「クリシェ」は音楽用語でもあった?
ゆる言語学ラジオの「うんちくエウレカクイズ」は、実在するうんちくをクイズ形式に仕立てた企画です。水野さんは、クイズとして楽しめるうえに、解けば翌日から人に話せる「一度で二度美味しいクイズ」だと説明しています。
今回はレギュラー回としては半年ぶりの収録です。いつものように武藤さんが出題役を務め、武藤さんがこのスタジオに来るのは初めてだと紹介されました。
最初の問題は、NACLさんからの投稿でした。3人から同じような内容が届いていたといいます。
音楽で和音の構成音の1つを半音または全音ずつ移動するものを何と呼ぶでしょう?
音楽が苦手な2人はしばらく迷い、水野さんは「転調」と答えて外します。武藤さんから「お二人の好きなものの話」というヒントが出たところで、堀元さんが気づきました。
3人から同じものが来てて、しかも我々が好きなもの。つまりこの問題(の答え)、クリシェなんですよ。
正解はクリシェ ── もともとは「使い古された決まり文句」を指す言葉。音楽では、和音の中の1音を半音や全音ずつ動かしていく進行を指し、ポピュラー音楽でもよく使われますでした。2人は普段から、使い古されたうんちくを「クリシェだ」と嫌がっています。武藤さんによると、音楽にもクリシェがあると伝えたいリスナーが問題を送ってきたのだろう、とのことです。
この問題は、今回のテーマを示すオープニングクエスチョンでもありました。武藤さんは、投稿者がクリシェだと思っていなくても、武藤さん自身がクリシェだと感じた問題を集めてきたと話します。水野さんは、クリシェなうんちくを送ること自体は何も悪くないと、リスナーへ先に伝えていました。
ライオンの商標から生まれた「早押しルール」
2問目は、おしるこさんからの投稿です。
石鹸などの日用品で有名な企業であるライオンは、ある理由から商品名などではないとある文字列を商標登録しています。この文字列は一体何でしょう。
問題文の途中で、堀元さんが「有名なやつですね」と口を挟みます。水野さんがそれをとがめると、堀元さんは、エウレカクイズは「エウレカ」と叫ぶのだから、答えがわかった人から叫ぶシャウト形式のはずだと反論しました。
この掛け合いがきっかけで、今回はうんちくエウレカクイズを早押し形式で進めることになりました。武藤さんが問題を読み、どちらかが「ピンポーン」と言った時点で読むのを止めるルールです。
LIONが逆から見た時に意味のある文字列に見えるから、それも商標を取ってるって有名な話で。NO17じゃないですかね。ナンバー17。
堀元さんは正解して1ポイントを得ます。水野さんは似た例として、任天堂のWiiに似たアルファベットの商品が中国で多く出たため、まとめて商標を取っているという話を挙げました。偽物が出ないように先回りして手を打つのは、法務の戦略としてよくあることだろうと話しています。
コクヨはパクリノート「GAMBOL」にどう対抗した?
ここで水野さんが、おなじみの「クイズ内クイズ」を出します。中国には、コクヨのCAMPUSノートとデザインも字体もよく似た「GAMBOL」というノートブランドがあり、よく売れているそうです。
しかしコクヨはこのGAMBOLに対して訴訟を起こしたり抗議をしたりしませんでした。ではどうしたのでしょうか?
堀元さんは、中国版だけデザインを変える、ブランドを売り渡す、粗悪なGAMBOLを出して評判を下げる、などと答えますが、どれも外れます。「コクヨがGAMBOLを出した」は惜しいと言われたものの、その出し方までは当たりませんでした。
正解は、コクヨがGAMBOLを買収したというものです。水野さんは、すでに中国でシェアと知名度があるブランドなので、訴訟で潰すより買ってしまえば全部が利益になる、と説明しました。
訴訟を起こしたり、商標をまとめて取ったりして偽物を排除する
シェアのあるGAMBOLを買収し、自社ブランドの利益として取り込む
堀元さんは、敵に花を持たせて丸く収める大人の対応だと感心します。そのうえで「GAMBOL一両損」と言いますが、水野さんから、三方の部分がなくなったので誰が何を損したのかわからない、とツッコまれていました。
ディラックの脱線のあと、時計の針はなぜ右回り?
