといいます。
堀元さんは、番組の生成文法回でも「全ての言語に共通するものはあるか考えてみよう」という説明だったと驚きます。水野さんは、そう導入したのは自分だと認めています。
人間に生得的に備わっている言語に関する知識のことを普遍文法と言ってます。
まず、言語学者のいう「文法」は、英文法の授業で習うものとは違います。無限の文を作り出すときに使っている規則全体を指し、単語の習得などはあまり含まないそうです。
世界の言語に共通して見られる文法事項
人間が生まれつき持っている、文法的な知識を含む言語に関する知識
そのため、「世界の言語を見渡しても共通の特徴などない」「英語しかできないチョムスキーが普遍文法を語るな」といった批判は、誤解に基づくものだと水野さんは説明します。英語で作れる文のシステムを解明すること自体はできるからです。
訳語が悪いと考える人は多く、水野さんは「生得文法」のような訳のほうがイメージしやすいかもしれないと話します。堀元さんも、そのほうがいいと賛成しました。
以前の配信で堀元さんが「Cコマンドが全ての言語に共通する特徴なんですね」と理解したとき、島村先生島村先生の表記は「まあそういうことですね」と答えていました。水野さんによると、それは専門家としてはまずい返事ですが、楽しそうな堀元さんに水を差すのがかわいそうで、優しさから言っただけだそうです。
すごい。島村先生優しいわ。それ聞くと偉大だわ。
酔ったロバを見て笑い死にした哲学者は本当にいたのか?
堀元さんは「軽い話」として、古代の哲学者にまつわる怪しい記述を紹介します。古代の哲学者はろくに記録が残っておらず、伝言ゲームになりやすいからです。
紀元前280年頃に生まれたクリュシッポス ── 古代ギリシャのストア派の哲学者。ストア派の学説を体系化した人物とされますについて、堀元さんは主張の内容を知らないまま死因だけを知っていました。ロバにブドウ酒を与えたあと、酔ったロバがイチジクを食べようとする様子を見て笑い死にした、というものです。
そんなわけある?どういう状況か全くわからん。
二人は、ロバにブドウ酒を与えるにはクリュシッポス自身もかなり酔っていたはずだと想像を膨らませ、遺族なら名誉毀損で訴えるレベルの不名誉だと盛り上がります。この話はWikipediaにも「真偽のほどは定かではない」と明記されているそうです。
同じ系統の話として、堀元さんは古代の喜劇作家ピレモンも挙げました。ピレモンは自分が書いた脚本が面白すぎて笑い死にしたと伝えられています。
水野さんは、一人で脚本を書いていたなら笑い死にだと確かめようがなく、心不全かもしれないと反論します。そのうえで、病気で亡くなった夫を、奥さんが脚本執筆中の名誉ある死として盛って語った可能性もあると推測しました。
バベッジは夢でコンピューターを思いついたのか?
堀元さんは、人物のエピソードをロマンチックに味付けした謬説も多いと話します。例は、ゆるコンピュータ科学ラジオのネタとして調べていた「コンピューターの父」チャールズ・バベッジです。
バベッジが階差機関 ── バベッジが設計した、歯車で多項式の数表を自動計算する機械。コンピューターの原型の1つとされますのアイデアにたどり着いた理由は、本人の証言が2つに分かれています。
若い頃(40代頃)の証言は、仕事の依頼があったから考えた
晩年の証言は、うたた寝中に理想の機械が自動で計算する夢を見た
水野さんは、夢の話は「作りすぎ」で、仕事の依頼のほうが本当だろうと即答しました。堀元さんは、死因や人物のエピソードはこうしてロマンチックに味付けされた話が語られることで、謬説が増えていくのだと考えています。
水野さんはすかさず、昼寝中に「面長な人間と言語学の話をしたらバズる」とひらめき堀元さんに連絡した、という作り話を披露します。堀元さんは、せめて晩年になってからやってくださいと返しました。
Wikipediaの謬説ページと、水野さんの怪しい逸話
堀元さんは、謬説ナイトはもっと続けられるのではないかと提案します。水野さんは言語のネタは使い果たしたものの、ジャンルを問わなければいくらでもあると応じました。
堀元さんのおすすめは、Wikipediaの「広く信じられている誤解の一覧」のようなページです。水野さんは「珍しい死の一覧」を、堀元さんは「自分の発明で死んだ発明家の一覧」を挙げます。後者は飛行機の発明者が自分の飛行機で墜落した例などが並び、最後に自分が制定した法律で死んだ人が出てくる構成が見事だといいます。
堀元さんは、謬説を紹介するだけなら一次資料に当たらなくても問題ないと冗談めかしつつ、リスナーから好きな謬説を募集しました。最後に「謬説かどうか怪しい」話として、水野さんの麻雀の逸話を紹介します。
その逸話は、水野さんが「15分ほど遅れます」と連絡しておきながら30分遅刻し、「手加減なしでいきますよ」と宣言した直後にロンと言ったものの役がなく、即チョンボした、というものです。
だって1巡目だったら天和つきますからね。嘘ですよ、そんなね。僕が6巡目にやったとかって話じゃなければね。
水野さんは否定しながらも、うっかり6巡目と口を滑らせます。堀元さんは真偽の予想をコメント欄に書くよう呼びかけ、収録を締めくくりました。
まとめ
謬説ナイトで取り上げた説は、まったくの嘘というより、出典の誤り、数字の読み違い、誇張、面白いストーリーの付け足しによって少しずつ形を変えたものでした。原典に当たると、意外と地味な事実が残っていることが多い回です。
- 「日本はハイコンテクスト」の国別の図は、出典とされるホールの本に載っていない
- イヌイットの雪の語彙は、ボアズの記述から引用を重ねて400以上に膨らんだが、実際は日本語や英語と同程度
- キンゼイ報告の11%が「半分」になった背景には、近くに並ぶ数字の読み違いがあるかもしれない
- インターネットの起源は大筋で正しく、「ソ連の核ミサイル」という面白い部分だけが誤りだった
- 普遍文法は全言語に共通する文法ではなく、人間が生まれつき持つ言語の知識を指す