次の投稿者は「ディラックの海で海水浴」さんです。堀元さんは「ディラックは詩人ではないか」と言い出します。けれど、実は物理学者だったと明かし、水野さんにドッキリを仕掛けていたと打ち明けました。
一瞬さ、(ディラックを)確かに聞いたことあるかなって言おうと思ったけどやめたの。助かった。
ポール・ディラックは理論物理学者で、量子状態を書き表すブラケット記法を生み出した人物です。この脱線のあと、出題されたのは「時計の針が回る方向が右回りなのはなぜか」という問題でした。
堀元さんは、ネジが緩まない方向に合わせたのではないかと答えますが、不正解です。続いて水野さんが日時計に目をつけました。
あのさ、(時計って)もともと日時計でしょ?だって。
水野さんの答えは、日時計の影ができる方向が右回りなので、その動きをまねて針も右回りにした、というものでした。これが正解です。堀元さんは「水野さんに理科で負けたら終わりだわ」と悔しがります。水野さんは、冒頭の塩化ナトリウムのイオンの話をもう一度持ち出していました。
日時計の起源
紀元前4000年頃のエジプトで、地面に垂直に立てた日影棒が使われた
北半球の影
北半球のエジプトでは、日時計の影が右回りに動く
アナログ時計
影の動きにならい、現在の時計も右回りに針が回る
ただし2人とも、この話はクリシェと言いつつ実際には知らなかったと認めています。「言われてみればそうだな」という種類のうんちくだったようです。
サポーターが測った地球の直径は「マイナス10万km」
テンポがよいからと、堀元さんがここで小話を挟みます。ゆる言語学ラジオのサポーターコミュニティには科学部のような部活動があり、何人かの有志が太陽の角度から地球の直径を測ろうとしたそうです。
その様子はnoteにまとめられていて、4人ほどの結果が一覧になっていました。古代ギリシャでも、2つの都市で太陽の方向を比べて地球の大きさを出していたといいます。水野さんは、直角三角形の相似を使うやり方だと補足しました。
堀元さんによると、古代ギリシャの人たちはかなりよい精度を出せていました。一方、現代日本のサポーターが分度器のようなもので角度を測ると、実際の10倍ほどの値になった人もいたそうです。
俺もっといい精度出せるけどなと言いながら頑張って測定した結果ですね。地球の直径マイナス10万kmになってしまった。
水野さんは「やめちまえ」「計算間違えてねえか」とツッコみ、話は次の問題へ移ります。
トウキョウトガリネズミはなぜ東京にいない?
次の問題は、くるりんさんほか6名ほどからの投稿でした。届いた数は最多クラスで、数えるのをやめたほどだといいます。
世界最小の哺乳類として知られるトウキョウトガリネズミは、その名前に反して東京には……
問題が読み終わる前に、水野さんが答えます。堀元さんは早押しであることを忘れて、ぼんやり聞いていたと悔しがりました。
北海道で本来は発見されてエゾトガリネズミと命名されていたが、それがある時に江戸と間違えて伝わって、江戸イコール東京、つまりトウキョウトガリネズミになった。
答えは細部が違うだけの「おおむね正解」でした。解説によると、発見者が標本ラベルに「YEZO」と書くべきところを「YEDO」と書き間違えたことが由来です。
堀元さんは、似た打ち間違いの例としてGoogleを挙げます。もともとは大きな数を表すグーゴル ── 10の100乗を表す数の名前。さらに大きい「グーゴルプレックス」は10のグーゴル乗を表しますにちなんだ社名にするつもりでした。ところがドメインを取るときに入力を間違え、google.comになったという話です。
草刈機正男の後継機、その商標は?
ここで水野さんが商標の話を続け、草刈り機メーカーの筑水キャニコムを取り上げます。このメーカーは、俳優の草刈正雄さんにちなんだ「草刈機正男」という商標を持っているそうです。
この草刈機正男が出るじゃないですか。後続機が出たんですよ。そいつの商標、またタレントの名前から来てます。
堀元さんは「カルマ一代」と予想しますが、水野さんは「もっと上を行っている」と返します。正解は「草薙倒し」でした。
草刈正雄さんの名前と「草刈機」を掛けたダジャレ
ダジャレを優先した結果、「草刈り機」の要素がなくなった
水野さんは、ダジャレを言いすぎて草刈り機の部分がなくなっていると笑います。堀元さんは「草薙倒しよく見つけた」と絶賛しました。
水野さんがここ1年で見つけてきたやつの中で一番いい。草薙倒し。
このうんちくにもポイントが与えられ、水野さんが大きくリードします。草薙倒しはこの回のお気に入りとなり、このあとも何度も話題にのぼりました。
バニラアイスを買うと車が動かなくなる理由
次は、ていくんさんほか3名からの投稿です。
ある男性が、自動車メーカー、ゼネラルモーターズのポンティアックに乗ってアイスクリーム屋に行くと、バニラアイスを頼んだ時だけ……
ここで堀元さんが押しました。バニラアイスはよく出る商品なのですぐ提供され、他のアイスは時間がかかる。そのため、注文によってエンジンの調子が変わるという奇妙なクレームが自動車会社に入った、という答えです。細部は違ったものの正解でした。
武藤さんの解説によると、この話にはヴェイパーロック現象 ── 液体が熱せられて生じた気泡が、液体の流れを悪くする現象。燃料の配管で起きると、エンジンの始動や運転に支障が出ることがありますが関係しています。
すぐ戻る
バニラアイスは人気ですぐ出てくるため、短時間で車に戻る
気泡が残る
揮発性の高いガソリンに発生した気泡が、まだ解消されていない
始動しない
すぐに再始動しようとしても、エンジンがかからない
他のアイスを頼むと待ち時間が十分にあるため、気泡が解消してエンジンをかけ直せます。堀元さんは、正しくは「バニラアイスの時だけエンジンがかからなくなる」というクレームだと整理していました。この話は、インターネットで一時期よく拡散されていたそうです。
早押しうんちくエウレカクイズは続く?
問題を解くスピードが速すぎて、用意した問題はここで終わりになりました。結果は5対2で水野さんの勝ちです。堀元さんは、草薙倒しによるダメージが大きかったと悔しがります。
2人とも、クリシェなうんちくは早押しにするとおもしろいと手応えを感じたようです。番組の裏方の海保さんが早稲田式の早押し機を買っていて、いつでも貸すと言ってくれていることも明かされました。
ルールもちょっと整備しておきたいですね。いいうんちくを出すとポイントもらえるのか、否か。
堀元さんは、ゲームが成立しなくなるので「否」だと即答しました。水野さんはそれを「草薙倒しルール」と名付けようと提案しています。
最後に2人は、レベルの高い問題でなくても、クリシェかもしれないと気にせず気軽に送ってほしいと呼びかけました。うんちくエウレカクイズは言語ネタのどの企画より長く続いており、今後も新しい遊び方を作っていきたいと話しています。
まとめ
よく知られた定番のうんちくでも、早押し形式にすると反射神経と知識量の勝負になり、新しい遊び方が生まれることがわかる回でした。
- 「クリシェ」は使い古された表現という意味のほか、和音の1音を少しずつ動かす音楽用語でもある
- コクヨは中国のパクリノートGAMBOLを訴えず、買収して自社の利益に取り込んだ
- 時計の針が右回りなのは、北半球の日時計の影の動きにならったためとされる
- トウキョウトガリネズミの名前は、標本ラベルで「YEZO」を「YEDO」と書き間違えたことに由来する
- バニラアイスだけエンジンがかからない話は、ヴェイパーロック現象で説明できる






